NHKスペシャルで報道された「いじめ探偵」についでご存じですか。いじめに悩む子どもたちやその親が、最後に助けを求める駆け込み寺のような存在が「いじめ探偵」と呼ばれる阿部泰尚さんです。いまなぜ、「いじめ探偵」が求められているのか、番組の内容をもとにいじめ調査の実態についてご紹介します。
いじめ探偵の仕事
いじめ探偵と呼ばれているのは、東京で探偵事務所を営む阿部泰尚さんです。いじめ探偵は通称です。20名ほどの探偵を抱える事務所では、身元調査や素行調査など一般的な探偵業務がおこなわれています。業務のひとつとして、いじめに関する調査依頼をはじめておこなったのは2004年のことだそうです。
いじめの調査は寄付でまかなう
いじめ探偵の仕事は、いじめに関する調査をおこない、証拠を集めること。依頼主は、学校でいじめを受けている子どもたちやその親たちです。いじめに悩む小学生、中学生、高校生たち、本人が声をあげられず、かわりに助けを求める親たちは、最後の頼みの綱としていじめ探偵に連絡します。阿部さんは、当初は調査料金をもらうつもりでしたが、子どもの依頼でお金をとることに疑問を感じ、いまは無償で依頼を受けています。実際にかかる費用は寄付でまかないます。そのためにいじめ問題の調査を専門に扱う「ユースガーディアン」というNPOを立ち上げ、寄付や相談を受け付けています。
地道な裏取りとメディア戦略
いじめ探偵のおこなう証拠集めは、地道な作業です。基本的にはいじめを受けている子どもに聞き取り調査をし、物証を集めていきます。悪口の書かれた教科書、切り裂かれた体操着などの現物や、証拠として撮影していた写真、いじめ行為を記録していた日記など、つらいものばかりですが、いじめがあったという確かな証拠です。ほかにも、学校や第三者委員会がおこなったアンケートや調査報告書などの開示請求をおこない、どのような対応があったのかを確かめます。状況によっては自らテレビに出演したり、ネットに投稿したり、メディアを利用していじめ問題を告発することもあります。
いじめを受けている子どもの言動
- 衣服の汚れ
- 所持品の紛失や破損
- 金銭の紛失や使途不明
- 原因不明の不登校や腹痛など
合わせて読みたい
いじめ探偵が人気の理由
阿部さんは、いじめ調査をはじめてあつかった2004年以降、これまで5000件にものぼる案件を手掛けてきたといいます。もちろん、無償で受けていることも理由のひとつですが、有償でいじめ調査を引き受ける探偵社はいくつもあります。これほど、いじめ探偵が人気になっている理由はどこにあるのでしょうか。
いじめの証拠を集めるのは難しい
いじめの証拠を集めるのは、親にはなかなか難しいことです。実際に子どもが受けた嫌がらせや暴力の証拠を保存しておけばいいと思われるかもしれませんが、これは本当に胸がつぶれるほどつらい作業だということを理解してください。誹謗(ひぼう)中傷の手紙、汚された学用品など、持っているだけで自分が汚された気持ちになり、それが家のなかにあるということ自体がストレスです。大事な証拠ですが、「見るのも嫌で捨ててしまった」という人もいます。また、親にも日常の仕事がありますし、いじめにあった本人を支えるのに精いっぱいという精神状態であることがほとんどです。法的な知識や強い精神力、調査のノウハウがない限り、個人で証拠を集めることはやはり難しいといわざるを得ません。そのため、調査の専門家が必要になるのです。
区分 | 学校総数 | 認知した学校数 | 認知件数 | |
小学校 | 国立 | 72 | 67 | 4,634 |
公立 | 19,840 | 15,615 | 311,322 | |
私立 | 231 | 109 | 1,165 | |
計 | 20,143 | 15,791 | 317,121 |
立ちはだかることなかれ主義の大人たち
いじめは主に学校のなかで起こります。学校は基本的に閉ざされた社会で、他者の介入を嫌います。もちろん、子どもを守るためにそうしているのですが、ひとたび問題が起これば、情報が遮断され、外からは様子をうかがい知ることが困難になります。そのために、探偵は情報開示を求め、個々の学校の上部組織である教育委員会や、さらにそのうえの文科省までコンタクトをとっていくのです。しかしそこに立ちはだかるのがことなかれ主義の大人たちです。これまでに報道されたいじめ事件の多くで、学校はいじめがあったことを認めないという態度をとっています。いじめがあったことを認めることは、学校長の管理能力不足と認定されるからです。また、加害生徒の保護者との関係も無視できません。学校関係者でもいじめ被害当事者でもない、第三者としての探偵が求められるのは、大きな組織にも対抗できる知識や経験が豊富だからです。
合わせて読みたい
子どもたちも大学生になり、自分の子育てはひと段落。保育士として、地域のコーディネーターとして、子育て支援・子ども支援にかかわっています。ゆる~く子育て楽しみましょう!
この記事に不適切な内容が含まれている場合はこちらからご連絡ください。