昔に比べると少なくなりましたが妊娠を機に、一旦今の仕事を辞める方もいます。その際、失業保険はどうやって受給するのか、そもそももらえるのか、については気になる点ではないでしょうか。ここでは妊娠と失業保険をテーマに、詳しく解説します。
妊娠と失業保険について
そもそも失業保険ってなんなのか、みなさんはご存じですか?まずは失業保険について、基本的なことをおさらいしておきましょう。失業保険とは、公的保険制度のひとつです。この保険に加入している場合は、失業や自己都合で退職した際に、失業手当をもらえるという仕組みになっています。
ちなみに以下の条件が前提となるので、覚えておきましょう。
- 離職の日以前の2年間の期間で、雇用保険(失業保険)に加入していた期間が12カ月以上あること。
- 離職の日からさかのぼって1カ月ごとに区切った期間内で、賃金の支払いの基礎となった日数が11日以上ある月が12カ月以上あること。
また、離職者は3つの分類があります。
- 一般の離職者=自己都合で退職した人
- 特定理由離職者=妊娠や育児など正当な理由で退職した人
- 特定受給資格者=企業の倒産、解雇により離職した人
妊娠を理由に仕事を辞めた場合は【2】に該当します。
失業保険がもらえる条件は「失業の状態」による
失業手当を受け取るためには、「失業の状態」に該当しなければなりません。これは仕事を辞め、今は就業できていないけれども、再び就職しようという意思がある状態のことを言います。つまり仕事を辞めてから別の仕事を探している最中で、今は無職という状態をイメージすると分かりやすいでしょう。また、基本的な受給条件は他にもっと細かい条件がありますが、ハローワークによって定められている規定としては上記のようになっています。
妊娠は「失業の状態」にあたらない?
実は妊娠の場合は、「失業の状態」には該当しないため、すぐには失業手当をもらうことができません。なぜなら妊娠したら当然そのあとに出産があり、子育てが始まるため、すぐに就職できないと見なされるわけです。結果として、妊娠を理由に自己都合で退職した場合は、失業手当をすぐにはもらうことができないということになります。
失業保険受給期間の延長を活用しよう
妊娠を理由とする退職では、すぐに失業手当をもらうことはできませんが、受給期間を延長することは可能です。これは本来、1年間の受給期間を4年に延ばせる制度で、この期間内であれば失業保険の受給手続きを行うことができるようになっています。そのため子どもが2~3歳くらいになってから、再就職を目指して動き始めることを目標とすれば、この制度を利用して失業手当を受け取れるようになるのです。現時点では、再就職を考えていなくても、この延長手続きは行っておいた方がいいでしょう。
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妊娠での失業保険と扶養の関係について
妊娠での退職による失業保険の受給については、上記のように受給期間を延長することで猶予が生まれます。一方で扶養という制度もあり、これは配偶者の社会保険に入る制度のことを指します。専業主婦になるなら入った方がメリットは大きいとされていますが、扶養に入った後でも失業保険をもらうことはできるのでしょうか?
扶養のしくみはどうなっている?
扶養にはいくつかの種類があります。基本的には無収入あるいは低所得者が配偶者の扶養に入ることで、配偶者の社会保険に入れる制度です。低所得とは年収130万円をひとつの区切りとしており、この金額を超えると自分で国民健康保険に加入しなければならなくなります。この費用は自己負担になるので、低所得の場合は配偶者の扶養に入っていた方がお得なわけです。
失業手当をもらっていない期間は扶養に入ることができる
妊娠後すぐには、失業手当を受給できないことをお話しましたが、この期間は当然無収入になりますから、配偶者の扶養に入ることができます。ただし年収が130万円を超えてはならないので、仕事を辞める時期によっては入れない可能性があります。そうなった場合は、その年は自分で社会保険料を払っていかなければならないので、注意が必要です。
失業手当をもらいながら扶養に入ることはできない
失業手当をもらっている期間はその手当が収入と見なされるので、扶養に入ることはできません。ただ失業手当が少なく日当が3611円以下になるなら、失業手当をもらいながら扶養に入ることは可能です。しかし一般的な会社員として働いていたというのなら、この日当をこえる可能性が高いでしょう。まずこれには該当しないということを覚えておきましょう。
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福祉系大学で心理学を専攻。卒業後は、カウンセリングセンターにてメンタルヘルス対策講座の講師や個人カウンセリングに従事。その後、活躍の場を精神科病院やメンタルクリニックに移し、うつ病や統合失調症、発達障害などの患者さんやその家族に対するカウンセリングやソーシャルワーカーとして、彼らの心理的・社会的問題などの相談や支援に力を入れる。現在は、メンタルヘルス系の記事を主に執筆するライターとして活動中。《精神保健福祉士・社会福祉士》
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