もし、あなたの子どもが万引をしたら、どう思いますか?「どうしてそんなことするの!?」と怒りますか?それとも、優しく諭しつつ「次はない」ことをささやきますか?
どちらも親が取りやすい行動ではありますが、ひょっとしたら子どもは自分や社会に絶望してしまうかもしれません。今回は、子どもが万引をしてしまった際の対処法について、ご紹介します。
子どもが万引を考えてしまう理由とは
子どもが万引を考える場合、どのような状況が考えられるでしょうか?理由はいくつかありますが、必ずしも経済的な理由によるものだけとは限らないと思われます。以下に、子ども自身が万引に対する善悪の判断がつくかどうか、万引に走る環境はどんなものかについて、お話していきます。
子どもには「万引=悪」という自覚はある
大前提として、万引という行為の善悪が理解できないという子どもは少数派です。特定非営利法人の全国万引犯罪防止機構が行った調査によると、小学生・中学生・高校生のいずれにおいても「万引は許されない」という認識を持っている子どもの割合が約90%を占めていました。少年犯罪に対する厳罰化の傾向が進んでいることもあり、少年少女のモラルが高くなってきていることがうかがえます。また、小学生の場合は「親を悲しませたくない」という意見も見られ、感情面でのブレーキがかかっていることも分かります。
万引をする理由は一つとは限らない
万引は「してはいけないこと」と認識している子どもが圧倒的多数ではありますが、やはり一定数が万引に手を染めてしまいます。その理由は一口には言えず、単純な理由から複雑な理由までさまざまです。主なものには、以下のような理由があります。
- 親に頼んでも買ってもらえなかったから
- 見つかるかどうかというスリルを楽しんでいる
- 親、学校、勉強に対するストレスから
中には、親自身も同様に万引の常習犯で、万引が犯罪であることを認識していない子どもも存在するようです。
自分の意思で行っていないこともある
万引の多くは自分自身の意思で行いますが、中には友だちにそそのかされたり、友だちと一緒に行っていたりするケースもあります。周囲に万引している友だちがいるような場合だと、仲間内で万引することが習慣化していて、そこで仲間外れにされてしまうことをおそれて万引をしてしまうケースも少なくないようです。このような場合、そういう人間と付き合わないことを教えなければ、いつまでもズルズルと関係が続いてしまいますから、場合によっては環境を変えることも検討する必要があります。
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万引が見つかった後の処遇はどうなるのか
もし、お店などで万引を見つけた場合、その後の処遇はどうなるのでしょうか?万引は犯罪であり、基本的には軽犯罪法ではなく、刑法の窃盗罪が適用されることになります。軽犯罪法は拘留・科料に処されますが、窃盗罪の場合は最大で10年以下の懲役の判決が下ることもあり、簡単に見過ごせない罪状となっているのです。
かつては店員の指導で終わっていたケースも
万引が、ある年代以上の大人たちに軽視されがちな理由の一つとして、貧しい時代背景から、かつて万引をしたことがある世代の存在が挙げられます。当然、許されることではありませんが、かつては生きるためにせざるをえなかった時代もあり、そのような事情もあって店員からきつく叱られるだけで終わっていた頃もあったようです。現代でも、親から虐待を受けていた子どもがコンビニでおにぎりを万引し、補導ではなく「保護」された事例もあるように、やむにやまれずやってしまったという子どもは、残念ながら一定数存在しているのです。
現代では逮捕されてしまうケースが多い
万引が犯罪である以上、現行犯逮捕されればその段階で警察に引き渡され、取り調べを受けることになります。14歳以上の子どもは、少年法に基づいた処分が下されることとなり、家庭裁判所にて少年審判が行われたのち、裁判官によって今後の処分が決定します。しかし、14歳未満の子どもの場合は、刑事責任能力がないものとみなされるため、逮捕ではなく児童相談所へと送致されることになります。年齢によって処遇が異なるため、小さい頃からきちんとモラルを身につけられるかどうかが重要と言えるでしょう。
逮捕後の子どもの処遇はどうなるのか
逮捕された子どもは、その後どのような処遇を受けるのでしょうか?犯罪の程度によって、以下のような処遇に分かれます。
不処分 | 子どもが十分反省しているなどの理由から、子どもに対して処分を行わない |
保護観察処分 | 子どもに保護司をつけて生活状況を観察させる |
少年院送致 | 社会における自力更生が難しいケース |
検察官送致 | そのほかの罪状も加わるような重大な事件 |
検察官送致になる場合というのは、例えば逃げ出そうとして店員に大けがを負わせたなどの場合が当てはまります。このような場合、大人同様の刑事罰が下ることもあります。
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福祉系大学で心理学を専攻。卒業後は、カウンセリングセンターにてメンタルヘルス対策講座の講師や個人カウンセリングに従事。その後、活躍の場を精神科病院やメンタルクリニックに移し、うつ病や統合失調症、発達障害などの患者さんやその家族に対するカウンセリングやソーシャルワーカーとして、彼らの心理的・社会的問題などの相談や支援に力を入れる。現在は、メンタルヘルス系の記事を主に執筆するライターとして活動中。《精神保健福祉士・社会福祉士》
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