「赤ちゃんは母乳で育てるもの」「母乳以外は赤ちゃんがかわいそう」「母乳を与えないと弱い子どもに育つ」。そのような母乳神話とも言われる風潮が、長年日本にはあります。しかし、そんな風潮に一石を投じるガイドが国から発表されました。どのような内容なのか、ポイントをわかりやすくご紹介します。
母乳神話は完璧?赤ちゃんは母乳だけで育てるの?
日本には母乳神話と呼ばれるほど、母乳での子育てがスタンダードというような風潮があります。しかし、最新の研究結果は母乳神話と結果が同じなのでしょうか。母乳に対する最新の調査・研究結果を把握し、育児に役立てましょう。
日本を取り巻く母乳神話について
「母乳で育てると、子どもが強くなる。風邪をひかない」「母乳を飲ませると、肥満や糖尿病にならない」「ミルクだと子どもが乱暴になる」「ミルクだけでは、子どもの心が安定しない」。このようなことを周囲の人に言われたりすると、「母乳を与えないと赤ちゃんがかわいそう」「(母乳が不足して)赤ちゃんに申し訳ない」といった罪悪感を抱く母親が多くなってしまいますよね。また、病院でもミルクの作り方や与え方を教えてもらえず、ひたすら母乳を飲ませるよう言われたというケースもあるようです。
母乳が出ないと母親失格になる?
「授乳・離乳の支援ガイド」では、母乳で育てたいと考えている母親が9割以上という調査結果があります。母乳で育てたい母親は、今も昔も多いのです。
母乳神話の影響で、母乳が出ないと赤ちゃんに申し訳ない、母親失格だと思う方もいます。しかし、本当にそうでしょうか?母乳は確かに、世界保健機関(WHO)でも推奨されるぐらい赤ちゃんを育てるのに役立ちますが、必ず母乳で育てなければいけないというわけではありません。
母乳にはアレルギー予防効果はない
赤ちゃんを母乳で育てたいという方は大変多いですが、さまざまな理由で母乳が不足したり、医学的に母乳での授乳が難しかったりするケースもあります。そういったとき、母乳神話に影響を受け、とても辛い思いをする方がいるかもしれません。しかし、それにブレーキがかかるかもしれない研究・調査結果が出ているのです。「授乳・離乳の支援ガイド」によれば、母乳にはアレルギー予防効果はなく、母乳以外のミルクを与えても、肥満になるわけではないといったことが紹介されています。
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国がまとめた授乳や離乳のガイドがあるって本当?
厚生労働省が、医療機関や保健機関で働く人向けに取りまとめたものに「授乳・離乳の支援ガイド」があります。これは、最新の授乳や離乳の研究結果と、日本国内の育児の悩みや新しい液体ミルクの紹介など最新の動向をまとめたガイドです。国がまとめた資料の概要をお伝えします。
国主導の授乳・離乳の支援ガイドとは?
厚生労働省では、国民が抱える問題解決のために多くの会議や検討会が開かれています。特に、子どもに関する部署では、幼児教育の無償化、保育所でのアレルギー対応ガイドラインの作成、待機児童解消のための会議、不妊治療の検討会など非常に多くの懐疑や検討会、委員会が活動。その中で、最新の研究・調査データや母子への支援状況をふまえた授乳・離乳支援ガイドを取りまとめています。もともと「離乳の基本」など、支援ガイドのもととなる資料が作成されていましたが、定期的に見直しされ、最近では2019年3月に最新版が公開されました。
最新の授乳・離乳のガイドはどんな内容?
ガイドには、
- 授乳及び離乳に関する動向
- 授乳及び離乳の支援
と大きく二つのことが書かれています。
妊娠から子育て時期に抱える困った問題点を調べ、具体的な支援方法や情報がぎゅっとつまっているのです。もちろん、いつ起こるかわからない災害に備えるため、妊婦や赤ちゃん向けの備蓄など、事前の防災準備が大切という点にも触れられています。さらに、今回は母乳での食物アレルギー予防の効果、赤ちゃん用の液体ミルク、授乳リズム支援、アレルゲンとなる食品を食べる時期、妊娠から離乳するまでに必要な情報が追加されました。
授乳は母乳がいい?支援方針はどうなっている?
国が主導でまとめている授乳・離乳の支援ガイドで気になるのが、結局赤ちゃんには母乳がいいの?という点です。ガイドの授乳支援項目を見てみると授乳は母乳・育児用ミルク関係なく、「自信を持って授乳や育児ができるよう支援する」ことが基本方針とされており、母乳、育児用ミルク、混合栄養、それぞれの支援のポイントがまとめられています。つまり、どの授乳でも子どもが成長することがわかります。また、ガイドには母乳は肥満や2型糖尿病のリスク低下のメリットがあると書かれていますが、母乳神話で懸念されているミルクを飲むと糖尿病や肥満になるという点に、「育児用ミルクを飲むと肥満になるわけではない」とも記されています。
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福祉系大学で心理学を専攻。卒業後は、カウンセリングセンターにてメンタルヘルス対策講座の講師や個人カウンセリングに従事。その後、活躍の場を精神科病院やメンタルクリニックに移し、うつ病や統合失調症、発達障害などの患者さんやその家族に対するカウンセリングやソーシャルワーカーとして、彼らの心理的・社会的問題などの相談や支援に力を入れる。現在は、メンタルヘルス系の記事を主に執筆するライターとして活動中。《精神保健福祉士・社会福祉士》
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