ホームスクーリングの良さと問題点
ホームスクーリングには「子どもの主体性を引き出せる」という良さがある反面、義務教育以降の高校・大学入試で不利になるのではないかという懸念もあります。ホームスクーリングのメリット・デメリットについてそれぞれ見てみましょう。
ひとりの子どもの主体性を尊重できる
ホームスクーリングと学校で行う一斉授業とのいちばんの違いは、子ども自身が自分のペースで学習を進められる点です。ホームスクーリングに対して肯定的な保護者の場合、子どもが学校の授業ペースでは遅すぎて退屈してしまったり、もっと知りたくて教員に質問しようとしたら遮られたりといったことを経験しています。ホームスクーリングなら、子どもにとって最適な進度で学習が進められます。
また、学校では学習指導要領によって各学年で学習する内容が決められていますが、その枠を超えて学習することもできます。「株式市場の仕組み」や「世界の神話」など、子どもが興味を持てば学校の宿題などに邪魔されることなく、学べます。
子どもは「学びたいことを自分で学ぶ」という行動を繰り返すうちに、主体的に行動する姿勢を身に付けることができます。
親に負担がかかる負担が大きい
家庭を拠点に学習するということは、必然的に親の負担が重くなります。
まず、日本には就学義務があるため、子どもをどこかの小・中学校に在籍させなければなりません。そのうえで、親が学校と協議し、ホームスクーリングを認めてもらう必要があります。
また「子どもの主体性を尊重する」といっても、現実的には義務教育で習得する学習内容を踏まえて、学習を進める必要があります。そのためのおぜん立ては保護者が行うことになり、情報収集が不可欠になります。主体性を尊重しつつ、読み書きなどの基礎は保護者がカリキュラムを組んだり、学習目標として漢字検定や英検合格を掲げたりするなど、保護者は子どもを学校に通わせる以上に深く教育に関与しなければならない側面もあります。
義務教育の先を考えると…
アメリカでは、州によってはホームスクーリングを行う際には家庭に学習計画を提出させ、児童・生徒に対して学年ごとにテストを課すなど、ホームスクーリングを管理する仕組みがあります。日本でもこうしたシステムを整えると、ホームスクーリングに対するハードルも下がると考えられますが、「就学義務の建前」がある以上、実現にはまだまだ時間がかかるかもしれません。
さらに、考えなくてはならないのは義務教育の先のことです。高校受験や大学の推薦入試にあたって、ホームスクーリングで学んできた子どもは不利になる可能性があります。通信制高校や、通常のスタイルにとらわれない形式の大学入試など、今は進学・受験方法にも幅があるので、活路を見出すことは難しくないものの、「多くの人が進む進路」を選べない可能性を理解しておきましょう。
おわりに
文部科学省が定義する「不登校」の範疇にとどまらず、学校で行う集団教育が合わない子どもに対し、子どもに合った学習環境を用意しようと考えてホームスクーリングを始める保護者は一定数います。
ホームスクーリングには子どもの主体性を育めるメリットがある一方、保護者の負担は軽くはありません。興味がある方は、子どもの将来まで見通したうえで慎重に検討しましょう。
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企業取材や社史制作をメインに、子供の出産を機に教育や会計などの記事も手がけています。家族は小学生高学年の娘、夫。関心事は教育やライフプランのことなど。「これからの時代を生きるために必要な力って何?」をテーマに、日々考えています。
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