日本は自殺者が多い国と言われることがあります。また、今までは中高年の男性の自殺が中心だと感じていた方もいたことでしょう。しかし2020年の夏以降から、学生が自殺をしてしまう児童自殺が増えているという現実があります。なぜ今、児童自殺が起こっているのでしょうか?ここでは児童自殺の現状や原因、親としてできる対処法などについて解説します。
現在の児童自殺数は一体どのぐらい?
児童自殺にフォーカスが当たっている現在ですが、実際に何人ぐらいの児童が自殺を図っているのでしょうか?以下に高校生までの子どもの自殺についてご紹介します。
令和2年度:児童の自殺者数の割合について
厚生労働省と警察庁の調査によると令和2年の11月までに児童自殺をした子どもたちは、429人というデータが出ています。平成28年の1年間では289人だったのに対して、1.5倍程度も増えているのです。この現実に驚きを隠せない方もいることでしょう。また、この調査の児童という枠組みには、小学生と中学生、高校生までが含まれています。
令和2年8月の児童自殺者数が急増
児童自殺は、月別にその割合について変化することが分かっています。令和2年度の8月には、62人もの子どもが自殺をしているのです。平成28年と比べると3倍程度、昨年の令和元年と比べても、2倍程度増えていることが示されています。もともと8月は自殺者数が多い傾向にはなっていますが、30人程度でした。60人以上に急増しているということは、何かしらの影響が存在すると予測できます。
性別による自殺者数の違いに変化も
児童自殺の数は、男子と女子による性差もありました。令和元年度では小学生と中学生、高校生の男子の方に高い割合が示されています。(小学生の場合は、男女同数)しかし、令和2年になると、小学生では女子の方の自殺割合が高くなったのです。また中学生と高校生では男子の割合が多いものの、男子中学生67人に対し、女子中学生は51人。男子高校生の175人に対し124人の女子高校生が自殺をしている事実があり、女子の数が目立ち始めています。
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児童自殺はなぜ起きる?考えられる原因とは
児童自殺はとてもショッキングな出来事です。ただ、子どもたちが自殺に至るには、それなりの原因が背景に潜んでいると言われています。考えられる児童自殺の主な原因をお伝えします。
子どもの学業不振という原因が多い
児童自殺の原因で大きな割合を占めるのが、学業不振によるものです。学校の勉強について行けなかったり、頑張ってきたけれど限界を感じて、追いつめられる子どもの多いことがうかがえます。また、夏休みなどの長期休業明けの授業になじめず、苦しむケースもあるでしょう。コロナ禍によるこの1年間は学校の休校や登校制限の影響があり、学校が再開しても授業に追いつくのが難しいという理由も考えられます。
進路に関する悩みもめずらしくない
学校を卒業したら、子どもたちは進学や就職など、自分の進路を決めなければなりません。ただ、自分の進学したい学校に合格する自信がない、就職先が決まらないなどという出来事も起こり得ます。そういうときに自分が選ぶべき道は何なのかについて、子どもたちは葛藤しがちです。これが深刻になると、自殺と言う最悪な結果につながってしまうことも少なくありません。またコロナウイルスが猛威を振う中で、保護者の失業などで収入が減り、進学できず、失望する子どもが増えたことにも原因があるでしょう。
親子の関係が上手く行っていない
子どもにとって、親は絶対的と言っても良い存在です。特に経済的にも社会的にも自立することが難しい高校卒業までは、親の考えに従わざるを得ない状況下になることでしょう。親子関係が良好であれば、あまり気に留めることもないかもしれませんが、親子の仲が悪いと、子どもは家庭という密室の中で常に息苦しさを感じていなければなりません。そのような状況から解放されたくて、自殺に至るケースもあります。さらにコロナ禍によって親が在宅勤務になったせいで、子どもにストレスをぶつけやすい雰囲気になったことも、自殺と因果関係があると考えられます。
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福祉系大学で心理学を専攻。卒業後は、カウンセリングセンターにてメンタルヘルス対策講座の講師や個人カウンセリングに従事。その後、活躍の場を精神科病院やメンタルクリニックに移し、うつ病や統合失調症、発達障害などの患者さんやその家族に対するカウンセリングやソーシャルワーカーとして、彼らの心理的・社会的問題などの相談や支援に力を入れる。現在は、メンタルヘルス系の記事を主に執筆するライターとして活動中。《精神保健福祉士・社会福祉士》
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