映画や物語の中では、おおかみ男が満月の夜に変身したりしますね。満月の夜には犯罪が増える、などといった都市伝説もまことしやかにささやかれています。これには、月明かりで空き巣がしやすいという現実的な理由づけもあるようですが、古来より、神秘的な月の光は人間のさまざまな想像をかき立ててきました。「満月に出産が多い」「満潮時に出産が増える」という出産にまつわる言い伝えもそのひとつです。
満月に出産が多いといわれている根拠
満月に出産が多いといわれている根拠は、いくつかあります。カニやサンゴなど、海の生物が満月に合わせて産卵する、といった情報も、こうした言い伝えの根拠になっているようですが、学術的な調査から、生物の産卵は水温や地形などさまざまな影響を受けていることがわかってきています。
助産院などの体験談が多数ある
よくいわれるのが、助産院など、実際に出産を扱う医療機関での体験談です。あくまで体験談であるというところがポイントで、確実な統計結果は見当たりません。少なくとも、論文にできるほどのデータは現在公開されていないようです。しかし、現場の助産師さんの中には、カレンダーなどに記録をつけていて、「やはり満月や満潮時に出産が多かった」という方もいます。病院で子どもを産むのが当たり前になった現代では、計画的な出産も増え、すべてが自然分娩というわけにはいきません。安全なお産を目指していく中で、満月に出産が多いかどうかというデータはますますとりづらくなっていくのかもしれませんね。
月の満ち欠けと月経周期の関係
女性の身体の周期が、月の満ち欠けと関係しているという点は、よく指摘されているところです。女性の生理周期は、おおよそ28日周期が標準とされています。24~30日と幅はありますが、約1カ月ですね。そして月の満ち欠けは、国立天文台の調査によれば、およそ29・53日が平均といわれています。とはいえ、似ているのは周期の数字のみ。同じ地域の女性が月の満ち欠けにあわせて一斉に生理になるわけではありません。満月と出産の相関性を裏付ける根拠としては信ぴょう性に欠けますね。
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東京大学が「満月には出産が多い」を調査した結果は?
そうはいっても、世の中にはまだまだ科学で説明できないことはたくさんあります。かつては不思議に思われていた現象も、科学が進んだ世の中で謎が解明されるということがあるわけですから、今現在証明できないことが必ずしも間違いだというわけではありません。2016年に東京大学大学院で研究発表された「牛の出産に関する研究」についてご紹介しましょう。
東大論文発表「牛の出産は満月に多い」
2016年に、東京大学大学院農学生命科学研究科研究の米澤智洋准教授が、大学院生ともにデータを集め、研究発表したものです。教授が耳にした「満月の日は出産が増える」という言い伝えは各国で議論されていたのですが、正しい見解は出ていなかったのだそうです。なぜなら、社会的影響を受けやすい人間の出産は、多くのデータを集めて解析することが難しいからです。そのため、教授は環境をコントロールしやすい牛の出産でデータをとることにしました。3年にわたり、のべ428頭の牛の出産を調査した結果、「満月の前から満月にかけての3日間、牛の出産数が増加する」という事実が明らかになりました。
出産は月の光と関係がある?
統計学的には、満月の頃に牛の出産が多くなることは明らかになりましたが、その原因ははっきりしていません。人間の場合にいわれていた、月の満ち欠け、潮の満ち引きに関係があるかもしれないという仮説は存在しますが、月が与える地球の重力変動は、全体の30万分の1にすぎません。人間の質量は地球に対して非常に小さいものであり、母なる海に例えられる羊水にしてみても海全体の質量に比べれば微々たるものです。こうしたものに月の重力が影響を与える可能性が大きいとは考えにくいということです。米澤教授は、重力よりも月光によるメラトニンの増加が出産数と関係があるのではないかという仮説を立てています。
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子どもたちも大学生になり、自分の子育てはひと段落。保育士として、地域のコーディネーターとして、子育て支援・子ども支援にかかわっています。ゆる~く子育て楽しみましょう!
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