毎年12月に開催される「全国学校給食甲子園®」は、学校給食の献立を競う大会です。
4次にわたる書類審査を勝ち抜いた学校や給食センターが全国から集まり、限られた時間で調理を行います。献立の栄養的なバランスはもちろん、子どもたちへの食育や地場産物を使うことも審査のポイントになります。
全国学校給食甲子園®は2006年の第1回大会以来、2021年に16回目を迎えました。今回は大会の目的や審査基準、過去の優勝献立についてご紹介します。
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給食日本一を決める全国学校給食甲子園®
「全国学校給食甲子園®」は年に一度開催される、学校給食日本一を決める大会です。毎年、全国1,500~2,000件の学校・施設が大会に参加し、第1次~4次審査を経て12団体が決勝大会に進みます。
千数百校・施設から選ばれる12代表
これまでに、多い年で2,000を超える学校・給食センターの応募があり、2021年の応募数は1,355件です。以下の要領で4回の審査が行われ、決勝大会に進む代表校を決定しました。
第1次審査 | 全応募数から1割程度に絞り込み |
第2次審査 | 各都道府県から1校、合計47団体に絞り込み |
第3次審査 | 全国を6つのブロックに分割し、47団体からブロックごとに4校、計24団体に絞り込み |
第4次審査 | 24団体からブロックごとに2校、計12団体を絞り込み。全国大会に出場 |
調理中のさまざまな工程が審査される決勝
決勝大会では「調理コンテスト」が行われます。
手洗い方法から始まり、衛生管理やエプロンの使い分けまで、調理コンテストのさまざまな工程が審査の対象になります。コンテストに出場できるのは、栄養教諭または学校栄養職員と調理員の2名です。60分以内に6人分の給食作りと後片付けを行います。
コンテストでは、まず調理前に決められた方法で手を洗い、「調理開始」の号令とともに、12団体の代表メンバーがそれぞれ調理にとりかかります。
調理中も加熱した食材の温度をチェックしたり、手を洗うたびに消毒したりと、給食の調理で決められている衛生管理を行わなければなりません。また、洗い物をするとき、肉・魚・卵を扱うとき、調理をするときでエプロンを付け替えます。
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全国学校給食甲子園®の献立ルール
全国学校給食甲子園®に出す献立は「給食として実際に提供したものであること」が条件です。そのほかにも「学校給食摂取基準や学校給食衛生管理基準を満たしていること」「給食が食育につながること」など、学校給食ならではのルールがあります。主なルールを見てみましょう。
学校給食づくりに欠かせない2つの基準
学校給食の献立は「学校給食摂取基準」を踏まえて決められ、「学校給食衛生管理基準」を満たす施設で調理・衛生管理が行われます。大会にエントリーする献立も、この2つの基準を満たしていることが条件です。
学校給食摂取基準
児童・生徒が健康的に成長するために必要な栄養価を示したものです。たとえば、10~11歳の児童について、1食あたりの食事で摂取する栄養価の基準値は「エネルギー770kcal」「たんぱく質25g」「ナトリウム3g未満」「鉄4g」などとなっています。
学校給食衛生管理基準
学校給食を安全に提供するための調理・衛生管理について定めたものです。調理員の手洗いや原材料の温度管理、作業場の調理器具の扱い、調理時の加熱温度など、項目は多岐にわたります。また、調理員の健康管理や害虫駆除、作業工程などを記録に残すことも義務付けられています。
給食を通じて郷土や生産者に思いをはせる
子どもの健康や成長のことを考えてバランスのよい献立を考え、最新の注意を払って調理することに加え「郷土愛を育む献立」「地場産物を使い、特色を生かした献立」であることも条件となっています。
「地場産物」とは、具体的に学校(または給食センター)がある都道府県内で生産されたもの。ブランド野菜やブランド肉のような、その地域でのみ生産される「特産品」である必要はなく、地域で作られている農作物や畜産、海産物であればよいとのことです。
「自分たちが食べている食べ物は、身近なところで作られている」ということを知ることで、地域に愛着を持ち、生産者に感謝の念を抱くことにつながりそうですね。
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全国学校給食甲子園®の受賞校献立を紹介!
2021年12月4日に第16回大会が行われ、優勝をはじめとする各賞が決定しました。今年はコロナ禍の影響で、決勝での調理コンテストは行われず、書類審査によって賞が決められました。
ここでは、第16回大会の優勝校と準優勝校の献立を見てみましょう。どの給食も、地域の産物をふんだんに取り入れた献立になっています。
豊富な水産物や地場野菜を使った献立
優勝した茨城県ひたちなか市美乃浜学園の献立は、常陸沖で採れたちりめんじゃこやさくらだこ、県のブランド鶏肉や豚肉、生産量日本一のれんこんや全国シェア9割を誇る干しいもなどがふんだんに使われています。茨城県が農・水・畜産資源にいかに恵まれているか実感できる献立になっていて、郷土への愛着や地場産物への理解が深まります。
また、豚汁は塩分を調節するために味噌を減らし、豆乳ときな粉でまろやかな舌触りにしたり、あおさで香りを出したりするなどの工夫が凝らされています。
行事食や町の特産品を盛り込んだ献立
地場産の大豆にテンペ菌を混ぜて発酵させる「しろいしテンペ」は町の特産品で、地場産の米に混ぜ込んだ混ぜご飯に仕立ててあります。また「煮じゃあ」は九州の秋祭り「おくんち」に供される伝統的な煮物です。白石町特産のれんこんや赤貝を入れています。
ほかにも県北部の仮屋湾で養殖されたマダイや有名な有明産海苔、佐賀みかんなど、町や県の特産品が盛り込まれています。
おわりに
全国学校給食甲子園®は単なる料理コンテストではなく、栄養価に気を配り、郷土愛や地場食材への理解を深めるような献立を作るという給食の役割を評価するものです。
大会の公式サイトには、大会に入賞した学校・給食センターのさまざまな給食の献立が紹介されています。一度チェックしてみてはいかがでしょうか。
※本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。ご了承ください。
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企業取材や社史制作をメインに、子供の出産を機に教育や会計などの記事も手がけています。家族は小学生高学年の娘、夫。関心事は教育やライフプランのことなど。「これからの時代を生きるために必要な力って何?」をテーマに、日々考えています。
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