ADHDの子どもを持つ親の中には、自分たちが子どもにどう関わっていくべきなかについて悩んでいる人も多いです。そんな親のために、積極的に子どもとの関わりを持てるよう学ぶトレーニングがあります。これをペアレントトレーニングと呼んでいます。今回は、ペアレントトレーニングとはどういうものなのかについてご紹介していきましょう。
ペアレントトレーニングとは何か?
ペアレントトレーニングと聞いても、ピンとこない人が多いかもしれません。しかしADHDの子どもを持つ親にとっては、非常に心の支えになるトレーニングだと言えるでしょう。ペアレントトレーニングは、自分がどう子どもと向き合ったらいいのか、こんな時はどうすればいいのか?など、多方面で支えになってくれます。
厚生労働省で推奨されているトレーニングである
近年、ADHDの子どもが増えてきていると言われています。多くの場合は、親や学校側が「この子はもしかするとADHDなのでは?」と疑いを持ち、医師を受診することで発覚しています。早い段階で見つけることができるのは良いことですが、その後に親が子どもに対してどのように接して行くべきか悩み始めるケースも少なくないのです。
そんな親子のために、厚生労働省では「発達障害児及び家族等支援事業」の1つとしてペアレントトレーニングを推奨しています。
親子の関わり合いを学ぶ
子どもにとって、家庭というのは最も身近にある社会的環境です。そのため、親の関わり方は子どもの成長に大きな影響を与えます。例えば「自分の子どもは他の子と違う」と悩みすぎてしまったり、逆に過保護になりすぎてしまい、親子の距離感のバランスが崩れてしまうこともあるのです。
しかし、ペアレントトレーニングを学ぶことによって、親子の良好で適度な距離感を知ることが可能になります。特にADHDの子どもを持つ親は自分たちだけで抱え込んでしまうことも多く、支援が必要なのに届かないことがあるため、ペアレントトレーニングを積極的に受けることが重要です。
子育てにおける悩みや困りごとの解消
どのような環境でも、子どもを育てることは一筋縄ではいきません。日々、子どもと向き合う中で「どうしてこうなるのだろう」「こういう時、どうしたらいいのだろう?」と悩むことは非常に多いでしょう。
そんな時にペアレントトレーニングを受けると、悩みや困りごとの相談ができ、的確なサポートをしてもらえるため、療育の効果をあげたり維持したりすることが可能になります。つまり、親子それぞれのストレスを軽減し、自由で豊かな教育への手助けができるようになるのです。
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ペアレントトレーニングの種類とは
いざ、ペアレントトレーニングを受けたいと思っても、どのようなことをしてもらえるのか、種類はあるのかを理解していないと不安が大きくなりますよね。ペアレントトレーニングにはいくつかの種類があるので、よく検討してみましょう。それぞれの内容を知ることは、選択肢を適切に選ぶことにもつながります。
精研式・奈良方式のトレーニング
もともと、アメリカで開発されたADHDの子どもを持つ家庭向けプログラムを日本向けに改良したものです。対象年齢が決まっており、4歳から10歳、定員8人程度で行います。10回のセッションを行い、各回90分程度時間を要するので、非常にゆったりと行われることが特徴です。
内容としては、講義・ロープレといった企業研修に似た部分があり、学んだことを自宅で実践してみて、次回のセッションの時にグループで共有するという方法で学んでいきます。つまり、子どもの行動や特徴として「好ましいもの」「好ましくないもの」「許しがたいもの」に分類して、褒める方法や具体的な対策をグループで考え、振り返るという方式です。そのため、親が子どもと関わることへの自信を持てるようにすることが目的になります。
肥前方式のトレーニングについて
日本国内で最も早くペアレントトレーニングを開始したと言われている、国立肥前療養所で開発されたプログラムです。当初は、知的障害児を抱える家族を対象としていましたが、現在ではADHDの子どもを持つ家庭にも提供できるように改良されました。
対象年齢は3歳から12歳と幅広く、定員は9人程度です。10回のセッションで各回150分と非常に長い時間トレーニングを行います。内容は、講義・グループディスカッションの2部構成となっており、グループとしてまとめて話をするのではなく、個別に検討していきます。つまり、改善したい行動を決め、家庭で記録・観察を行なって、再度環境調整や対応について話し合うという方法です。このトレーニングでは、子どもの行動修正や家族の抑うつ感の改善が期待できます。
鳥取形式トレーニングもある
委託を受けて、鳥取県で地域の通園施設などで開催されているプログラムです。幼児から小学校低学年向け、小学校高学年から中高生向けとほとんどの年齢を網羅し、定員も10人程度を対象とします。6回から8回のセッションを各回90分から120分程度行い、講義・ワークの後に家庭で実践し、次回のセッションで共有というサイクルを取ります。
精研式・奈良方式と似ていますが、より親が「自分だけが悩んでいるのではない」という感覚を得られるように、多くのグループに参加できることや子どもを褒めて伸ばす方法を具体的に紹介してくれる点が特徴です。
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福祉系大学で心理学を専攻。卒業後は、カウンセリングセンターにてメンタルヘルス対策講座の講師や個人カウンセリングに従事。その後、活躍の場を精神科病院やメンタルクリニックに移し、うつ病や統合失調症、発達障害などの患者さんやその家族に対するカウンセリングやソーシャルワーカーとして、彼らの心理的・社会的問題などの相談や支援に力を入れる。現在は、メンタルヘルス系の記事を主に執筆するライターとして活動中。《精神保健福祉士・社会福祉士》
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