私たちの身近な食材である牛乳。そのまま飲むほかに、料理やおやつなどにもよく使われます。しかし、牛乳などの乳製品はアレルギーの原因の一つでもあるため、子どもには慎重に与えたいものです。今回は、牛乳を飲ませる時期と、なぜその時期から与えるのかについて管理栄養士の資格をもつライターがご紹介します。
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そのまま飲むのと離乳食用は別で考えて
離乳食の材料に牛乳を使うことができるのは7~8カ月ごろからで、ほかの食材と同じように、少量から与えてアレルギーが出ないかを確かめます。牛乳を飲み物としてそのまま出すのは1歳を過ぎてからが目安です。
子どもの未熟な消化能力で気を付けたいこと
子どもに食物繊維の多い食べ物などを与えると、食べたものがそのまま出てくることもありますね。乳幼児の消化機能は大人よりも未熟なため、食べ物を十分に消化できないことがあります。消化器官が未熟なことによって、食べ物を異物と判断して起こるアレルギーも0~2歳児で多くなるのです。特にこの時期は、卵、乳、小麦のアレルギー発症率が高く、1歳前に牛乳をたくさん飲ませると、乳アレルギーを発症する可能性が高くなるといわれています。アレルギーの症状は、嘔吐(おうと)、下痢、皮膚に発疹ができるほか、腸の表面が荒れて出血が起こることがあります。
飲みすぎに注意!乳幼児は適量を守ろう
離乳食の進み方や食べる量は個人差があり、食の細い子どもの場合、母乳・ミルクなどで栄養を補いますね。9カ月以降であればフォローアップミルクを利用しているかもしれません。1歳を超えたからといって、母乳やミルクなどと同じように牛乳を与えると、飲みすぎになる可能性があります。牛乳をコップ1杯飲むと、大人でも腹持ちが良くなりますが、子どもも同様に、牛乳でおなかがいっぱいになって離乳食を食べる量がより少なくなってしまいます。そうなると、食事から栄養を摂取できず、鉄分不足で貧血を起こすかもしれません。
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乳幼児期に不足しやすい鉄分に注意
子どもは、生まれてから6カ月たったころまでは、母親の免疫や栄養を体に蓄えているといわれています。生まれてからは授乳で栄養をとりますが、鉄分があまり含まれていないため、6カ月ごろに離乳食をはじめて、食べ物から足りない栄養をとるのです。
子どもの時期の貧血は成長に影響大
生後6カ月になると蓄えていた鉄が不足するため、貧血になりやすくなります。子どものころに鉄欠乏による貧血になると、身長・体重が増えない、脳の機能に影響を与えるなど成長に大きく影響するのです。脳の機能に影響があると、その後、鉄が補充されたとしても、欠乏によって生じた障がいは回復しないといわれています。そのため、牛乳の飲みすぎで起こる鉄欠乏には注意していきたいものです。
牛乳を飲む目安、適量はどのくらい?
離乳食完了から5歳くらいまでの牛乳摂取量の目安は300~400mlです。あくまでも目安ですので、牛乳を飲むことで食が細くなることがあれば、量を減らしましょう。日本で初めて牛乳貧血が報告されたのは1981年。幼児へ牛乳を1日600ml以上与え、それを3カ月以上続けていたそうです。その結果、離乳食を食べる量が少なくなり、鉄欠乏貧血を起こしたと推測されています。
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メリットもたっぷり!牛乳の特徴
鉄分の含有量が少ない牛乳ですが、カルシウムの吸収率が高い食材でもあります。乳幼児期は鉄分とともにカルシウムが不足しがちなので乳アレルギーの心配がないのなら、牛乳を活用していきたいものです。
牛乳に含まれるカルシウムの特徴
牛乳100g中に含まれるカルシウムは、約100mgです。カルシウムは、体で吸収されにくいため、不足しやすいといわれています。さまざまな食材にカルシウムは含まれますが、消化吸収率を比べると牛乳が優れており、牛乳40%、小魚33%、野菜19%となります。また、牛乳から作られるヨーグルトやチーズは、牛乳よりもさらに消化吸収が良いです。カルシウム量もヨーグルト100g当たり110~130mg、プロセスチーズは630mg含まれているので、乳製品を取り入れていきましょう。
鉄分の吸収率を上げる働きもある
牛乳は、食事量の減少やアレルギーによる腸管からの出血によって鉄欠乏が起こるとお伝えしてきました。一方で、ホウレン草、小松菜、海藻類などに含まれている鉄分「非ヘム鉄」の吸収をよくする働きもあります。鉄分は、ヘム鉄と非ヘム鉄に分けられ、ヘム鉄は肉や魚の動物性の食品に含まれ、そのまま吸収されます。非ヘム鉄は、植物性食品、卵、貝類などに含まれ、そのままでは吸収されないため、ビタミンCや消化酵素の働きで吸収されるようになります。牛乳は、吸収されにくい非ヘム鉄の吸収を助ける働きをするのです。牛乳をうまく食事に取り入れていきたいですね。
おわりに
牛乳をそのまま飲む時期は1歳を過ぎてからにし、飲みすぎには注意しましょう。飲みすぎることで、鉄欠乏性貧血を起こす可能性があります。その一方で、カルシウムが豊富で、植物性食品に含まれる鉄分の吸収を助ける働きがあるため、適度に取り入れ、うまく活用したいものです。
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30代後半。夫、5歳の息子の3人家族。管理栄養士。食べ物が好きで、美味しいものには目がありません。「ごはんまだ?」の声を聞きながら、毎日ドタバタして過ごしています。好きな言葉は、時短、節約、シンプルです。
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