日本は超少子化国。かたや、保育園に子どもを預けられない“待機児童”が社会問題になっています。子どもの数は減っているはずなのに、なぜ“保活落ち”する世帯が後を絶たないのでしょうか。今回は、待機児童が減らない要因について詳しくご説明します。待機児童問題に関して育児中のママができることは何か、一緒に考えていきましょう。
少子化なのに待機児童が深刻な日本
「少子化」という言葉を、ここ数年で何度耳にしたことでしょうか。「少子化が深刻」だというニュースがひっきりなしに聞こえてくるのに「なぜ?」と首をかしげてしまう現象があります。それは「待機児童問題」。子どもの数は減っているはずなのに、子どもの預け先が見つからない!一体日本はどうなっているのでしょうか?
日本は超少子化!?先進国の中で最低水準
内閣府が公開している統計によると、日本の合計特殊出生率は1.45です(2015年時点)。2005年に過去最低である1.26を記録してから、ここ10年で緩やかに上昇しています。
しかし、これで喜べない現状があります。人口学では出生率が1.5以上を「緩少子化」、1.5未満を「超少子化」と呼ぶそうです。フランスが1.92、アメリカが1.84をマークする傍ら、日本はいまだ1.5の壁を越えられていません。つまり、少子化がとてつもなく深刻だった時期からやや緩和しただけで、日本が超少子化状態であることには変わりないのです。
待機児童数は2万人強!増加中!
一方、多くのママたちを悩ませるのが待機児童問題です。厚生労働省の取りまとめによると、2017年4月時点の待機児童数は2万6081人で、前年より2528人アップしています。さらに、この数に含まれない「隠れ待機児童」の存在も指摘されています。育児休業を延長したケースや、他の保育サービスを利用しているケースが待機児童としてカウントされないことがあり、社会問題になっています。政府は集計方法を改正するなどして対策していますが、実態をつかみ切れていないのが現状のようです。
さらに「夫婦の出産意欲調査」では『「保活」がなければもう一人子どもを持ちたいか』という質問に対して全体の41・8%の人が「はい」と回答しています。待機児童問題と少子化問題は切っても切り切れない関係であることが分かります。
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待機児童が減らない三つの要因
育休中のママはもちろん、妊活を検討している段階でも「保育園が見つかるか」と心配する女性が多いようです。心置きなく子どもを産んで育てていくためにも、待機児童問題を改善してほしいものですね。しかし、そうはいってもこれだけ少子化が深刻なのに、なぜ待機児童問題が一向に解消しないのでしょうか。
待機児童の理由(1)保育園の数は減っている!?
保育所の定員数は2015年から2016年にかけて1万人以上増加しています。その前の年も同程度の増設がありました。しかし、増設の内訳を見るとおよそ半数は「特定地域型保育事業」、残りの半数が「幼稚園型・幼保連携型認定こども園」です。「保育所」の件数だけを見ると、2014年から2年連続で減少しています。
特定地域型保育事業とは小規模保育、家庭的保育、事業所内保育、居宅訪問型保育の総称です。定員枠が若干名であったり、一般住宅や会社の敷地内を利用したりと、いわゆる保育園のイメージとは大きく異なります。ニーズがうまく合えばメリットも多いものの、満2歳までという年齢の壁もあります。
幼稚園型認定こども園・幼保連携型認定こども園は、その名の通り幼稚園と保育園の機能を両方兼ねそろえています。(設置要件によって名称が異なりますが、幼稚園かつ保育所という点では共通しています。)こちらも環境など充実している施設が多いものの、「延長保育の時間が他園より短い」「行事や役員の仕事が多い」などの理由で、見送らざるをないママもいるようです。
待機児童の理由(2)保育士不足の問題
保育士不足も深刻な問題です。保育士1人あたりが同時に保育できる子どもの数には、基準が設けられています。つまり、人材の問題は子どもの定員数に直結します。
実は筆者も潜在保育士です。(潜在保育士とは有資格者であり、保育士として就労していない人を指します。)保育士として働くためのハードルは三つ。まずは国家資格に合格すること。次に勤務条件に適合するかどうか。自分にも小さな子どもがいる場合、預け先の問題があります。保育士であっても保育園に受かるかどうかは別問題なのです。
働き続けられるかという点もハードルです。子ども長時間預かる仕事とあって保育士は責任重大。ストレスから異業種に転職したり、出産を機に家庭に入ったりする保育士が少なくありません。
ただし大変な分、やりがいがあるという声も多いものです。保育士になりたい人が増え、心置きなく働けるよう環境が整えばいいのですが、一筋縄ではいかない問題です。
待機児童の理由(3)働く女性が増えている
ワーキングマザーの数が年々増えていることも、待機児童問題の要因です。労働政策研究・研修機構によると、2016年から2017年にかけて、共働きの家庭がおよそ60万世帯アップ。1980年代から右肩上がりです。妊娠・出産を機に退職する女性はいまも一定数いますが、より多くの女性が職場復帰を希望しています。また、家庭に入ることを選択したママの中には“保活落ち”が理由で退職した人もいるそうです。
ママになっても、あるいは、子どもができたからこそ「働きたい!」と思う女性がたくさんいます。にもかかわらず、保育の受け皿が足りていない現状…。小さな子どもがいるママでも当たり前のように働ける時代は、一体いつになったら訪れるのでしょうか。
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30代、保育士。夫と未就学児の長男・小学生の長女の4人家族。初めての出産で分娩トラブル、乳腺炎、産後クライシス、保活失敗など…数々の「洗礼」を受けた経験から『特別なことをするのではなく、地に足の着いた育児』をモットーに、日々奮闘しています。現在は認定こども園で働く傍ら、ライター業にも従事。
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