おなかの中に赤ちゃんがやってきてくれたとき、そのまま無事に生まれ、一緒にその成長を見るのが楽しみになります。しかし、残念なことに全ての赤ちゃんが元気に生まれてくるわけではありません。ペリネイタルロス(周産期の子どもの死亡)は、お母さんにとって大きな傷となり、なかなか立ち直ることができないものでもあります。今回は、ペリネイタルロスについての説明や、お母さんや周りの人ができることなどをご紹介します。
ペリネイタルロスによる苦しみについて
ペリネイタルロスは周産期における子どもの死亡をいいます。周産期とは出産前後のことですから、長い間一緒に子どもと過ごしてからの別れとなり、とても心が痛むものです。まずは、ペリネイタルロスを受けたお母さんの苦しみについて理解しましょう。
赤ちゃんに対して申し訳なく思う
ペリネイタルロスになると、お母さんは天国に旅立った赤ちゃんに対して「元気に産んであげられなくてごめんね」という申し訳ない気持ちになります。赤ちゃんが亡くなったのはお母さんのせいではなくても、やはり一緒にいた身として責任を感じてしまうのです。赤ちゃんが旅立ってから時間がたっても、「あのとき動き過ぎたかな」「体に良くないものを食べないようにすればよかった」などと、いろいろと後悔を引きずってしまう方もいます。
他人の元気な赤ちゃんを見ると辛くなる
外に出ていると、いろいろな人に出会います。その中には、元気な赤ちゃんとその家族もいます。ペリネイタルロスを経験すると、目の前の赤ちゃんには何の罪もないけれど、元気そうな様子を見て暗い気分になり、一緒の空間にいるのが耐えられずに、移動せざるを得なくなってしまうこともあります。自分の子どもも元気に生まれてきたら、あの親子みたいに一緒に外に出掛けたりできたのに・・・ともうかなわない想像までしてしまうのです。
夫や親に悲しみを理解してもらえない
ペリネイタルロスの場合、ほとんど家族と一緒に過ごすことなく赤ちゃんが亡くなってしまうため、おなかの中で育てていたお母さん以外の家族には、つらい心情を理解してもらいにくいという性質があります。そのため、子どもが亡くなって悲しいと夫や両親に打ち明けると、無神経な言葉を返されて傷ついてしまったというお母さんも少なくありません。ただでさえ同じような経験をした人が少ないのに、家族にまでこのような対応をされたらとても悲しいですよね。
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ペリネイタルロスの苦しみを和らげる方法
子どもとの別れは、非常につらい出来事です。しかし、悲しみ過ぎていると精神的にしんどくなり、よりつらい思いをしてしまいます。悲しみは完全になくせませんが、行動しだいでその気持ちが少しでも和らぐことがあります。そこで、ペリネイタルロスの苦しみを和らげる方法をご紹介しましょう。
少しでも一緒に子どもと過ごす
亡くなってしまった子どもとは、ずっと一緒に過ごすことはできません。しかし、この世を去った子どもと一緒に過ごす時間が与えられることがあります。もしそういった機会が設けられた場合は、たくさん話しかけ、子どものお洋服やおもちゃをそばに置いてあげて少しでも思い出を作りましょう。ただし、亡くなった赤ちゃんに会ってPTSDを起こす場合もあるといわれているので、どうするかは慎重に考えた方がよいでしょう。
同じ経験をした人と話す機会を作る
ペリネイタルロスになった女性に多い悩みが、同じ経験をした人と話す機会がないことだそうです。そんな意見を受けて、病院によってはペリネイタルロスを経験した女性を集めた、お話会を開くところもあります。もし自分の中でなかなか受け止めきれないと感じたら、こうした場に出て気持ちをいろいろな方に聞いてもらうと、少しでも気分が落ち着くでしょう。ポスターやネットなどでこうしたお話会が開かれていないか探してみましょう。
感じていることは遠慮なく周りにいう
ペリネイタルロスを経験するとさまざまなことを感じ、心の中で自分を責めたり、悲しくなったりと感情が乱れてしまうこともあるでしょう。そんな時は遠慮せずに、周りの人に打ち明けましょう。声に出して話すことで気分がスッキリする効果がありますし、気持ちもだんだんと落ち着いてくるはずです。ただし、デリケートな話題ですから、家族や親しい間柄の友人など、話す相手は選んだ方がよいでしょう。合わせて読みたい
福祉系大学で心理学を専攻。卒業後は、カウンセリングセンターにてメンタルヘルス対策講座の講師や個人カウンセリングに従事。その後、活躍の場を精神科病院やメンタルクリニックに移し、うつ病や統合失調症、発達障害などの患者さんやその家族に対するカウンセリングやソーシャルワーカーとして、彼らの心理的・社会的問題などの相談や支援に力を入れる。現在は、メンタルヘルス系の記事を主に執筆するライターとして活動中。《精神保健福祉士・社会福祉士》
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