一般的に、出産は喜ばしい出来事だと思っている人も多いことでしょう。しかし、さまざまな理由で子どもを産んだことを知られたくないために、内密出産を選ばざるを得ない女性もいます。内密出産は、近年に熊本県の病院で行われたことが話題になりましたが、国の法律的ではどのように解釈されるのでしょうか?ここでは、内密出産とはどういうものかについて詳しくお伝えします。
内密出産とはどういうものかを知っておこう
熊本県の慈恵病院が公に発表した影響で、耳にすることが多くなった内密出産。今までは聞きなれない言葉のひとつだったかもしれません。内密出産とは、事前に病院が決めた人だけに母親が自身の情報提供をし、母親の欄を空白にした出生届を出すことを言います。
ただし、子どもが成長したときに母親のことを知りたいと希望した場合は、その情報を伝えるという条件も付いています。
日本においてはまだ法律が整っていない
日本で正式に内密出産が行われたのは、今回の慈恵病院の例が初めてです。そのため、国の制度としての内密出産は未だ不完全なままだと言えます。
国として内密出産を認めるには、明確な法律を整えたうえで、内密出産を希望する女性やそれをサポートする病院などのガイドラインの作成も必要になります。
慈恵病院に対しての公的機関の反応は?
慈恵病院は、内密出産を受け入れてほしい旨を市と国に伝えています。しかし、熊本市は出生届の母親の欄を空欄にしたままの受理が可能であるのか、遺児ではないとどう証明するのかに対しての疑問を呈しています。
一方、国側は必ずしも違法だとは言えないと述べています。ただ、希望する女性の相談を受けるなどして、内密出産を避けるようにすることや病院側がそのまま受け入れる場合でも、自治体と連携しながら子どもを守ることを検討してほしいと応えるにとどめているのです。
他国の内密出産の現状について
日本だけではなく、他国の内密出産についても見てみましょう。例えば、アメリカでは1999年に乳児避難所法が制定され、内密出産が認められるようになりました。この法律によって、母親は出産後に赤ちゃんを匿名で乳児避難所に引き渡し、養育者が見つかるまで安全な場所で保護してもらうことが可能となっています。これにより、赤ちゃんを他者に引き渡すことで生命を救い、里親家庭が早期に養子縁組ができるようなシステムにしています。
一方、イギリスでは日本と同様に国家で統一されたガイドラインはなく、内密出産に対する法律もありません。しかし、地方自治体や病院においてそのガイドラインが整備されており、内容はほぼ両者で共通となっています。
一般的には、数日間病院が赤ちゃんを預かり必要な治療をしたうえで、地域の里親によって養子となる傾向が多いようです。
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福祉系大学で心理学を専攻。卒業後は、カウンセリングセンターにてメンタルヘルス対策講座の講師や個人カウンセリングに従事。その後、活躍の場を精神科病院やメンタルクリニックに移し、うつ病や統合失調症、発達障害などの患者さんやその家族に対するカウンセリングやソーシャルワーカーとして、彼らの心理的・社会的問題などの相談や支援に力を入れる。現在は、メンタルヘルス系の記事を主に執筆するライターとして活動中。《精神保健福祉士・社会福祉士》
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