親なら、勉強も運動もできる子に育てたいと思うもの。そのためにポイントとなるのは3歳から始まる幼児期と、7歳から始まる学童期の過ごし方です。この時期に子どもはどう過ごせばよいか、また親はどのようにかかわればよいかについて解説します。
運動意欲と勉強意欲には相関性がある
「運動も勉強もできる子」といえば、「運動神経がよくて、学んだことを覚えるのも早い子のことでしょう? 生まれ持った資質が大きいのでは?」と思っていませんか?
今、考えていただきたいのは「もともとできる」といった才能のことではなく、「できるようになるために努力する力」のこと。運動ができるように頑張ろうとする子は、勉強もできるように努力する傾向が強いそうです。毎年行われる「全国学力テスト」で上位に入る県は、「全国体力テスト」でもやはり上位に入ってきていることからも、運動意欲と勉強意欲の間には関係性があるといわれています。
学力(平成28年度) | 体力(平成27年度) | |
1位 | 石川県 | 福井県 |
2位 | 秋田県 | 茨城県 |
3位 | 福井県 | 新潟県 |
4位 | 広島県 | 秋田県 |
5位 | 富山県 | 石川県 |
目標を決めて、努力を積み重ねていくという意味では運動も勉強も同じ。では「目標に向かって進む力」をつけるには、どうすればいいのでしょうか。
勉強と運動の両方に必要なのは「集中力」
学問や芸術、スポーツなどジャンルにかかわらずすぐれた業績を上げている人は、並外れた集中力を持っている人が少なくありません。決めた目標を達成するには、一つひとつのプロセスに集中する必要があるからです。
集中力はすぐに身につくものではありません。3歳から始まる幼児期より、少しずつ集中する力を養っていくことが大切です。幼児期の子どもが集中できる時間は、せいぜい「年齢+1分」程度といわれています。年齢に合わせて、何かに集中できる時間を作ってあげましょう。
「遊び」の中でこそ集中力は伸ばせる
3歳の子に対して、集中力を養うために何か特別なことをする必要はありません。絵を描いたり工作をしたり、公園の遊具やボールで遊んだり…。ひたすら石を並べるなど、大人から見て「それがおもしろいの?」というようなことでもかまいません。子どもがやりたい遊びに取り組める時間をたっぷり取りましょう。
このとき、できるだけ子どもが飽きるまで自由にさせることがポイントです。「役に立つ/立たない」など、大人の物差しで子どもの行動を制限しないことです。特に、子どもが遊びに没頭しているときは、見守りましょう。こうした時間こそ、子どもの集中力は高められているのです。
「遊び」で育つ自主性・実行力・自己肯定感
好きなことに集中することは、自分でやりたいことを見つける「自主性」や、工夫しながらものごとに取り組む「実行力」を育ててくれます。また、好きなことをすると「楽しい!」「もっとやってみたい!」というポジティブな感情が生まれ、子どもの中で自己肯定感が作られます。これらの力や感情が子どもの中で培われていれば、学童期になってからも勉強や運動に意欲的に取り組めるでしょう。
逆に注意しなければならないのは、「遊び」の内容を親が決めてしまうこと。子どもの中で「やらされている」「楽しくない」という思いが強くなると、自己肯定感が持てなくなってしまうことがあります。親がいろんな遊びを提案するのはいいことですが、子どもに決定権を持たせてあげてください。また、幼児期からの習い事は「好きな遊び」にすることができる一方、「強制されてやっている」という感情を芽生えさせる可能性もあります。もしも、子どもが「つまらないから辞めたい」と訴えたときは、子どもの意見を尊重してあげましょう。
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7歳からの学童期で育てていきたい「地頭」
3歳からの幼児期は、「遊び」を通して集中力や自主性、実行力、自己肯定感を育むことが大切だと述べました。こうした力は子どもが成長するうえでのベースになるからです。
小学生になると、学校生活を通じて理解力や思考力、認識力、想像力、語彙(ごい)力などを身につけていきます。いわゆる「地頭(じあたま)がよい」というのは、これらの能力がすぐれているという意味ですが、3歳から作ったベースがしっかりしていれば、地頭をよくすることは難しくありません。学童期にさしかかる7歳は、地頭を鍛え始めるスタート地点にしましょう。
地頭は日常生活の中で鍛えることができる
3歳で「遊び」が重視されたように、7歳から地頭を鍛えるにもやはり「遊び」が有効です。特別な教材は必要ありません。テレビのクイズ番組や雑誌などで出題される間違い探し、お風呂で出し合うなぞなぞなど、子どもが楽しいと思えることでいいのです。もっと身近なところなら、一緒に買い物に行き、お肉や野菜の産地表示を確認するといったことでも十分です。
間違い探しは脳の「ワーキングメモリ」(情報を一時的に記憶・処理する能力)を鍛えるともいわれますが、「これは○○の能力を伸ばすのにいい」ということに親はあまりとらわれないようにしたいものです。大切なのは、子どもが「おもしろい!」「それってどういうこと?」と興味を持てること。好きなことに夢中になるほど、「地頭」は鍛えられます。何に興味を持つかは、子どもによって異なるもの。無理に「これに興味を持って」と親が強制してはいけません。
運動も勉強も脳を鍛えることが大切
地頭を鍛えることは、脳を鍛えることです。脳にある神経細胞同士はシナプスというコブのような部分でつながっていて、情報を伝達しあっています。シナプスが多いほど情報の行き来は活発になりますが、好きなことに夢中になっているときにシナプスは増えるそうです。
「勉強するうえで脳を鍛えることが大切なのはわかるけれど、運動能力は筋肉を鍛えなければならないのでは?」と思う人もいるでしょう。ところが、運動も脳を鍛えることで能力がアップするといいます。アスリートにパフォーマンス向上のためのアドバイスを行う東大大学院教授の深代千之先生によると「速く走るには、正しい走り方を頭の中で理解すること。そして、正しい動作を何度も繰り返し、脳からの電気信号を筋肉に届けるための道筋を作ればよい」のだとか。何度も練習しながら脳にインプットするという点では、九九を暗記することと似ていますね。
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企業取材や社史制作をメインに、子供の出産を機に教育や会計などの記事も手がけています。家族は小学生高学年の娘、夫。関心事は教育やライフプランのことなど。「これからの時代を生きるために必要な力って何?」をテーマに、日々考えています。
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