虐待の四つの定義。しつけと虐待の違いとは

虐待のイメージ
現代日本では核家族化が進み、母子の密室育児が問題になっています。日々の育児や対人ストレスが重なり、思わず子どもに手をあげそうになったというお母さんは大勢います。「叱るときにたたいてしまった」「子どもが泣くまで執拗(しつよう)に責めてしまった」など、自分のしつけが虐待にあたるのではないかと不安になっている人も多いのではないでしょうか?この記事では、虐待としつけの違いについて考えてみます。

児童虐待の四つの定義

虐待の定義
近年、児童相談所に通報される虐待報告は増加傾向にあります。これには、いくつかの原因が考えられます。まずは、通報しやすい制度が作られたことがひとつ。そして、児童虐待について一般の認知度が上がったことが大きな理由です。厚生労働省が出している児童虐待の定義は、四つにわかれています。それぞれ、どのような行為が虐待にあたるのか、詳しく解説します。

殴る、蹴るなどの「身体的虐待」

子どもを殴る、蹴るなどの「身体的虐待」は見た目にも感覚的にもわかりやすい虐待です。他にも、わざと熱いシャワーをかけてやけどを負わせたり、お風呂の冷水につけて出さないようにしたり、身体を痛めつけるような行為が身体的虐待にあたります。ここまでひどくはなくても、叱るときに感情が抑えられなくなり、子どもの身体を激しく揺さぶる、何度も執拗(しつよう)に身体をたたく、物を使ってたたくといったこともそうです。手足をひもで拘束したり、閉じ込めたりすることも身体的虐待です。

性的行為に関する「性的虐待」

虐待の多くは表面化しにくいものばかりですが、特に「性的虐待」は密室で行われることが多く、見つけにくい虐待です。女の子だけではなく、男の子も虐待の対象になります。子どもの身体や性器を触る、性行為を強要する、といった直接的な行為以外にも、大人の性器や性行為を故意に見せることも虐待にあたります。ネットのサイトやポルノグラフィを見せることも同じです。裸の写真を撮って児童ポルノとして使用したり、ネットにあげたりすることも虐待であり、犯罪です。

養育の放棄「ネグレクト」

就学年齢に達していない子どもの場合は、「ネグレクト」も発覚しにくい児童虐待です。簡単に言うと養育の放棄ということになります。子どもを何日も放置して旅行に行っていた保護者のニュースを聞いたことがあるでしょう。こうした極端な例だけではなく、日常的にお風呂に入れない、食事を与えない、成長に応じた衣服を用意しない、爪を切らない、といったこともネグレクトです。夏場に車の中に子どもを閉じ込めて放っておくのも、こちらにあたります。身体的虐待との区別は、積極的な介在をしないという点です。

物理的行為をともなわない「心理的虐待」

「心理的虐待」は、ごく一般的な親子関係で、一番起こりやすい虐待と言えるかもしれません。子どもを叱ったり、激励したりする過程で、ごく自然に行われている可能性があります。例えば、「お兄ちゃんはできるのにあなたはなぜできないの?」という兄弟を比べておとしめるような発言もそうです。「ちゃんとしないとお外に捨ててくるよ」などという脅しも、虐待の一種です。家族間の暴力を見せることも心理的な虐待です。夫婦間で行われるDV(ドメスティックバイオレンス)は、間接的に子どもの心を傷つけていることになります。

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児童虐待の現状

児童虐待
このような児童虐待は、どのような頻度で行われているのでしょうか?こんな行為が実際に行われているとはにわかには信じられないかもしれませんね。しかし、厚生労働省の調査によれば、虐待は年々増えており、減ることはありません。平成28年度の速報値では、全国208カ所の児童相談所が対応した虐待件数は12万件を超え、過去最多となっています。

被害は小学校入学前の子どもに多い

厚生労働省が平成24年度にまとめた資料によりますと、虐待を受けた子どもの年齢でもっとも高かったのは小学生でした。全体の約35%を占めています。3~6歳までの子どもは、約25%です。ただし、0~3歳、3歳~6歳の就学前の子どもを合わせると、約43%にのぼります。幼い子どもは、大人の擁護がなければ生きていけません。そのため、親の支配を受けやすく、虐待にさらされる危険が高いのです。就学前は、幼稚園や保育園に行かせる選択も親次第。社会的に見えにくい就学前の子どもにおいては、この数字も氷山の一角と言えるでしょう。

虐待者は実母・実父が多い

実際に子どもを虐待しているのは、実母や実父です。実母が約57%ともっとも多く、実父は29%という数値が出ています。事件報道にあるような、母親の再婚相手や恋人の男性といった立場の人は非常に少ないのが現状です。子どもにとってもっとも身近で頼りになるはずの親が子どもを傷つけているという事実を、認めなくてはなりません。悲しいことですが虐待は、決してひとごとではないのです。

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