「うそつきは泥棒の始まり」という言葉を聞いたことはありませんか。小さな悪事は、いずれ大きな悪事につながるという戒めの言葉で、昔は子どものしつけによく使われていました。うそをつくのは確かによくないことですが、小さな子どものうそにはいろいろなパターンがあります。では、どんなときに叱り、どのように対応するのがよいのでしょうか?子どものうそについて一緒に考えてみましょう。
子どもの「うそ」は3種類
大人の社会では「うそも方便」という言葉があります。「本音」と「建前」という言い方もあり、人間関係を円滑に進めるためにうそをつくこともありますね。大人はうそだとわかったうえであえてうそをついたり、うそを受け入れたりします。子どもの場合は、大きく分けて3種類のパターンがあるようです。
現実と空想の境目が曖昧になった「うそ」
就学前の子どもと話していると、こちらが「おや?」と思うような話をすることがあります。「昨日、パパとママと遊園地に行った」、「大きな熊のぬいぐるみを買ってもらった」など、楽しい話題が多いのですが、親御さんの方は「そんなことはありません」と慌てて否定したりします。たわいもない内容で、聞いている方は本当でもうそでもかまわないものがほとんどです。ただ、親としてはちょっと困ってしまいますね。こうしたうそは、厳密にはうそとも言えないものです。幼い子どもの場合、自分の空想と現実の境目がときどき曖昧になります。「こうだったらいいな」という願望が、本当のことのように感じられて話してしまうのです。そうでなければ、サンタクロースの存在を信じることはできませんね。子どもの心の状態としては健全なものです。
気を引きたいための「うそ」
親や、身近な大人、友達の気を引きたいためにつくうそもあります。「お兄ちゃんがたたいた」と兄弟げんかを大げさに言いつけたり、「うちにはおもちゃが100個あるよ」と言ったり、たいていの場合は、聞いている方も「どうも怪しいぞ」という気持ちになるうそです。なんの脈絡もなく、突然こうした話をしてくるので、「急にどうしたのかな?」と不思議に思うとうそだった、というパターンですね。これもうそというよりは作り話の範疇です。質問を重ねていくと簡単にほころびが出て、うそだったとわかります。かまってほしいという気持ちの表れですので、多くは単純なものです。ただし、小学校へ上がって年齢が高くなると、内容が巧妙になってくる場合もあります。自分以外の他者を引き合いに出すうそに関しては、内容をよく聞いて事実関係を確かめる必要はあります。
叱られないための「うそ」
子どものうその中で、はっきり「うそ」だと言えるのがこの種類の「うそ」です。黙ってお菓子を食べてしまい、叱られるのが嫌なので「知らない人が入ってきてお菓子を食べていった」などと、とんでもないうそをつくこともあります。このようなうそはすぐに見破られてしまいますし、笑い話ですみますが、自分の失敗をお友達や兄弟のせいにするようなうそには注意が必要です。「うそでしょ?」と言ってすぐに子どもが謝るようなら軽いものです。「絶対叱られたくない」という気持ちでうそをつき続けると、本人もだんだんそれが本当のことのような気がしてきて、自分のうそを自覚することが難しくなります。扱いが一番難しいうそだと言えるでしょう。
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うそをついた子どもへの対応
子どもがうそをついたからと言って、あまり深刻に悩む必要はありません。子どもはよくうそをつくものです。ずるやごまかしも普通にします。逆に、まったくそうしたことがなく成長するのも少し不安ですね。子どもは、よいことも悪いことも経験しながら、善悪の概念や自身の価値観、道徳観を身につけていきます。子どもがうそをついたときがチャンスだととらえて、働きかけを行いましょう。
叱らなくていい「うそ」の種類
前述した、現実と空想の境目が曖昧になってしまううそや、人の気を引くための単純なうそについては厳しく叱る必要はありません。特に、よそのお子さんが話しかけてきたときなどは「そうなんだ、よかったね」、「面白いね」と相づちをうって聞き流して問題はないでしょう。自分の子どもがこうしたうそを話していたら、「あれ?そうだったかな~」、「お母さんは違うと思ったけどな」とやんわり伝えてください。
叱るべき「うそ」の種類
大人の気を引くために、自分以外の子を引き合いに出してうそをつくような場合は、きちんと事実関係を確認して叱ってください。自分が叱られたくなくてついたうそや、ずるをしようとうそをついた場合も同様です。ただし、叱る場合は子どもの人格を否定しないように気をつけます。「うそをついた事実」だけをよくないことだと注意するようにしてください。実は、「うそつきは泥棒の始まり」などというのはよくありません。この言葉には、脅しや軽蔑、あきらめなど、よくない感情がこもってしまい、「うそをついてほしくない」という真意が伝わりません。子どもはうそをつき、それを見破られて叱られたり、うそがばれないかひやひやしたり、嫌な経験を積んで「正直でいよう」というメンタルを手に入れます。いたずらに不安視せず、うそをついたことをきちんと叱りましょう。
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子どもたちも大学生になり、自分の子育てはひと段落。保育士として、地域のコーディネーターとして、子育て支援・子ども支援にかかわっています。ゆる~く子育て楽しみましょう!
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