妊娠~出産に伴う医療費控除の基礎知識と申請方法三つのポイント

電卓を使う女性
妊娠~出産までには、さまざまな場面でお金がかかりますよね。毎月の妊婦健診を始め、出産前の入院費用、そして分娩(ぶんべん)に伴う費用など、多くの医療費を支払うことになったでしょう。人によっては想像以上にお金がかかったと言う人もいるはずです。

そこで意識しておきたいのが、確定申告時の医療費控除のことです。この記事では、医療費控除の基礎知識や計算方法、申請時に必要な書類まで全てを解説していきたいと思います。

医療費控除ってどういう手続き?

医療費のイメージ
医療費控除とは、世帯単位で1月1日~12月31日までの医療費が10万円を超えた場合、所得税を減額できるという制度です。この制度を利用して確定申告すれば、差引額が還付金として戻ってくるなどうれしいこともあるため、ぜひとも行っておきたい手続きです。

特に妊娠・出産にかかる費用はかなりの額になりますから、この医療費控除は必ず利用するようにしましょう。

医療費控除三つのポイント

妊婦の医療費

1.家族全員で年間10万円を超えた医療費が対象

医療費控除のポイントの一つ目は、先に説明した、「世帯単位で1月1日~12月31日までに負担した医療費が10万円を超えたとき…」という部分です。これは、家族全員が支払った医療費が10万円を超えたときという意味になります。それぞれの利用した医療保険の種類などは関係なく、全員分の医療費を合計した額で考えることができます。

所得税を支払う義務のある人が家族内に複数いる場合(パパ・ママ共働きなど)は、一人が代表する形で申告します。

このとき、所得が多い人が申告するとお得になります。なぜなら医療費は200万円を上限に、課税対象から控除することができるのですが、最終的な還付額は「控除額×税率」で算出されるため、所得が多く、税率の高い人のほうが良いのです。

2.翌年の住民税や保育料が安くなる

ポイントの二つ目が、医療費控除は住民税もその対象になるということです。医療費控除による住民税の減税額は、医療費控除額の10%です。仮に、医療費控除額が20万円だった場合は、その10%ですので2万円、65万円だった場合6万5000円が通常の住民税から減額されるということになります。

また、住民税が安くなったことで、次年度の認可保育園の保育料が安くなるということにも注目しましょう。医療費控除の申告をしたことによって課税対象の所得が減ると、さまざまな場面で社会制度の適用区分が変わってきます。

保育料はお住まいの自治体によって異なるのが普通ですが、基本的には下記の表の金額が課税所得額別の保育料の上限とされています。参考にしてみてください。

保育所・認定子ども園・小規模保育における利用者負担のイメージ(月額)

階層区分 保育料上限額
3歳以上 3歳未満
保育標準時間 保育短時間 保育標準時間 保育短時間
1.生活保護世帯 0円 0円 0円 0円
2.市町村民税非課税世帯 16,500円 16,300円 19,500円 19,500円
3.所得割課税額48,600円未満 6,000円 6,000円 9,000円 9,000円
4.所得割課税額97,000円未満 27,000円 26,600円 30,000円 29,600円
5.所得割課税額169,000円未満 41,000円 40,900円 44,500円 43,900円
6.所得割課税額301,000円未満 58,000円 57,100円 61,000円 60,100円
7.所得割課税額397,000円未満 77,000円 75,800円 80,000円 78,800円
8.所得割課税額397,000円以上 101,000円 99,400円 104,000円 102,400円

※所得の階層ごとに保育料が設定されます。
※保育が必要な時間により、保育標準時間(11時間)と保育短時間(8時間)の二つの区分に分けられます。
※上記の表はあくまでも上限額の参考値です。保育料は実際にかかる費用を限度額としますので、実際に子どもの保育にかかる費用が50,000円の場合、6~8の階層であっても50,000円が保育料の上限となります。

3.保険の対象外になっている医療も幅広く控除

医療費控除では、公的な医療保険が利くのかどうかということに関わらず、病気やけがの治療を目的としたあらゆる医療費が控除の対象となります。例えば自費診療や先進医療の費用、はり治療や整体の費用もそうです。通院を目的とした交通費なども対象に入ってきます。

そして、病気やけがではないですが、妊娠・出産にまつわる費用も幅広く対象となっており、不妊治療などを行った場合、個室に入院したときの差額ベッド代でも控除されます。

一方で、出産のための入院準備で用意する妊婦用下着やパジャマ、洗面具など身の回り品の費用などは、直接的な医療行為とみなされないため対象外です。以下に主な例を記載しましたので、こちらもチェックしておいてください。

<対象のもの>

  • 妊婦健診費
  • 入院・分娩費
  • 通院時の電車代やバス代
  • 陣痛が始まったときのタクシー代
  • 助産師による分娩の介助料
  • 電車やバスの移動が困難な場合のタクシー代
  • 入院中に病院で支給される食事代
  • 診療・治療費
  • 処方箋代
  • 治療のための市販薬代
  • 医師の指示による差額ベッド代
  • 不妊症の治療費や人工授精の費用
  • 治療のためのはりやマッサージやおきゅう代
  • 禁煙治療の費用
  • レーシック手術代
  • 治療のための松葉づえの購入代
  • 虫歯の治療費
  • 治療としての歯の矯正費

<対象外のもの>

  • 妊娠検査薬代
  • 里帰り出産で帰省する際などの交通費
  • 妊婦用下着やパジャマ、洗面具など身の回り品の費用
  • 病院で提供される食事以外の外食費用など
  • 医師や看護師に対するお礼
  • 本人の希望で個室に入院したときの差額ベッド代
  • マイカー通院でのガソリン代や駐車場代
  • 予防や健康のためのビタミン剤や健康ドリンク代
  • 親族などへ付添料の名目でのお礼

合わせて読みたい

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医療費控除の計算方法

医療費の計算方法

医療費の控除額の計算

冒頭でも医療費の控除額と還付額について少し触れましたが、ここで改めて医療費控除の計算方法について説明したいと思います。まずは医療費の控除額からです。以下の計算式をご覧ください。

計算式

医療費の控除額=(1年間の医療費の合計)-(医療費を補てんする保険金)-10万円
※所得が200万円以下である場合は一律で所得の5%

医療費の控除額とは、1年間にかかった医療費から医療費を補てんする保険金と10万円を差し引いた金額となります。

ここで言う「医療費を補てんする保険金」とは、出産育児一時金、生命保険・損害保険に加入している場合に支払われた入院給付金や医療保険金、高額療養費などを指します。

医療費を補てんする保険金の定義

医療費を補てんする,保険金の主だったものを以下にまとめてみました。

  • 出産育児一時金や配偶者出産育児一時金など健康保険から支給されたもの
  • 高額療養費など健康保険から支給されたもの
  • 損害賠償金、補てんを目的として支払われたもの
  • 傷害費用保険金や医療保険金、入院給付金など生保会社または損保会社等から支払いを受けたもの
  • 給付金、医療費の補てんを目的として支払われたもの

ここにAさんという女性がいるとします。仮にAさんが出産までの年間医療費の合計金額が65万円で、医療費を補てんする保険金は出産育児一時金(子ども一人当たり:50万円)のみを利用していた場合、【65万円-50万円-10万円=5万円】となり、この5万円がAさんの控除額となります。

還付金の計算

実際に還付されるお金(戻ってくるお金)も計算してみましょう。還付金は以下の計算式で求めます。

計算式

還付金=医療費の控除額×所得税率

還付される金額は、前回のパートで算出した医療費控除額に所得税率をかけたものになります。この所得税率は、課税される所得金額によって変わるため、あらかじめ把握しておきましょう。

課税される所得金額 税率
195万円以下 5%
195万円を超え 330万円以下 10%
330万円を超え 695万円以下 20%
695万円を超え 900万円以下 23%
900万円を超え 1,800万円以下 33%
1,800万円を超え 4,000万円以下 40%
4,000万円超 45%

ここでもAさんの例を使いましょう。Aさんの医療費控除は13万円で、本年度の所得は195万円以下となりました。「医療費控除三つのポイント」でも述べましたが、医療費の控除は家族全員分が対象となります。さらには、課税される所得金額が高い人が控除申請したほうがお得であるという話もしましたね。

そこでAさんは所得が多い旦那さんに申請してもらうことにしました。Aさんの旦那さんは、課税される所得金額が「330万円を超え 695万円以下」に該当しています。

その場合、税率は20%となり、Aさんが申請した場合の税率5%とは計算が変わってきます。以下に、Aさんの旦那さんが申請した場合、世帯単位の還付金はどのようになるのかを表してみました。

▼1年間の医療費の合計
Aさん:65万円 | Aさんの旦那さん:3万円

▼医療費を補てんする保険金
Aさん:50万円 | Aさんの旦那さん:0円

▼医療費の控除額
65万円+3万円(68万円)-50万円-10万円=8万円

世帯単位では、医療費の控除額が16万円と出ました。還付金を算出するためには、これにAさんの旦那さんの課税所得金額に対する税率をかけ合わせますから、8万円×20%=16,000円となります。
Aさんが自分で申請した場合は6,500円になっていたことを考えると、還付される金額が大きく変わっていることがわかります。

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