多くの方が、これまでに一度は「メタボリックシンドローム」あるいは「メタボリック症候群」という言葉を聞いたことがあるでしょう。この言葉を聞くと、おなかの出た中年男性のイメージが頭に浮かぶのではないでしょうか。しかし、メタボといわれるこの病気は、大人特有のものではありません。実は、子どもでもメタボになる可能性があるのです。ちょっと心配な子どもの肥満について、詳しくご紹介します。
メタボリック症候群とは何か
メタボリック症候群とは、そもそもどのような病気なのでしょうか。厚生労働省が決めたメタボの診断基準に腹囲の数値があることから、「太っておなかが出ている人」はメタボだ!と思われがちですが、必ずしもそうだというわけではありません。メタボリック症候群と診断されるには、いくつかの基準があります。
内臓型肥満と高血圧・高血糖・脂質異常
メタボリック症候群は、肥満症の一種です。肥満の形にはふたつの種類があります。ひとつは皮下脂肪型肥満といって、皮下組織に脂肪がたまるものです。もうひとつは内臓脂肪型肥満といって、内臓の周りに脂肪がたまるもので、こちらがメタボリック症候群の特徴です。内蔵型肥満に、高血圧、高血糖、脂質異常のいずれかふたつの症状があれば、メタボと診断されます。肥満症と違う点は、メタボリック症候群が、動脈硬化の進行予防と早期発見に重点をおいて診断される病気であるという点です。ただ単に太っているだけでは、メタボとはいえません。
メタボリック症候群の診断基準
メタボリック症候群の詳しい診断基準は、次の4点です。
腹囲 | 男性の場合、85センチ以上 女性の場合は90センチ以上 |
血圧 | 収縮時血圧が130mmHg以上または拡張時血圧が85mmHg以上 |
血糖 | 空腹時血糖が110 mg/dL以上 |
脂質 | 中性脂肪が150 mg/dL以上 またはHDLコレステロール値が40 mg/dL未満 |
腹囲に加え、血圧、血糖、脂質のうち2項目の基準に該当すれば、メタボリック症候群と診断されます。このうち、最初の診断基準である腹囲については基準があいまいである、根拠に乏しいなどの批判が出たこともあり、2016年に厚生労働省で検討が行われました。しかし変更は見送られ、現在でも最初に腹囲の検査が行われています。
合わせて読みたい
子どもにもメタボリック症候群はある
メタボリック症候群は、大人だけがかかる病気ではありません。子どもが生活習慣病(かつての成人病)にかかるのと同じように、子どもでもメタボリック症候群と診断される恐れがあります。文部科学省が行っている学校保健統計調査によると、平成28年度の肥満傾向児出現率は前年度に比べ、増加傾向にあります。この30年間をみても、全体に肥満傾向児は増加しています。これには、子どもの生活の変化が影響していると考えられています。
欧米型の食生活
30年前に比べ、日本人の食生活は欧米型に近づいています。米と魚と野菜を中心とした薄味の日本食から、パンや肉、乳製品などが日常の食卓に並ぶようになりました。「朝はパン」というご家庭も多いのではないでしょうか。子どもの肥満の多くは、単純性肥満といって、消費カロリーより摂取カロリーが多いことからくるものです。精製された小麦を使用した白いパンには、砂糖や油脂が多く含まれますし、クッキーやチョコレートなどのおやつも糖分が多く、カロリーは高めになります。
運動量の低下
食生活の変化とあわせて、子どもの運動量の低下も肥満の原因としてあげられます。テレビや携帯ゲームの普及によって子どもの外遊びが減ったといわれていますが、外遊びの減少傾向は1970年代から始まっているようです。「仲間・時間・空間」の三間がない状態で、子どもの運動量と多様な身体活動が少なくなっているという考察もあります。摂取カロリーが増え、消費カロリーが減っていけば肥満になるのも当然ですね。
子どもの生活も夜型に変化
両親が共働きの家庭も増え、子どもの生活も夜型に変化しています。背景には、長時間労働を当たり前とする日本の就労形態があります。両親が遅くまで働いていれば、食事やお風呂も遅くなり、就寝時間も遅くなってしまいますね。また、小学生でも塾に通う子どもが増えてきました。夜遅く食べ物を摂取したり、逆に朝食を抜いたり、夜型の生活は食生活の乱れにつながります。食生活の乱れは肥満の一要因です。
合わせて読みたい
子どもたちも大学生になり、自分の子育てはひと段落。保育士として、地域のコーディネーターとして、子育て支援・子ども支援にかかわっています。ゆる~く子育て楽しみましょう!
この記事に不適切な内容が含まれている場合はこちらからご連絡ください。