働く母親に限らず、すべての母親にとって毎日の献立を考え、ごはん作りを続けることは大変なことです。2016年に料理研究家の土井善晴さんが書いた本「一汁一菜でよいという提案」には、そんな母親の気持ちを楽にする文章がたくさん登場します。今回は「一汁一菜」という新たな考え方と一汁一菜をもとに考えたレシピを三つ紹介します。
一汁一菜とは?ごはん作りが楽になる理由
一汁一菜のもととなっている言葉は「一汁三菜」です。一汁三菜は、献立を考えるときに「汁物一つと主食とおかずを三つ」という意味です。一汁一菜は「汁物一つと主食におかず一つだけでよい」という新しい考え方になります。一汁一菜が、ただ品数を減らすだけでなく、罪悪感なく母親をごはん作りの呪縛から解放する理由についてお話しします。
一汁一菜は品数を減らす手抜きではない
忙しい日は、おかずの品数を減らしてしまうとごはん作りが楽になります。しかし、品数を減らすと食卓が寂しくなり、母親たちは「ごはん作りをさぼった」という罪悪感にさいなまれるのです。お総菜を買ってくれば、きれいにお皿に並べることもできます。しかし、土井善晴さんは「お総菜を買ってきて、トッピングして食卓に並べることこそ手抜き」といっているのです。買ってきたおかずで品数を増やすよりも、たとえ一品でも一から手作りした一汁は立派な家庭料理であり、母親から子どもへの愛情であるといっています。
一汁一菜はおかずの数で悩まない
一汁一菜のおかずは、漬物でもかまいません。母親が毎日作るものは、汁物一つです。母親は「汁の具はなににするか」だけを考えればいいため、献立作りの呪縛からも解放されます。一汁一菜が母親の気持ちを楽にする一番の理由は「一汁一菜で十分」という前提のもとでごはん作りができるからではないでしょうか。食事とは、買い物から下ごしらえ、調理から片付けまでの一連の流れをいいます。買ってきたお総菜には、食事の「食べる」という部分しかありません。一汁一菜を丁寧に作ることで、しっかりと子どもに食事を提供していることになるのです。
一汁一菜には大きな失敗がない
土井善晴さんは、本の中で「一汁一菜は持続可能な家庭料理」と書いています。一汁一菜の基本はみそ汁とごはんです。みそ汁は、どんな具材を選んでも大きな失敗がありません。「昨日よりおいしくないみそ汁」ができたとしても、それはそれで小さな刺激と受け止めれば心が楽になります。大きな失敗がなく、ハレの日にもケの日(※)にも対応できる一汁一菜は、母親に負担をかけない「持続可能な家庭料理」でしょう。
(※ハレの日=特別な日、ケの日=普段通りの日常)
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一汁一菜を実践するときのポイント
一汁一菜は、シンプルなシステムだけにポイントをおさえて実践しなければ、たんなる「手抜き」「質素」な食卓になってしまうかもしれません。ここからは、一汁一菜を実践するときにおさえておきたいポイントを三つ紹介します。
「普通においしい」は合格点とする
母親が作る家庭料理とプロの料理人が作った料理を比べれば、プロが作った料理のほうが味はいいのかもしれません。しかし家庭料理には、プロの料理にはないプラス面があるのです。母親は、子どもの体調や栄養バランスを考えて料理を作ります。そこには、母親ならではの愛情があるのです。ごはん作りの呪縛に悩んでいる母親は、料理の味やできばえにこだわっているのかもしれません。一汁一菜を実践するときには、成果やできばえにこだわらず、「普通においしい」は合格点として、続けることがポイントなのです。
食材や食器は丁寧に選びメリハリをつける
一汁一菜は、広く浅くではなく、一品にこだわることが大切です。みそ汁を作るときには、具にあったみそを選びます。具は、マンネリ化させるのではなく、季節を感じる食材を使うのです。煮干しとかつお節とでは、だしの味が変わります。そして食器選びも大切です。一汁一菜は品数が少ないため、広いテーブルで食べるときには寂しく感じるかもしれません。そんなときにはお膳を使うといいでしょう。本の中でもお膳がたくさん登場しています。お膳を使うことで、食卓上に閉じた空間ができ、散らかったテーブルの上でもメリハリをつけて食事をすることができるのです。
栄養バランスは総合的に考える
一汁一菜は和食のすすめではありません。本の中には、みそ汁とパン、みそ汁と麺の組み合わせもあります。一汁一菜は、主食がごはんでもパンでも麺でもいいのです。一汁一菜を総合的にみたときに、栄養バランスがとれていれば合格点になります。白米に組み合わせるならば、みそ汁は具を多めにする必要があるでしょう。一方、チャーハンや炊き込みごはんと組み合わせるならば、全体のバランスを考えてみそ汁の具は少なめにするのです。タンパク質と野菜のバランスも総合的に考えます。みそ汁に「入れてはいけないもの」はありません。常識にとらわれない発想が、一汁一菜を楽しく続けるコツでしょう。
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「子どもの生きる力を引き出す!」をモットーにして、小学生二人の子育てをしています。現在は、30代後半になりましたが、武蔵野美術大学在学中から物書きを開始しました。職歴は、大学卒業後に会社員として働き、結婚を機に退職しました。現在はフリーランスのライターをしています。保持資格は、簿記3級と秘書検定2級と英検2級です。趣味は「資格の勉強」で、現在は保育士資格取得を目指して勉強をしています。
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