学校が休校になって数か月がたちました。緊急事態宣言も5月まで延長になり子どもの学力がどうなるか不安が募るばかりですね。学校の多くははオンライン授業もなく、プリント配布しただけの自己学習のみ。それだけで子どもの学力は維持、または向上できるのでしょうか。現状のオンライン授業についてどうなっているのかまとめてみました。(2020年5月8日現在)
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休校中で学力格差?
多くの学校は3月に休校になった時点で多くの宿題やテキストをプリントで配布しました。その後、数か月も授業がなく、プリントだけ配布され、わからない箇所はそのまま放置されているのが現状です。学校が再開するまで提出や質問する機会もなく、学習時間などは自己管理に任されているといってよいでしょう。
小学生なら親がみることもできますが、中高生になるとなかなかそうもいきません。また自己管理はできる子はいいですが、それ以外の子は一日中、ゲームやSNSで時間を持て余してしまっているのです。
かたや私立校や塾などの一部ではオンライン授業を導入しているところもあります。休校中は他の子どもの学習状況がわからず、学習内容に格差が生じてしまわないか不安な日々を過ごします。とくに受験生はオンライン授業を受けた子と受けていない子で学力格差がでてしまい、入試の際に大きな差がある状態で受験をすることになりかねません。
失われた学習時間を回避するために・・・せめてオンライン授業をおこなうことは難しいのでしょうか。
そもそもオンライン授業とは
オンライン授業とはすべての作業をインターネット上で行う遠隔授業のこと。学校や塾で利用されている方法には主に以下の2つがあります。
同期型オンライン授業
Zoomなどを使って映像や声を送受信できるので先生と生徒が同時にコミュニケーションをとりながら授業を進められます。
オンデマンド型授業
個々の都合のよいときにインターネット上にアップされている授業動画を受講できます。1同期型オンライン授業とは違い同時期にコミュニケーションはとれませんが、授業後に先生にメッセージで質問することが可能です。
オンライン授業は学校の授業と同じように時間割が決められていることが多く、規則正しい生活を送ることができるでしょう。またレポートや課題を提出することで成績が評価されることもできます。
オンライン授業の状況
文部科学省は2020年4月21日、新型コロナウイルス感染症対策のための臨時休校に関連した公立学校の学習指導の取組状況を公表しました。
- 「教科書や紙の教材を活用」を指導した学校は100%
- 「テレビ放送を活用した家庭学習」は24%
- 「教育委員会が独自に作成した授業動画を活用した家庭学習」は10%
- 「それ以外のデジタル教科書やデジタル教材を活用した家庭学習」は29%
- 「同時双方向型のオンライン指導を通じた家庭学習」は5%
「同時双方向型のオンライン指導を通じた家庭学習」は5%と極端に少ないのがわかります。ただし、4月16日に緊急事態宣言が出されたことによりオンライン授業を行う学校が増えるため、現時点での数値から変動があると予想されます。
タブレットを配布している自治体もある
東京都の自治体で港区は23区で唯一オンライン授業をスタート。各小中学校に1台ずつスマートフォンを配布しているそうです。渋谷区の公立中学では2017年9月から生徒に1台タブレットを配布しており、課題の配布、提出もインターネット上で完結。今後は授業動画もスタート予定とのこと。
埼玉県の戸田市では市内の全小学校、中学校でオンライン授業を開始。デジタル機器がない家庭にはおおよそ3千台を貸し出し済。通信環境が整っていない家庭には学校で動画を端末にダウンロードして対応したそうだ。そのため1万1千人余りのすべての生徒がオンライン授業を受けられるとのこと。
公立のよさはどこでも同じ教育を受けられることといわれていますが、実際は自治体や学校によって差がでてきておりいささか不公平感さえも感じてしまいます。
私立と公立との差は?
上記のように公立の中でも多少の温度差があるようですが、公立と私立ではオンライン授業の導入差はどれくらいあるのでしょうか。ラインリサーチのアンケートの結果をみていきましょう。
私立では「宿題や課題はインターネットを通じてだされる」割合や「オンライン学習やWEB教材アプリなどによる自習がおすすめされている」割合も国公立よりも高くなっているのがわかります。さらに高校でオンライン授業を行っているのは国公立で9%、私立で26%という結果に。オンライン授業については私立のほうが進んでいるといってよいでしょう。
なぜ公立はこんなに遅れているの?
経済対策「安心と成長の未来を拓く総合経済対策」(2019年)では2023年までに小学校と中学校で全学年の児童生徒が1人1台の端末を持ち、学校のICT環境整備の実現が盛り込まれています。2023年までとなっていますので、現段階ではまだ環境設備の途中ということでしょう。その裏付けとして1学校における公立のICT環境の整備状況をお知らせします。
※( )は前回調査(平成29年度)の数値
普通教室の無線LAN整備率 40.7%(34.5%)
普通教室の大型提示装置整備率 51.2%
教員の校務用コンピュータ整備率 120.6% (119.9%)
「普通教室の無線LAN整備率」は前年度より高くなっていますが、「教育用コンピュータ1台当たり児童生徒数」1人あたりのコンピューターの台数は5.4人にとどまっており、1人1台の環境になるには時間がかかることが予想されるでしょう。
学校側ITC不足の他にもシステムにくわしい先生がいないとなかなか動画作成、配信まではハードルが高いことでしょう。タブレット端末を貸し出しするとしてもメンテナンスやセキュリティの対応も必要です。また家庭でのWi-Fiなどの通信環境やパソコンやiPadなどのデバイスが整っていなくてはいけません。さらに通信料がかかるので月々のランニングコストもかかります。
【5月11日追記】
新型コロナウイルスの感染拡大に対応する緊急経済対策で文部科学省は小・中学生全員にパソコンやタブレット端末を1人1台配布する「GIGAスクール構想」を前出しすることを発表。600万台近くの端末が今年度内に一気に配られる見通しになりそうです。一刻も早く全国に住んでいている子どもたちが同様の教育を受けられるように願うばかりです。
各学校の取り込み
オンライン授業の導入が進んでいないとはいえ、現実に導入している学校も存在します。ここでは公立学校、私立学校での各学校のオンライン授業の取り組みを紹介したいと思います。
都立笹塚中学校
笹塚中学のある渋谷区では一人一台のタブレット端末の整備を3年前に完了済。ICT教育システムのモデル校になっています。毎日の時間割に沿って、それぞれの授業が始まる時間になると学校のホームページに課題がアップされる仕組みになっています。
https://www.fureai-cloud.jp/sasaduka/
都立白鴎高校・附属中学校
都立初の中高一貫校である都立白鴎高校・附属中学校。4月7日から1コマあたり45分のオンライン授業をスタートしています。学習アプリ「スタディサプリ」を活用して動画授業を配信し、先生が配信する授業はZoomを利用。生徒は規則正しく学習することができます。口コミをみると「先生が熱心で勉強がわかりやすい」「勉強する環境が整っている」と高評価です。
私立:学校法人 聖学院
4月13日よりオンライン授業をスタート。学習課題についてはGoogle クラスルームにて配信。生徒が家庭学習できるように先生たちが毎週 100 本、のべ 300本の授業動画を作成。先生たちのオンライン授業への熱い想いが学校のお知らせにて報告されています。海外大学進学に力をいれているこの学校は、先生たちの面倒見がよいのが画面から伝わってきます。
都立:日比谷高校
毎年東大に合格者を輩出、進学校である日比谷高校。そんな日比谷高校でも3,4月は紙ベースで課題を配布。しかし自学自習を継続するのみでは、学力形成が困難となることが予測されることから、5月7日以降は1コマ約30分以内のオンライン授業を開始。
http://www.hibiya-h.metro.tokyo.jp/
私立:東海大学付属高輪台高等学校
2年生は入学時に必要教材としてタブレット端末を購入済で3年生は学校からの貸し出しで対応。4月よりオンライン授業スタート。課題、質問や出席状況はClassiにて対応可能。体育や音楽、美術の授業も行っているようです。
https://www.takanawadai.tokai.ed.jp/
世界の子どもたちの学習は?
さまざまな国は日本同様に休校をしいられていて、世界188カ国15.7億人の学生や子どもたちが学校に通えてないといわれています。そのうち43%は自宅にインターネット環境がないという推計を国連が発表しました。世界の休校中の子どもたちはどう過ごしているのでしょう。
アメリカ
ほとんどの学校が休校中。オンライン授業が提供されていてオリエンテーション、プレゼンテーションも行える環境が整っています。アメリカは貧富の差が大きくパソコンをもっていない家庭には自治体からChromebook(クロームブック)が、ルーターが無償提供されています。
スイス
ロックダウン中なので学校も休校。学校から無償でiPadが貸し出しされているもよう。学校に行っているのと同じ時間割で授業が朝から行われているということです。
シンガポール
4月1日からオンライン授業スタート。シンガポールは学校ではなく教育省が中心となって作成した学習プログラムを小学生は毎日4時間、中学生は5時間、それ以上は6時間の授業を受講する必要があります、課題などはネットで送られてきます。
エジプト
エジプトでもオンライン授業は導入されています。エジプトでは国連の教育革命の改革によって2018年に韓国のサムスンからタブレットを大量購入。そのタブレットを中高生に無料で配布した経緯があります。その結果コロナウイルスによって休校しているオンライン授業に結びついています。裕福といえないエジプトは通信環境が整っている家庭が少なく授業を受けられない子どもも多いといわれています。
おわりに
9月より新学期スタートしたほうがいいのでは?と話題になっていますが、その前にオンライン授業を多くの子どもが受けられるように環境やデバイスを整えるほうが先ではないでしょうか。
今回のコロナが収束できたとしても再流行や別の感染症がでてくるかもしれません。またインフルエンザの学級閉鎖中にもオンライン授業ができれば子どもたちの学力も確保できるはずです。新型コロナによる休校をきっかけに国や自治体、教育機関は本腰いれてオンライン授業について考えてほしいものです。
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