現在、中学や高校などで「プロジェクト型学習」がとても注目されています。まだ聞き慣れていない方も多い学習方法ですが、この先子どもの考え方や行動力を養うために必要だと考えられているのです。今回は、多くの教育機関で採用されている、プロジェクト型学習について解説します。
プロジェクト型学習とは一体何か?
プロジェクト型学習は、最近多くの教育機関で採用されていますが、実際どんな学習方法なのかについてよく理解している人は、まだまだ少ないでしょう。プロジェクト型学習を簡単にいうと、プロジェクト・目標の達成のために取り組んでいく学習方法のことを意味しています。
プロジェクト型学習の目的について
そもそも、一般的な学習方法では、英語や国語、数学など科目ごとに勉強をしていくことでした。しかし、プロジェクト型学習では、まず目標を設定し、その目標を達成するためにはどうするべきなのかを考えながら、学習を進めていきます。個人またはチームのどちらかで、今自分たちはどのような問題・課題を抱えているのか、その問題・課題はなぜ発生していて解決にはどうするべきかを考えるのです。そこから、解決策を試してみて、正解だったらどうなるかをさらに検証し、次の学習に向けての参考にします。
今まで学んできた学習方法とはまるで違うため、最初は戸惑うことも多いですが、慣れてくると自分に合った勉強を見つけられるようになるとされています。
プロジェクト型学習で得られるもの
プロジェクト型学習で得られることは、「学ぶことへの主体性」です。学校に行き、勉強をすることは義務でもありますが、自分のためでもあります。しかし、常に科目ごとに教師がやってきてその日分の勉強をするというのは受動的であり、実際に学びとして記憶に残りにくい方法です。
一方、プロジェクト型学習の場合は、自分たちそれぞれが問題点を見つけ、解決策を検討していくので、しっかりと学ぶことができます。その結果、自分の問題を解決することで自信がつき、勉強への意欲と問題解決能力、実行力を養うことが可能です。
プロジェクト型学習には2つの種類がある
プロジェクト型学習は、2つの方法があり、どちらを採用するかは教育機関によって違いがあります。
まず、1つ目は「実践体験型」と呼ばれる方法で、民間の企業や住んでいる自治体などと協力連携をしながら学習を行う方法です。しかし、この方法は、他機関との連携が重要になるので、スケジュール調整が難しい場合は延期・中止になる可能性があり、なかなかハードルの高い方法です。
2つ目は「チュートリアル型」と呼ばれる方法で、一般的に教育機関ではこの方法を採用しています。クラスで少人数のグループを作り、それぞれ提示された事例を元にして、グループワークやディスカッションを行っていくのです。日本の教育では、なかなかディスカッションして勉強をするという方法が普及していないので戸惑うこともありますが、段々と慣れていくでしょう。チュートリアル型は、場所や準備の手間なども少ないため、気軽にスタートできることがメリットです。
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プロジェクト型学習の特徴について
プロジェクト型学習は、ただ目標を決めて、延々と学習を進めていくというわけではありません。プロジェクト型学習の特徴は、いろいろとあります。その特徴を知ることで、ほかの学習方法との違いもよく理解できますよ。
きちんと期限が決まっているのでメリハリがある
目標を設定し、解決策を検証していく方法なので、無期限で勉強ができると思う人も多いですが、そういうわけではありません。全ての物事には期限があるように、プロジェクト型学習についても期限は決められています。問題・課題を見つけた後は、目標達成はいつまでにしてくださいという決まりがあるのです。そのため、きちんと解決までにかかる時間を逆算してスケジュールを組み立て、行動する必要が出てきます。
一般的な学習の場合にはこうした期限はないため、ダラダラとしてしまいがちですが、プロジェクト型学習は期限を意識しながら行動計画をする習慣づけをする点が非常に特徴的だといえます。
問題解決は成果を生み出すことと同じ
通常、なかなか勉強に対して目的意識を持つことはできませんが、プロジェクト型学習の場合は、しっかりと最初の段階で「〇〇の解決に効果があるのはどの方法なのか」といった目標を抱いて行動します。そのため、目的意識を持って行動し、結果を出すことは「自分が行ったことに対して成果を生み出せた」と理解し、次へ生かすことができるのです。つまり、勉強をすることは自分のためであり、目標を達成することは成果を生み出すゴールに辿り着くのだと考え、多くのことを学ぶことができます。
個人よりもチームで取り組むことが多い
プロジェクト型学習は、個人で取り組むこともありますが、ほとんどの場合はチームで取り組むグループワークが基本です。個人で取り組むと非常に大変な作業になってくるので、プロジェクト型学習はチームを組み、それぞれがアイディアや計画への意見を話し合い、決めていきます。複数人で取り組むことによって、いろんな角度から物事を見ることができ、「そんな発想もあったのか!」と視野を広げることが可能です。
勉強は、基本原則は決まっていますが、応用ともなれば自分の発想力が必要となります。1人では限界があったとしても、複数人で行えば解決に近づきやすいという考えのもと、プロジェクト型学習の多くは、少人数のチームを作って取り組みます。
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福祉系大学で心理学を専攻。卒業後は、カウンセリングセンターにてメンタルヘルス対策講座の講師や個人カウンセリングに従事。その後、活躍の場を精神科病院やメンタルクリニックに移し、うつ病や統合失調症、発達障害などの患者さんやその家族に対するカウンセリングやソーシャルワーカーとして、彼らの心理的・社会的問題などの相談や支援に力を入れる。現在は、メンタルヘルス系の記事を主に執筆するライターとして活動中。《精神保健福祉士・社会福祉士》
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