小学生や中学生の子どもがいる保護者は、PTAという言葉を耳にすることは多いと思います。子どもの健全な教育環境を整えるために活動しているPTAですが、それを全国的にまとめている「日本PTA全国協議会」という組織があるのをご存じでしょうか?
今回は、日本PTA全国協議会について詳しく解説します。
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日本PTA全国協議会の基本情報について
それでは、日本PTA全国協議会の基本情報から解説していきましょう。日本PTA全国協議会はどのような組織なのか、実際に行っている事業の詳細をお伝えします。
日本PTA全国協議会とは?
日本PTA全国協議会とは、教育を軸として特定の宗教や政党に偏ることなく、小学校及び中学校におけるPTA活動を通して、日本における社会教育及び社会教育及び家庭教育の充実に努めるとともに、家庭・学校・地域の連携を深めて、子ども達の健全育成と福祉の増進を図り、社会の発展に寄与するものという定義がなされています。
設立は昭和21年10月、事務局は東京都港区赤坂7丁目5-38となっています。
日本PTA全国協議会の事業概要について
日本PTA全国協議会は、教育を軸とした民間団体として、目的を同じくする他の団体及び機関の活動に協力する事を基本方針として事業を行っています。
主な事業概要は、以下のとおりです。
- 社会教育・家庭教育及びPTA活動の資質向上に資する研究大会などの開催及び調査研究
- 青少年の健全育成及び福祉増進に資する情報資料などの提供や広報活動
- 青少年の国内交流及び国際交流
- 機関紙並びに社会教育・家庭教育及びPTA活動に関する図書・資料の刊行
- この法人の目的に沿い顕著な業績を上げたPRAその他の団体及び個人の顕彰
- 教育関係の支援を必要とする子ども達のための助成
- その他、この法人の目的を達成するために必要な事業
各地で連合組織が作られて全国組織へ
日本PTA全国協議会は、いわばPTAの上部団体と言えます。そのため、まずはそれぞれの各地の学校でPTAが作られ、それが「市」単位で集まり「県」で(都・道・府P連)として組織が作られます。
そしてさらに、都道府県のP連が集まって「公益社団法人 日本PTA全国協議会」が構成されているのです。
このように、日本PTA全国協議会は、各地の学校単位でのPTAから始まり、都道府県単位で連合組織が作られ、全国組織へと発展させているのです。
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日本PTA全国協議会の実態の問題点
次に、日本PTA全国協議会の実態や問題点について見ていきたいと思います。実は、日本PTA全国協議会に対しては、現在各地のPTAから不満の声などが上がっているという状況があるのです。
会費負担の不透明さへの不信感
日本PTA全国協議会の運営費は、加盟校のPTAが「分担金」として供出したもので賄われています。そのため、一般保護者から集めたPTA会費で運営が成り立っていると言えるのです。
多くの場合は、各PTAで毎年子ども1人または1世帯当たり「数十~350円程度」の金額が納められており、市や区のPTA連合組織に納められています。
ここから、上層部へと分担金が納められていくのですが、市や区、都道府県のPTA連合組織の負担金は設定がまちまちとなっていて、不透明さがぬぐえない部分があります。
会員や現場の声が反映されていない
全国協議会の基本方針としては、教育に力を入れ健全な青少年育成が中心となっていますが、実際には現場の問題点には反映されていないケースも多いと言われています。
日本PTA全国協議会は、国との結びつきが強いという問題点もあり、これによって現場の問題点よりも国にとって都合の良い活動内容になってしまっている側面があるのです。
国が掲げる「楽しい子育て」という方針も、各家庭からは「ワンオペ育児」や「母子世帯への支援」などにもっと力を入れてほしいという要望が出ています。
実際に必要な支援とは程遠い事業内容
先ほどの現場の声が届いていないというケースもそうですが、実際に日本PTA全国協議会が掲げている事業概要とは、異なる方向性の活動も指摘されています。
現場の声というよりも、国との結びつきによって、国にとって都合の良い活動内容になっているのではないか?という指摘が出てきているのです。
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日本PTA全国協議会からの脱退が増えている背景
日本PTA全国協議会は、全国組織として活動しています。しかし、事業内容に疑問を抱いた各地のPTAから、脱退への動きが徐々に出てきているのです。
東京都小学校PTA協議会が全国組織から脱退
日本PTA全国協議会からの退会の先駆けとなったのが、東京都小学校PTA協議会です。
東京都小学校PTA協議会は、2022年6月18日に2022年度定時総会を開き、日本PTA全国協議会からの退会に向けた協議が賛成多数で可決されました。
活動内容の方向性に疑問があり、支出している会費に関しても都内小学校のPTAに還元されているとは考えにくいとの結論によって、日本PTA全国協議会からの退会へ動き始めているのです。この動きは全国初で、今後その動きは広がりを見せる可能性があります。
国と全国組織の結びつきに異を唱える動きが増加
日本PTA全国協議会の国との強い結びつきに関しては、問題点でも挙げたように一般保護者からも疑問の声が挙がっています。
本来、日本PTA全国協議会の役割としては、各都道府県の小学校及び中学校での問題解決に向けて、教育が軸となった活動が中心であるべきですが、時代の流れと共にその活動内容が変化しつつあり、国との結びつきの方へ力を入れている現状に異を唱える動きが増加しているのです。
現状の問題点にこそ目を向けるべき
PTAの役割は、全国単位では見逃しがちな教育現場の問題点を共有し、その解決に向けて会費などを有効活用して取り組むことが重要です。
しかし、現在の日本PTA全国協議会の活動内容は、そこからズレしまっている現状があり、現場からはもっと現状の問題点にこそ目を向けるべきとの声が相次いでいます。
このような声が届かない限り、日本PTA全国協議会から退会する動きはさらに増加していく事になると懸念されています。
おわりに
小学生や中学生の保護者でPTAを知らない人はいないと思いますが、実際の現場で感じているPTAの活動内容と、全国協議会の活動方針にはややズレが生じている印象があります。今後、退会する各地のPTAが増えないよう、現場の声にもっと目を向けてほしいと願いたいものです。
※本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。ご了承ください。
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福祉系大学で心理学を専攻。卒業後は、カウンセリングセンターにてメンタルヘルス対策講座の講師や個人カウンセリングに従事。その後、活躍の場を精神科病院やメンタルクリニックに移し、うつ病や統合失調症、発達障害などの患者さんやその家族に対するカウンセリングやソーシャルワーカーとして、彼らの心理的・社会的問題などの相談や支援に力を入れる。現在は、メンタルヘルス系の記事を主に執筆するライターとして活動中。《精神保健福祉士・社会福祉士》
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