妊娠して初めて「戌(いぬ)の日」という言葉を知る方も多いようです。日本では「七五三」や「成人式」といった人生儀礼のひとつとして、妊娠5カ月目を経過した、最初の戌の日に妊婦が腹帯を巻く「帯祝い」をして、「安産祈願」をする習わしがあります。ここでは「戌の日」にまつわる由来や、その内容について説明していきたいと思います。
「戌の日」とは何をすればいいの?
現在では「戌の日」とは「妊娠5カ月目の戌の日に神社やお寺で安産祈願を行う」という意味の言葉で使われています。安産祈願は決して義務や強制ではありません。妊婦さんの意思や体調を考慮したうえで計画するとよいでしょう。
本来の「戌の日」の意味と、その由来
本来「戌の日」とは、「戌の日のお祝い」を意味していました。このお祝いとは、妊婦が無事安定期に入った、妊娠5カ月目の戌の日に、初めて腹帯を巻き、集まった両家で食事などをして祝う「帯祝い」を指します。「戌」とは「犬」のことで、昔の人々にとって多産と安産の象徴であった犬にあやかって、帯祝いを「戌の日」に執り行うようになりました。
神社などで安産祈願を行う場合の流れ
一般的に戌の日の安産祈願は、妊婦本人が神社や寺院に赴いて執り行います。当日のおおまかな流れは、寺社によって多少異なりますが、受付で申し込みをし、祈願の謝礼金である「初穂料」を渡します。本殿にて10~20分くらいの祈願を受けたのち、お札や腹帯などの授与品を頂きます。妊婦本人が出向けないときは、代理人でも執り行うことができます。
「妊娠5カ月目の戌の日」の算出方法
「戌の日」とは、干支(えと)の順序と同じく12日に一度の周期でおとずれ、その年の戌の日カレンダーは、インターネットなどでも調べることができます。また「妊娠5カ月目」とは妊娠16週0日目のことで、この妊娠週数は受精卵が着床した日から数えるのではなく、妊娠前最後の生理初日が起点の妊娠0週0日となり、7日後を妊娠1週0日と数えていきます。
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腹帯は日本だけの風習?必要なの?
「腹帯(はらおび)」とは、妊婦がおなかに巻く布のことです。海外には見られない日本独自の風習で、昔は腹帯をしない妊婦は早産や難産になると信じられていました。現代では腹帯の必要性について賛否両論があるようです。
日本の伝統、戌の日の「帯祝い」とは
「帯祝い」とは、妊娠5カ月目の戌の日に妊婦が初めて腹帯を巻いて、家族で祝い膳を囲む儀式です。今のように、食料や医療が十分ではなかった昔の日本では、妊娠しても早期流産してしまうことが多くありました。無事に安定期である5カ月まで過ごせたときは、氏神様に農作物などを納めて感謝をし、この先も難なく元気な子どもが生まれるよう祈願をしたのです。このお祝いは、安産の象徴である犬にあやかるため、「戌の日」に行われました。
帯祝いに使用される腹帯について
正式な「帯祝い」は、「岩田帯」とよばれる紅白の絹帯と白木綿一反を、妊婦の実家から贈ります。祝いの儀式には「既に子宝に恵まれた夫婦」を帯役として招き、その妻が妊婦の腹に紅白の絹帯を巻きます。最近では安産祈願をする際の授与品として、神社などで「岩田帯」を頂くのが一般的になりました。「岩田帯」には「岩のように頑丈で健康な子どもが生まれますように」という願いが込められています。
腹帯は必要?メリットとデメリット
昔の日本人は、妊婦は常に腹帯を巻いていないと、早産や難産になると信じていました。ところが現在では、腹部を圧迫することで血流が悪くなり、息苦しさが妊婦のストレスにもなることから、「腹帯は必要ない」という医師が多いようです。しかし使い方によっては、保温効果や、おなかを衝撃から守るという役目、妊婦としての自覚を高めるなどのメリットもありますので、妊婦本人が腹帯の必要を感じるならば、素材や形状を考慮して使用するのもいいでしょう。
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社交的な我が子に困惑する引きこもり主婦。トイレでの愛読書はナンシー関さん。
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