最近、街中で前向きに抱っこされている赤ちゃんを見ることが多くなりました。ご機嫌でニコニコ笑っている子もいれば、ちょっと不安そうにキョロキョロ周りを見回している子もいます。さまざまなメリットやデメリットが取りざたされている「前向き抱っこ」ですが、実際のところ赤ちゃんにとってはどうなのでしょうか?赤ちゃん目線からのメリット・デメリットを考えてみましょう。
前向き抱っこのメリット
赤ちゃんの抱っこ事情は、社会の変遷とともに変化しています。まだ家庭に電化製品が普及していない時代は、お母さんたちは赤ちゃんをおんぶして家事をするのが当たり前でした。「とにかくおんぶ!」の時代から、1970年後半以降、前抱き抱っこが普及してきます。そこからの発展形が前向き抱っこだといえるでしょう。
赤ちゃんへの刺激が発達を促す
前向き抱っことは、赤ちゃんを胸の前で前を向かせて抱っこする形態をさします。外出先で赤ちゃん用のいすがないときなど、お膝にのせて前を向かせるようにしますよね。同じような形で、移動中や作業中、外出時に前向きに抱っこします。大人よりも少し視線は下がりますが、赤ちゃんは、ほぼ大人と同じ目線で世界を見ることになります。
赤ちゃんの視力は、1歳ごろまではまだ0.2程度で、あまりよくありません。それでも、前向き抱っこの間に視界に入ってくる情報は膨大で、とても刺激的。音やにおい、風、光、気温など、さまざまな刺激を受けます。好奇心旺盛な年ごろならなおのこと、こうした刺激が脳の発達を促すと考えられています。
パパとのお出掛けに効果的
よく観察してみると、前向き抱っこをしている大人には同伴者がいるパターンが多いことに気が付くでしょう。ママの前向き抱っこには、おばあちゃんやパパ、ママ友が一緒にいることが多くありませんか?また、パパが前向き抱っこをしているケースもありますね。赤ちゃんとママだけが顔を合わせている内向き抱っこよりも、前向き抱っこの方がパパとのコミュニケーションが増えます。一緒に電車に乗っているのに、パパだけスマートフォンに夢中になっていたり、ひとりでぼんやり外を見ていたり、なんてのは寂しいですよね。前向き抱っこは、疎外感を抱きがちなパパとのお出掛けに効果的です。赤ちゃんにとっては、相手をしてくれる人が増えるわけで、これも発達においては良い影響を与えています。
前向き抱っこのデメリット
メリットが多い前向き抱っこですが、その逆にいくつかのデメリットがあると考えられています。とはいえ、半世紀以上にわたるおんぶ育児と抱っこ育児の論争を見てもわかる通り、新しいスタイルは物議を醸しだすものですし、どんな方法にもメリットとデメリットがあります。赤ちゃんにとってのデメリットをあげてみます。
密着できない不安感
まず大きいものは、密着できない不安感です。何か恐ろしいものに出会ったり、不安な思いに駆られたりすると、子どもは抱っこをせがんできます。温かいものにしがみつき、抱きしめてもらうことで心を落ち着かせようとするのですね。この感覚は、大人にも覚えがあるのではないでしょうか。身体を丸めて胎児のような格好になることで、外界からの刺激を遮断し、心と身体を守ろうとするのです。ところが、前向き抱っこの状態ですと、こうした姿勢をとることができません。解放された身体と遮断できない刺激が不安感を増幅させてしまいます。
不自然な姿勢が身体に負担
赤ちゃんの自然な姿勢はどのようなものかご存じでしょうか。おなかの中で10カ月、身体を丸めるような姿勢で過ごした赤ちゃんは、何かに包まれていると安心するといいます。背筋がピン!と伸び切っている赤ちゃんというのは不自然ですね。赤ちゃんは、股関節も開いたままです。足はМ字の状態で開き、腰で支えてもらうような態勢が自然でリラックスできる姿勢です。前向き抱っこは、背中が伸びてしまいますし、足がだらりと垂れ下がってしまいがちです。不自然な姿勢が続くことは、赤ちゃんのストレスになります。
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子どもたちも大学生になり、自分の子育てはひと段落。保育士として、地域のコーディネーターとして、子育て支援・子ども支援にかかわっています。ゆる~く子育て楽しみましょう!
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