経済的自立が難しい母子家庭において、元配偶者からの養育費は重要な収入源です。しかし、現実には養育費不払いが横行しています。そこで、ついに地方自治体が立ち上がりました。困窮する母子家庭を支援するために、独自の制度設定を計画しています。養育費不払いの現状と、支援する自治体についてまとめました。
養育費不払いが横行する現状
養育費は、離婚後に未成年の子どもを養育するための費用です。一般的には、離婚の際に両親の間で取り決めをし、額面や支払方法を決めておきます。養育費の支払いは、法律的には「生活保持義務」であり、子どもが離婚前と同じ程度の生活ができるように支払うべきお金です。しかし、現実には養育費不払いが横行しています。
養育費を受け取っている母子家庭はたった2・5割
養育費は、母子家庭でも父子家庭でも同じく発生する可能性があるものです。しかし、社会的に男女の就労・賃金格差が大きいことと、主に女性が子どもを養育するケースが多いため、多くは元夫から母子家庭に支払われる形で発生しています。離婚家庭で、養育費の取り決めをしている家庭は約半数。そのなかでも、継続的に養育費を受け取っている母子家庭は24・3%となっています。養育費の相場は決して高いものではなく、子どもが15歳未満のうちは4万円前後が相場といわれています。それでも、養育費不払いが常態化しているのです。
母子世帯の母の養育費の受給状況(平成28年)
子どもの数別養育費(1世帯平均月額)の状況(平成28年)
モチベーションの低下が原因?身勝手な言い分
養育費不払いには、いくつかの原因があります。ひとつは、元配偶者の経済状況が大きく変化した場合です。離職など、経済的に困窮している場合は、払いたくても払えないという状況もあり得ます。また、元配偶者が再婚して家庭状況が変化すると、子どもへの気持ちが変化することもあります。元親同士の関係が悪化し、子どもとの面会を制限するなどの処置により、モチベーションが低下するという事例もあります。どちらにしろ、大変身勝手な言い分であり、子どもの幸福や権利をないがしろにした不誠実な態度です。
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改正民事執行法で養育費不払いは減少する?
これまで、養育費不払いに対してなんの対策もなかったわけではありません。「養育費を払ってください」という申し入れに対して誠意が感じられない場合は、法に訴えることができます。特に2019年5月に成立した改正民事執行法で、養育費不払いが減少する可能性があります。
最後の手段「強制執行」は伝家の宝刀
養育費の支払いが滞ったら、まずは元配偶者に連絡をする必要があります。そもそも離婚した元配偶者とは折り合いが悪いかもしれませんが、養育費は子どもが受け取る権利です。そこは我慢して請求をする必要があります。連絡をしても納得する回答が得られない場合は、家庭裁判所に申し立てをして、「履行勧告」を行ってもらいます。それでもダメな場合は、最後の手段である「強制執行」です。「強制執行」では、給与・預金通帳・不動産の差し押さえができます。
「強制執行」を補完する改正点
ところが、これまでの法律では、給与・預金通帳の差し押さえをするためには、元配偶者の勤務先、預金通帳の口座情報を把握しておく必要がありました。元配偶者が職場を変わって連絡をしなかったり、預金通帳を新しく作ってお金を移してしまったりすると、「強制執行」自体が行えなくなっていたのです。これが、養育費不払いに「逃げ得」を許していた原因です。
この法律の抜け穴を埋めるために、2019年5月に改訂された民事執行法では、元配偶者の勤務先と預金口座についての情報提供を受けられるよう改正が行われました。地方裁判所に申し立てをすれば、年金事務所や金融機関を通して情報をもらえることになったのです。
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子どもたちも大学生になり、自分の子育てはひと段落。保育士として、地域のコーディネーターとして、子育て支援・子ども支援にかかわっています。ゆる~く子育て楽しみましょう!
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