大人の虫歯も大変ですが、それよりも厄介なのは、子どものひどい虫歯です。子どもの虫歯がひどいにもかかわらず、親がそれを放置してしまうことも実際はありえるものですが、実は虐待の一種になるのです。ここでは、デンタルネグレクトはどういったものなのか、万が一の際の通告などについて、解説します。
デンタルネグレクトや口腔崩壊とは
子どもが虫歯になることは当然のことですが、ありえます。そして、子どもであっても虫歯になったら速やかに歯医者さんで治療を受けることが必要です。しかし、親が子どもの治療を適切に受けさせないことは、デンタルネグレクトにつながります。正しい治療をさせないことで、口腔崩壊という状況につながることもあるのです。
児童虐待の一種・デンタルネグレクトとは
デンタルネグレクトのことを一番簡単に説明するなら、子どもに必要な歯医者さんの治療を受けさせないことだと表現することができます。ネグレクトは育児放棄のことをいいますが、歯の治療に関して必要な、親としての義務を放棄することがデンタルネグレクトになるわけです。これは、立派な児童虐待の一種に含まれます。「歯医者さんに連れて行かないことが虐待なんて、大げさな!」と思うかもしれませんが、最近はデンタルネグレクトで、児童相談所に通告されるケースも増えてきているのが現状です。
口腔崩壊はどのような状態?
口腔崩壊とは、どのような状態をいうのでしょうか。例えば、小さな子どもなのに虫歯が10本以上ある、虫歯が進んでしまって歯が溶けてしまっているような状況が見られることをいいます。大人であれば、「自己責任」という言葉で片付けることができますが、小さい子どもの場合はそうはいきません。親が早い段階で子どもの虫歯を見つけ、歯医者さんに連れて行ってあげることが必要です。
口腔崩壊が続くとどうなる?悪影響は?
口腔崩壊の状況が続くと、将来に大きく影響する恐れがあります。例えば、口腔崩壊した子どもの歯は、何年かすれば永久歯に生え変わることが考えられますが、歯の根っこの部分まで虫歯が進行してしまうと、永久歯の生え変わりにも影響が出てくる場合もあります。また、歯の根っこまで虫歯菌が入り込んでしまうと、そこから血液にまで悪い菌が入り込み、大きな病気をすることも考えられるのです。
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デンタルネグレクトの原因
ひどい虫歯を放置してしまう、デンタルネグレクトと呼ばれる状況に陥る原因にはどのようなものがあるのでしょうか?児童虐待の一種といわれるほどですから、親がしっかりと子どもの歯の状況を見てあげることが本来は求められます。しかし、親の見守りがうまくいっていないことで、デンタルネグレクトが起きるのです。
乳歯や虫歯の正しい知識が浸透していない
小さい子どもの歯は乳歯と呼ばれる歯で、いつしか歯が抜けて永久歯に生え変わります。実は、この乳歯の時には虫歯になっても大丈夫だという間違った保護者の知識が、浸透してしまっています。これが元で、「乳歯の虫歯は永久歯に生え変わるから、大丈夫だろう」と放置してしまうことがあります。しかし、これではいけません。乳歯の時になった虫歯は、永久歯に生え変わる時にも悪影響を及ぼすことが十分に考えられますし、その後のかみ合わせなどにも大きく影響するケースがあります。
子どもが嫌がって歯科から遠のいている
子どもが嫌がっているため、なかなか歯医者さんに連れて行けないというケースもあるのではないでしょうか?絶対に歯医者さんに連れて行った方がいいと思いつつ、子どもが強く嫌がって大泣きしながら抵抗すると、かわいそうになってしまい、親も歯医者さんから足が遠のいてしまうというケースがあります。しかし、虫歯の治療は早いに越したことはありません。放置してしまうとそれだけ将来に影響するような、大きな問題を抱えてしまうこともあるでしょう。
深刻な児童虐待の可能性もある
中には、深刻な児童虐待により、あえて虫歯の子どもを歯医者さんに連れて行かないというケースもあります。これが一番、言葉的な意味で、デンタルネグレクトに近いといってよいでしょう。これは悪意のあるケースになるので、児童相談所に通告される可能性が十分にある案件です。学校の定期検診などで、デンタルネグレクトが発覚することもありますので、場合によっては大きな問題になってしまいます。
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福祉系大学で心理学を専攻。卒業後は、カウンセリングセンターにてメンタルヘルス対策講座の講師や個人カウンセリングに従事。その後、活躍の場を精神科病院やメンタルクリニックに移し、うつ病や統合失調症、発達障害などの患者さんやその家族に対するカウンセリングやソーシャルワーカーとして、彼らの心理的・社会的問題などの相談や支援に力を入れる。現在は、メンタルヘルス系の記事を主に執筆するライターとして活動中。《精神保健福祉士・社会福祉士》
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