保育記事監修者プロフィール：伊藤美緒先生

保育士。学生時代に児童心理学を学び、幼少期の関わりがその後の人生を左右することに強い関心を持ち、自身の研究テーマとする。

3児の母で、長女の小受では全勝を果たす。現在6年目となる保育現場や幼児教室で本領発揮し、周囲から絶大なる信頼を得ている。

生活教育こどもと幼児園 http://kodomoto.tokyo/

近年、子どもを認可保育園に預けることができない親の、悲痛な叫びが毎年あがっています。国や自治体も待機児童をどうにか解消しようと保育園を増やすことに注力していますが、その結果、表面化してきたのが保育士不足です。中には保育士が足りないために本来の定員まで子どもたちを預かることのできない保育園が出るなど、その問題は深刻さを増しています。

待機児童がゼロにならない理由とは

待機児童とは保育園に入りたくても入れない子どものことですが、近ごろその待機児童の数え方が現実に即していないのではないかという議論があります。保育園が増えているのに待機児童がゼロにならない理由を考えてみましょう。

新規開設は困難？！東京の保育園数の推移

地域住民の保育園建設反対運動により保育園建設を断念したニュースがメディアに取り上げられるなど、都市部では保育園の数が増やせない印象が強くありますが、例えば東京都認可保育園の施設数の推移をみると平成23年に1,800園だった施設数が平成28年には2,342園になるなど、実際のところは保育園の数は確実に増えていると言えるのです。

目を背けてはいけない「潜在的待機児童」

保育園の数を増やし続けているにもかかわらず、一向にゼロになる気配のない待機児童。それは、保育園に入れずやむを得ず育休を延長したり、認可外保育園を利用しながら認可保育園の空きを待ったりするなど自治体の待機児童の定義に当てはまらない「潜在的待機児童」と呼ばれる子どもたちがおり、受け皿が増えると入園希望者が殺到するためです。

保育園を思ったように増やせない理由

潜在的待機児童に合わせてどんどん保育園をつくれば、本当の意味での待機児童ゼロを目指すことができるのではないでしょうか？仮に十分な予算を確保できたとしても、保育園の用地確保と共に保育の担い手である保育士の確保がとても困難な状況となっており、保育園間での保育士の争奪戦が繰り広げられているような現状があります。

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国家資格でもある「保育士」が不足する理由

深刻な保育士不足とはいえ、日本に保育士がいないわけではありません。保育士登録者数は平成25年には119万人にのぼりますが、実際、保育士として働いている人は43万人と半数にも満たないのです。せっかく持っている保育士資格を生かさないのにはどんな理由があるのでしょうか。

保育士は保育のプロフェッショナル

そもそも、保育士になるにはどうしたらいいのでしょうか？国家資格である「保育士」資格を取得するためには、大学・短大・専門学校等で保育士養成課程を修了するか、国家試験に合格しなければなりません。国家試験は子どもや保育に関する知識を問う筆記試験と音楽や造形などの実技試験が行われ、その合格率は20％前後となかなか狭き門と言えます。

子どもの年齢によって変わる保育士の必要人数

1人の保育士が保育できる人数は「児童福祉施設の設備および運営に関する基準」により各自治体が定めることになっていますが、おおむね0歳児は3人、1・2歳児は6人、3歳児は20人、4歳児は30人となっています。低年齢の子どもを預かるにはより多くの保育士が必要となり、おのずと受け入れ枠が小さくなる傾向があります。

保育士が保育の仕事に就かない理由

昨今ニュースでも取り上げられている通り、保育士は国家資格を持ち子どもの命を預かる大切な仕事ながら、その賃金の低さや、労働環境などにより離職する人が後を絶ちません。また、長時間労働を強いられることも多く、自身の子育てや家庭と保育の仕事を両立させる難しさがネックとなり有資格者が保育の仕事に就かないことも保育士不足の一因となっています。

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