最近、木育という取り組みが教育現場で注目されつつあります。木育は2004年に北海道で生まれた言葉です。しかし、具体的にどのような教育なのか分からないという人も多いのではないでしょうか?木育は幼少期から自然に触れる機会を作り、人間本来の五感を育てる事で子どもの内面に豊かな世界を形成するといわれています。ここでは、木育の具体的な活動内容についてご紹介します。
木育の自由度が高い活動内容とは?
木育は子どもの年齢や経験に応じて段階的に学習していく方法です。その中で木育には3つのステップがあり、それぞれの段階に応じて木や森に触れながら自由に学んでいきます。子どもは驚くほど何かを吸収しようとする力があり、通常の教育現場ではカバー出来ないような知識や経験を得る事が出来るのです。
木育のステップ1「触れ・感じる」
木育のファーストステップは、木材に親しみをもって森林を守ろうとする意識を育むことです。つまり森や樹木に好奇心を持って、五感を通して体感することが目的となっています。
教育現場では子どもに初めての木体験を成功させて、木から見えるさまざまな世界へと導くことを目標に指導しています。説明的な活動から入るのではなく、実際に肌で感じながら、木を身近に感じられるようなステップとして取り入れられているのです。また肌からだけでなく嗅覚も使い、木本来の香りも感じながら、印象に残る工夫がなされています。
木育のステップ2「創り・楽しみ・学ぶ」
木育のステップ2では実際に手や体を使って創造的な活動を行います。手先を使う事で豊かな人間性を育み、創造力育む事で日常生活のうえで課題解決能力を養う役割が付くことも期待できるのです。
日本では昔から木材を用いた物づくりが盛んでしたが、現代ではそのような機会は減りつつあります。木育では木の扱い方や特徴などを学びつつ、役に立つものを創りながら楽しむ感覚を、子どもたちに育んでもらおうとしています。木の良さを、感覚的に実体験的に深化させることを目的とした活動を行います。
木育のステップ3「知り・理解・行動」
木育のステップ3では木材の利用や環境との関係を深く理解することを目的とした活動がメインとなります。環境に配慮した行動のための判断が出来る事や、森林育成活動などへの積極的な姿勢を育むのです。
自然材料としての木材は文化や伝統を守っていくうえで、とても重要な役割を担っています。その価値を深く理解し、積極的な姿勢を育てていく事が目的です。子どもにも分かりやすいように、物語にしたり絵本などで理解しやすいように工夫をしています。
合わせて読みたい
教育現場での木育への取り組みとは?
木育は木のおもちゃや自然をテーマにした野外活動の他に、そこから繋がって広がる活動が条件となっています。そのような中での教育現場では「ウッドスタート」という取り組みが普及し始めています。それは子育ての中心に木を置き、保育の環境の整備や木を感じながら、子どもの生活を豊かにしていく事を目的とした取り組みです。
さらに幼稚園や保育園と共に取り組む中で、一定の条件を満たした園は「ウッドスタート宣言園」として認定されることとなっています。
木育は五感が刺激され、幼児期の脳に好影響
木が生きている場所は子どもの五感を刺激します。特に幼児期はにおいを嗅いだり、触ったりしながら一番五感が刺激される時期です。この時期に、図鑑の中やゲームの中では経験できない体験をする事で、子どもの脳にとても良い影響を与えるはずです。
木をさまざまなものに見立てて遊ぶ能力は、子どもならではの才能です。その才能をフルに生かせるのは、木育の醍醐味ではないでしょうか?また自然の中で友達と協力しながら遊ぶ能力や、予期せぬ出来事に対応する力も育まれます。
生きている木を触れる事で情緒が安定する
リフレッシュ方法として「森林浴」という言葉がありますよね。私たちの体や脳は自然の中に身を置くことで、とても精神的にリラックスすることが出来ます。これは自ら動くことが出来ない植物が、身を守るために発する「フィトンチッド」という物質による効果で、この物質を浴びる事で私たちの情緒を安定させてくれます。
大人と同様、子どもも集団生活で無意識にストレスが溜まっています。そのような時に木育として自然の中に身を置くことで、情緒を安定させることが可能です。
正常な免疫を育み、アレルギーになりにくい
現代社会では、子どもの喘息やアレルギーが問題視されていますよね。これらは子どもの病気の中でも、特に悩みの種になるもの。このようなアレルギー疾患には、幼い頃から多くの菌に触れておく事も役に立つと言われています。
森の中や木にはさまざまな菌があり、子どもは遊びながら自然とそれらを触ったり体内に取り込んだりします。そうしていく中で体は正常な免疫力をつける事ができ、アレルギーになりにくい体を作ることが期待できるのです。
合わせて読みたい
福祉系大学で心理学を専攻。卒業後は、カウンセリングセンターにてメンタルヘルス対策講座の講師や個人カウンセリングに従事。その後、活躍の場を精神科病院やメンタルクリニックに移し、うつ病や統合失調症、発達障害などの患者さんやその家族に対するカウンセリングやソーシャルワーカーとして、彼らの心理的・社会的問題などの相談や支援に力を入れる。現在は、メンタルヘルス系の記事を主に執筆するライターとして活動中。《精神保健福祉士・社会福祉士》
この記事に不適切な内容が含まれている場合はこちらからご連絡ください。