学校の授業についていけない、勉強を教えてもらってもすぐに理解できなかったり内容を忘れたりする。勉強内容が定着しない…。こんな悩みを抱えている子どもは、もしかすると、ワーキングメモリーが低いために勉強が苦手になっているのかもしれません。ここでは、ワーキングメモリーの低さと勉強の関係についてお話します。
ワーキングメモリーが低い子どもの勉強面の特徴
ワーキングメモリーが低い子どもは、勉強面において何かしらの困難を抱えている場合が多く、勉強が苦手だと感じているケースも少なくありません。しかし、勉強が苦手だと一言で言っても
- 先生の言っている事がすぐに理解できない
- 国語の音読が苦手
- 集中力が続かない
など個人差があり、それぞれによってフォローの方法も異なります。
そこでまずは、ワーキングメモリーとは何なのか知ることからはじめましょう。
そもそもワーキングメモリーとは?
ワーキングメモリーとは、知能検査のひとつである「WISC検査(ウエクスラー検査)」の指標のひとつです。WISC検査とは、子どもの言語理解や記憶力など4つの指標とIQ(知能指数)を数値化するもので、得意な部分と苦手な部分を調べ、適切な支援を行うことを目的としています。
中でも、ワーキングメモリー指標とは「短期記憶」をつかさどるもので、文字通り、短期間に物事を記憶する力のことです。
ワーキングメモリーが低い子どもの特徴
ワーキングメモリーは
- 視覚刺激による短期記憶
- 無意味刺激による短期記憶
- 条件に基づいた短期記憶
- 集中力
に関する指標でもあります。そのため、ワーキングメモリーの低い子どもは記憶力が低いことに加えて、言われたことが理解しにくい(口頭での指示が苦手)、口頭でやり取りした内容を覚えられない。会話が嚙み合わない、集中力が持たないなどの特徴も持ちます。
ワーキングメモリーが低い=発達障害は誤り
ワーキングメモリーの低さと発達障害をつなげてしまう方もいるかもしれませんが、ワーキングメモリーの低さは障害ではなく、その子の特性だと捉えることができます。
確かに、発達障害を持っている子はワーキングメモリーが低い傾向にはあるのですが、ワーキングメモリーが低いからといって発達障害であるとは限りません。もし発達障害を心配している場合には、他の検査なども併用することをおすすめします。
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ワーキングメモリーが低い子どもは勉強ができないの?
ワーキングメモリーが低いと、授業で先生が話している内容を理解することに時間がかる、集中力がもたないということはあるのですが、だからといって勉強が出来ないというわけではありません。勉強はワーキングメモリーだけでなく、言語理解や長期記憶、処理能力など複合的な能力を必要とするものです。
ワーキングメモリーが低いのであれば、他の分野で補いながら勉強に取り組むこともできます。
人はそれぞれ得意なことと苦手なことがあるように、勉強ひとつとっても、苦手な勉強と得意な勉強があると考えることは、ごく自然なことですよね。
ワーキングメモリーが低い子どもが勉強時に困ること
ワーキングメモリーが低い子どもが勉強のどんな部分で困るのかは、ワーキングメモリー(短期記憶)の仕組みを理解すれば分かりやすいかと思います。
例えば、ワーキングメモリーとは、いろんな物を乗せておける「机」のようなものだとイメージしてみてください。
子どもは授業中に先生が話しているいろんな情報や知識を机の上に置き、自分が分かりやすいように並べ替え、必要なものだけを引き出しの中にしまって、不必要なものは処分することで勉強を進めてきます。そして、必要に応じて記憶の引き出しから知識や情報を取り出すのです。
ワーキングメモリーが高い子はデスクが大きいため、この一連の処理をスムーズに行えます。
しかし、ワーキングメモリーが低い子はデスクが小さいため、すぐに情報で溢れかえってしまい、並べ替えも整理も出来なくなってしまいます。そのため、先生が途中で言っていることがわからなくなったり、教えてもらったことを忘れてしまったりするのです。
トレーニングでワーキングメモリーは向上する
ワーキングメモリーが高い子どもは、勉強を理解しやすいことには間違いありません。しかし、ワーキングメモリーはトレーニング次第で向上することもあります。例えば、幼い頃から自分の苦手な部分を意識しつつ、得意なことを伸ばせる勉強方法を身に着けておけば、ワーキングメモリーが低くても勉強が得意になることが期待されているのです。
親や学校でのサポートしてあげることが大切
トレーニングが重要なことは分かっていても、幼い子どもが自分自身でワーキングメモリーのトレーニングをしたり、ワーキングメモリーの低さを補う勉強方法を会得したりすることは困難ですよね。そのため、周りの大人が子どもの特性を理解した上で、適切なサポートを行ってあげてください。
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福祉系大学で心理学を専攻。卒業後は、カウンセリングセンターにてメンタルヘルス対策講座の講師や個人カウンセリングに従事。その後、活躍の場を精神科病院やメンタルクリニックに移し、うつ病や統合失調症、発達障害などの患者さんやその家族に対するカウンセリングやソーシャルワーカーとして、彼らの心理的・社会的問題などの相談や支援に力を入れる。現在は、メンタルヘルス系の記事を主に執筆するライターとして活動中。《精神保健福祉士・社会福祉士》
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