保育士。学生時代に児童心理学を学び、幼少期の関わりがその後の人生を左右することに強い関心を持ち、自身の研究テーマとする。 3児の母で、長女の小受では全勝を果たす。現在6年目となる保育現場や幼児教室で本領発揮し、周囲から絶大なる信頼を得ている。 生活教育こどもと幼児園 http://kodomoto.tokyo/保育記事監修者プロフィール:伊藤美緒先生
日々成長する子どものしつけに、頭を抱えているお母さんやお父さんは多いことでしょう。最近よく耳にする『叱らない子育て』。これは本当に子どもにとって良いものなのでしょうか?今回は、叱らない子育てについての理解を深めるとともに、子どもへの正しい接し方についてもご紹介していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
この記事のもくじ - 項目をクリックで該当箇所へ
叱らない子育てってどんなもの?
近年テレビや本の影響で、叱ってばかりの子育ては子どもに良くないという考えが浸透してきていますが、実は『叱らない』の意味をはき違えている人が多くいます。子どもに間違った教育をしないためにも、叱らない子育てがどのようなものなのか見ていきましょう。
叱らない子育て 本当の意味とは
『叱らない子育て』という言葉だけを見ると、全く叱らないのでは?と思ってしまいがちですが、それでは子育てにおいてあまりにも非現実的ですよね。叱らない子育てとは本来、子どもが好ましくない行動をとったときに、感情的になる気持ちを抑えて冷静になるという意味で使われています。子どもに対してイライラして「いい加減にしなさい!」と感情のままに叱りつけたり怒鳴ったりしないようにすることこそが、叱らない子育て論が伝えるべき本質なのです。
なぜ間違った解釈が広まったの?
叱らない子育ては、30年ほど前にアメリカから「子どもをのびのび育てよう」という育児法が入ってきたことがきっかけで、日本中に広まったといわれています。当時、アメリカでは親が子どもを厳しくしつけすぎたことで、消極的な子どもが増えたことが問題視されており、それを解消するための育児法が考え出されていました。しかし、社会状況が異なる日本でアメリカの育児法をそのまま取り入れるのは難しい場合も多いのです。その結果、親たちが『のびのび育てる=叱らない』と都合よく解釈してしまったことが原因だといわれています。
叱らずに放置することが叱らない子育てではない
『叱らない』ことは子どもの欲求の言いなりになったり、子どもが何をしても許したりといった放任主義をすすめているわけではありません。親が好き放題させてしまうと、子どもは良いことと悪いことの区別がつかなくなり、路頭に迷ってしまいます。子どもを正しく叱ることは、子どもが社会に出たときに困らないようにルールやマナーを教えるための手段ですから、子育てでは子どもを褒めるのと同じくらい叱ることも大切なのです。
合わせて読みたい
叱らない子育てで育った子どもの特徴
叱らない子育ての意味を間違って実践していると、子どもが成長したときに取り返しのつかないことになってしまうこともあり、とても危険です。では、親から叱られずに育った子どもたちは一体どのような大人になってしまうのでしょうか?
我慢ができずわがままになる
『叱らない=子どもを甘やかす』と思っている親たちは、子どもが何をいっても「いいよ、いいよ」と受け入れ、子どもは自分の思い通りにいくことが当たり前だと考えるようになってしまいます。周囲への配慮ができずに自分の欲求を優先させてしまうため、周囲からはわがままな子どもだと思われるようになります。社会のルールやマナーを教わらず好き放題に育ってしまったため、協調性がなく自己中心的な子どもになってしまいがちです。
怒りやすく暴力を振るうようになる
悪いことをしても叱られてこなかった子どもたちは、自分に都合が悪いことがあると、ふてくされて機嫌が悪くなったり、すぐに言い訳をしたりということが多くなります。中には逆切れして暴力を振るう子どももいるようですが、問題なのは子どもに悪いことだという自覚がないことで、相手に謝ることもできない場合も非常に多いのです。そうなると、おのずと周囲からも避けられて孤立するようになってしまい、子どもは居場所を無くしてしまうことにもなりかねません。
社会に適応できない大人になる場合も
心が成長しないまま大人になってしまった子どもたちは、いざ社会に出たときにうまくいかなくなる場合が非常に多いです。会社で働くようになると叱られることは日常茶飯事ですが、今まで親にも怒られず学校という場所で守られてきた子どもたちからすれば、怒られている理由が分からずに、周りからの厳しい態度に精神的に参ってしまうのです。その結果、働くことが嫌になり会社を辞めて、引きこもりになってしまうパターンも少なくありません。
合わせて読みたい
叱らない育児ではなく子どもを正しく叱る
ただ単に叱らないだけの子育てでは、子どもが将来常識のない大人になってしまう可能性も高く、子どものためにもなりません。危険な行為、家庭や社会でのルールなど、子どもを叱ってでも教えなければならないことってありますよね。それらを子どもに伝えるには、どのようなことが必要なのでしょうか。
子どもを傷つけない叱り方をする
子どもの心は繊細で親の感情を敏感に感じ取っているため、ささいな言葉で傷ついて心を閉ざしてしまうことがあります。そこで、子どもを叱るときに大切なポイントは『決して感情的にならず、叱る理由を子どもに分かるよう簡潔に伝える』ことです。また、「○○ちゃんは良い子なのに」など、他の子と比較したり、子どもの人格に触れたりするようなことをいってしまうと、子どもが「自分を否定された」と感じてしまいますので、注意しましょう。
叱る以外の対応を工夫することも重要
子どもが好ましくない行動をとったときに、叱る以外の対応をするようにしてみましょう。例えば、子どもが静かにしないといけない場所で騒いでしまった場合「静かにしなさい!」と頭ごなしに叱るのではなく、「ママと同じくらいの声でお話しできるかな?」と質問してみましょう。質問されることで、子どもは自分の頭で考え行動できるようになります。他にも、「おやつと遊ぶのとどっちを先にする?」というような選択を、子どもにさせることもおすすめです。
「できるだけ」叱らない育児を目指す
普段から叱らなくてもいい子育てをするためには、日常生活で子どもが『できているとき』に気付いてあげることが大切です。例えば、子どもが遊んだおもちゃを片付けていたら「ちゃんと片付けて偉いね」と褒めると、子どもは次からも進んでおもちゃを片付けるようになることでしょう。『気付いて褒める』を繰り返していくことで、子どもを叱らなくていい状態を継続させることができます。ただし、必要なときには、しっかりと叱って大切なことを教えてあげてくださいね。
おわりに
子どもを褒めることも叱ることも、子どもが成長する過程では必要なことです。叱らない子育てを誤って認識していた方もいたかもしれませんが、今一度子どもへの接し方を考え直してみることが大切だといえます。
ピックアップ
福祉系大学で心理学を専攻。卒業後は、カウンセリングセンターにてメンタルヘルス対策講座の講師や個人カウンセリングに従事。その後、活躍の場を精神科病院やメンタルクリニックに移し、うつ病や統合失調症、発達障害などの患者さんやその家族に対するカウンセリングやソーシャルワーカーとして、彼らの心理的・社会的問題などの相談や支援に力を入れる。現在は、メンタルヘルス系の記事を主に執筆するライターとして活動中。《精神保健福祉士・社会福祉士》
この記事に不適切な内容が含まれている場合はこちらからご連絡ください。