近年、社会問題にもなっている『教育格差』。実は、この教育格差には親の所得が大きく影響しているといわれています。今回は、教育格差と親の所得の関係を詳しく説明するとともに、教育格差が子どもへ及ぼす影響から対策まで、ご紹介します。
教育格差が生まれてしまった三つの理由
「格差」と聞くと、まず家庭の収入のことが思い浮かびますよね。親の収入が多い家庭では子どもの学力も高くなる傾向があるといわれていますが、親の収入が子どもの学力を左右しているのは、子どもを育てるために必要な費用、地域や学校側の体制など、さまざまな理由があります。
子どもを育てるために必要なお金の問題
子どもが生まれてから大学を卒業するまでにかかる養育費は、全国平均で約1600万円といわれています。さらに、教育費は約1000万円〜2500万円とされていますが、これは子どもの進路によって大きく異なってきます。この養育費と教育費の合計が子どもを育てるのにかかる費用です。そのため、子どもが一人前になるまでには、かなりのお金が必要になります。そのため、親の収入が少ない家庭では、子どもの学習環境まで手が及ばなくなってしまうのです。
ゆとり教育による学力や学習の質の低下
日本では1980年代より『ゆとり教育』が実施されてきました。ゆとり教育により公立学校の授業時間が減り、学習内容が削られた結果、子どもたちの学力低下・学習の質の低下・学習環境の乱れを招いたといわれています。また、塾や家庭教師など学校外で学習させる親が増え、収入によって、それができる家庭とできない家庭の間で教育格差が生まれ、広がってしまったのです。現在は脱ゆとりが進められていますが、ゆとり教育が生んだ教育格差は大きいといわれています。
地域格差によって十分な教育が受けられない
田舎は都市に比べると、教育や文化に触れる機会が少ないため、たとえ裕福な家庭であっても十分な教育を受けることができない場合があるといわれています。田舎に行けば行くほど、学外教育を受けられる施設は少ないため、田舎の子どもたちは教育を受けるという選択肢を与えてもらえないということなのです。そもそも教育格差とは、生まれ育った環境によって子どもが受けることができる教育に差が生じることを指しますが、お金という目に見える形とは別に、こんな所にも要因はあるのです。
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親の経済力と子どもの学力はなぜ比例する?
世界的に見ても高水準である日本の学力ですが、その理由は親が多大な私費負担をしているからです。また、日本は幼児教育から大学卒業までの私費負担割合が高いといわれていますが、それが実際にどのような影響を与えているのか見ていきましょう。
親の収入が子どもの学習環境や進路に影響
日本では9年間の義務教育があり、高校や大学への進学率も高いため、教育を受けるのは当たり前であるように見えるかもしれません。ですが、大学へ進学するには多大な費用がかかるため、親の収入が低い家庭では、子どもを希望通りの道に歩ませることが難しい状況にあるのが現状です。子どもの学力は本人の努力や能力によって変わりますが、子どもが希望する教育を受けさせることができるかどうかは別問題なのです。
塾や家庭教師など学校外教育での費用
日本では義務教育に加え、公立高校の授業無償化など、教育現場は改善されていると感じている方も多いかもしれません。ですが、ゆとり教育によって塾に通わせたり家庭教師をつけたりする親が増え、現在では全国で平均50%の小学生が塾に通っているという調査結果まであります。このような学校外での教育費というのは公的な保障がなく、自己負担しなければならないため、親の収入によって、学校外教育を受けることのできる子どもとできない子どもが出てきてしまうのです。
教育格差が引き起こす貧困の連鎖
十分な教育を受けてこなかった子どもは、学習や進路に対して、興味を持たなくなってしまう傾向があります。その子どもたちが大人になった時を想像してみてください。低学歴であるがゆえに、就職しても非正規雇用になりやすいということが生じてしまい、収入が低く、結婚して子どもが生まれたとしても、十分な教育を受けさせてあげられなくなる可能性があります。このように、親の収入による経済格差が、子どもの将来にまで影響を与えてしまい、負の連鎖となっていくことも少なくありません。
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福祉系大学で心理学を専攻。卒業後は、カウンセリングセンターにてメンタルヘルス対策講座の講師や個人カウンセリングに従事。その後、活躍の場を精神科病院やメンタルクリニックに移し、うつ病や統合失調症、発達障害などの患者さんやその家族に対するカウンセリングやソーシャルワーカーとして、彼らの心理的・社会的問題などの相談や支援に力を入れる。現在は、メンタルヘルス系の記事を主に執筆するライターとして活動中。《精神保健福祉士・社会福祉士》
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