近年、日本で起きている虐待加害者の9割近くが実親であると言う結果が出ています。また命の危険があるとして、警察に緊急保護された子どもは年間5,500人程度まで増えており、児童虐待は年々深刻化しています。ここでは、虐待のさまざまな種類や2019年に行われた児童虐待緊急点検結果、親が虐待の加害者になってしまう理由についてご紹介します。
虐待にはさまざまな種類がある?
昔は"暴力を振るう行為=虐待"とされている傾向にありましたが、現在では言葉で子どもの心を傷つけるなどの精神的虐待も増えてきています。児童虐待には、どのような種類があるのでしょうか?
児童への身体的虐待・性的虐待
身体的虐待とは殴ったり、蹴るなどの暴力をふるって身体的苦痛を与える行為のことをいいます。身体的虐待が虐待の中で一番重症度が高く、後遺症が残ったり、最悪の場合には死に至るケースもあります。
また子どもに性的な強要をすることも虐待にあたります。性行為を始め自身の性的行為を見せる、子どもをポルノ写真の被写体にするなど、大人が子どもに性的行為や刺激を与えてはいけません。重症度は低いものの、子どもの心に大きな傷を付けることになるのです。
心理的・精神的虐待も深刻化している
虐待の中で最も相談ケースが多いのが心理的・精神的虐待です。心理的・精神的虐待とは言葉で脅したり兄弟間で差別して扱うなど、子どもに対して精神的苦痛を与えることを言います。また直接子どもに対して攻撃しなくても、子どもの前で激しい夫婦喧嘩やDV (ドメスティックバイオレンス)を行うことも虐待になります。
心の傷は目に見えないため相談件数は多いですが、警察が介入する事は難しい場合がほとんどだとされています。
見逃しやすいネグレクトもある
暴力などを与える身体的虐待や言葉などで心を傷つける精神的虐待に続き、子どもをネグレクト(無視)することも虐待になり、以下のようなことがネグレクトに該当します。
- 十分な食事を与えない
- お風呂に入れず不潔なまま過ごさせる
- 長時間子どもを放置する
- 重い病気の時であっても医者に連れて行かない
- 学校に行かせない
保護者が本来行うべき教育や育児を放棄していると、ネグレクトとして通報されることもあります。
合わせて読みたい
2019年に行われた児童虐待緊急点検結果
近年の児童虐待増加を省みて、政府は2019年に緊急点検を実施しました。緊急点検は児童相談所や学校を通じて行われ、合計3000人程度の子どもが虐待されている可能性があると判断されています。どのような結果だったのかを一つ一つ見ていきましょう。
児童相談所を通じた緊急点検結果
過去に児童相談所に相談があり、在宅対応になっていた子ども3万7,806人とその保護者を対象に緊急点検が行われました。面会できた子どものうち172人については、体に怪我があったため児童相談所に一時保護されたり、里親のもとに引き渡されるなど保護者から引き離す措置が取られています。一方で安全確認を行ったうち438人については、いまだに安全確認がとれていないという結果がでました。
学校などを通じた緊急点検結果
2週間以上幼稚園や小中学校を欠席している子ども18万7,462人を対象に緊急点検が実施されました。面会できた子どものうち2,656人は虐待の疑いがあると判断されています。また合理的な理由なく会えなかった子どもが9,889人もおり、虐待の疑いがある2,656人と合わせた"1万2,545人"は虐待の可能性があるとして児童相談所や警察へ情報提供されました。
未受診児・未就園児に対する緊急点検結果
未受診児・未就園児がいる家庭を対象に緊急点検が実施されました。乳幼児健診を未受診であったり、保育園・学校などに通っていない子どものうち159人については虐待されている可能性があり、うち21人はすでに保護されています。一方で行政機関が安全確認出来ていない子どもは423人(2019年3月1日時点)という結果が出ており、引き続き調査を進めているとのことです。
合わせて読みたい
福祉系大学で心理学を専攻。卒業後は、カウンセリングセンターにてメンタルヘルス対策講座の講師や個人カウンセリングに従事。その後、活躍の場を精神科病院やメンタルクリニックに移し、うつ病や統合失調症、発達障害などの患者さんやその家族に対するカウンセリングやソーシャルワーカーとして、彼らの心理的・社会的問題などの相談や支援に力を入れる。現在は、メンタルヘルス系の記事を主に執筆するライターとして活動中。《精神保健福祉士・社会福祉士》
この記事に不適切な内容が含まれている場合はこちらからご連絡ください。