保育士。学生時代に児童心理学を学び、幼少期の関わりがその後の人生を左右することに強い関心を持ち、自身の研究テーマとする。 3児の母で、長女の小受では全勝を果たす。現在6年目となる保育現場や幼児教室で本領発揮し、周囲から絶大なる信頼を得ている。 生活教育こどもと幼児園 http://kodomoto.tokyo/保育記事監修者プロフィール:伊藤美緒先生
子どもが話を聞いてくれないというのは、お母さんやお父さんにとって、非常に多い悩みのひとつです。もちろん、きちんと話が聞ける子どももいますが、なぜ話が聞けない子どもたちが増えているのでしょうか?それは子どもの聞く力が弱くなっているからかもしれません。今回は、その原因と子どもの聞く力を育てる方法について、ご紹介します。
話が聞けない子どもの原因とは?
基本的に、子どもはじっと話を聞くことが苦手です。しかし、聞く力が弱すぎると、さまざまな場面で困ってしまうことになり得ます。しかし、子どもが話を聞けないことには、きちんとした理由や原因があるといわれています。まずは、これからお話しする内容が、自分の子どもに当てはまっていないかを確かめてみましょう。
子どもが話の内容に共感できていない
子どもは大人のように、さまざまなことを経験していないため、共感する力が弱く、人が今どのように思って話しているのかを想像できず、話自体に共感できないことがあります。このような子どもは、大人が話しているときはしっかりと聞いているように見えるのに、その後の行動で違うことをやり始めることが多いのが特徴です。子どもは話の内容が理解できないため集中力がなくなり、無意識のうちに「聞いているつもり」になっていることがあります。
子ども自身が周りの刺激を受けやすい
子どもたちの身の回りにはテレビや音楽、ゲームなど刺激になるものがたくさんあります。最近では、子どもにもスマホやタブレットを使わせる親も多いですよね。これらは子どもにとって、とても魅力的なものとして映るため、興味を持ってしまうと話の途中でも他のことが気になり、人の話が耳に届かなくなってしまうことがあります。また、家ではできるのに学校では先生の話が分からないなど、場面が変わると聞けないという子どもも多く、周りの環境に影響されやすい場合もあります。
話を聞かないことで自分を守ろうとしている
話している人に注目できない子どもの場合、周りの大人の話し方が原因になっていることがあります。子どもがうるさいと感じるような聞き方や話し方をしていると、子どもは話を聞くのが嫌になってしまいます。脳には自己防衛本能があるため、怒られたり叱られたりを繰り返していると、ストレスから脳が逃避を始めてしまい、話を聞かないことで自分を守ろうとするのです。この場合は子どもに原因があるわけではありませんので、親や大人たちの話し方や態度を見直す必要があります。
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聞く力を育てることによるメリットとは
聞く力とは、単に耳から音が入ってくる状態のことではなく、聞こえてくる言葉に集中し、その意味を理解したり、伝えたいことを読み取ったりする力のことをいいます。このような力が身につくと、以下のように、子どもの将来に必要な力が伸びることにつながっていくのです。
子どもの落ち着きと集中力が身につく
集中力や落ち着きは、一般的に7歳頃までに養われるといわれており、幼児期から聞く力を育てることによって、子どもは自分にとって必要な情報を素早く選択し、集中することができるようになります。集中力がアップすると、自然と落ち着いて行動ができるようになり、周囲の雑音や誘惑に邪魔されることなく、物事を根気よくやり遂げることが可能になります。子どもの集中力は「年齢+1分」とされていますが、年齢を重ねていくごとに増えていくので、結果として、落ち着いた大人へ育つのです。
想像力や読解力が高まり学力が伸びる
勉強は言葉を通して行われるため、聞く力を育てることで言語能力や国語力が豊かになり、相手の言葉に耳を傾けながら、言葉だけで状況をイメージできるようになります。さらに語彙(ごい)力も豊富になるため、文章を読んで内容を理解する力や、自分の頭の中にあるイメージを文章にすることも上手になるのです。幼児期においては、読み書きを要求されることは少ないですが、学校生活が始まると大きな比重を占めるようになりますので、聞く力が身についている子どもは学力が伸びていくのです。
会話やコミュニケーションが上手になる
学習をするうえでも、人間関係においても、すべての基礎はまず相手の話を聞くことから始まります。聞く力を育てると、相手の話から伝えたいことや考えていることを読み取れるようになり、相手の気持ちや立場を考えながら、自分の思いを上手に伝えることができるようになります。コミュニケーションは、相手との意思疎通があってこそ成立するものですから、将来、周りと良好な人間関係を築いていくうえでも、聞く力は大きな役割を果たすのです。
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福祉系大学で心理学を専攻。卒業後は、カウンセリングセンターにてメンタルヘルス対策講座の講師や個人カウンセリングに従事。その後、活躍の場を精神科病院やメンタルクリニックに移し、うつ病や統合失調症、発達障害などの患者さんやその家族に対するカウンセリングやソーシャルワーカーとして、彼らの心理的・社会的問題などの相談や支援に力を入れる。現在は、メンタルヘルス系の記事を主に執筆するライターとして活動中。《精神保健福祉士・社会福祉士》
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