学力の高い友達と一緒に過ごすことが与える影響を、ピア効果と呼びます。学力の高い人に囲まれれば当然学力が上がるだろうと思われますが、実は最近、反対に学力が下がってしまったというデータも出ています。今回は、そんなピア効果について正の効果と負の効果のどちらにも焦点を当てて調べてみました。子どもの学力を高めたい方は、ぜひご覧ください。
学力の高い友人といると正の効果が出る?
まずは、学力が高い人と一緒にいることで正のピア効果が出るパターンについて検証していきましょう。これは、長い間正の効果があると考えられてきました。一般的には、こちらが正しいと考えている人が多いので、納得できる内容だと思います。
昔はピア効果で良い影響があるとされていた
1990年代までは、自分よりも学力が高い友人と一緒にいることで学力が上がることを示す研究データが主流だったため、正のピア効果があることが信じられていました。そのため、子どもに頭が良くなってもらいたいと考えている親たちは、子どもを少しでも良い環境に置くために受験で良い学校を目指したり、頭の良い子が通う塾に入れたりしようとしていました。今もその流れは続いていると言えます。
頭の良い友人と同じ意識を持つことができる
学力が高い友人と一緒にいると、勉強に対する彼らの意識を直接感じることができたり、勉強について良い情報が得られたりしますから、プラスのピア効果があるのもうなずけます。常に頭の良い人たちと一緒にいることで自然と学習習慣がついたり、勉強に対するモチベーションが高くなったりするので、無理なく学力を上げられるというメリットがあります。
今でも正のピア効果を信じている人が多い
後からも触れますが、最近は必ずしもピア効果はプラスとは限らないという流れになっています。しかし、今の親世代は正のピア効果が当たり前だった時代を過ごしているので、今でも学力の高い友人と一緒にいると良い影響があると信じている人が多いのです。そのため、良い高校や大学に行かせようという動きがいまだにあり、塾に通う子どももたくさんいるのが現状でもあります。
合わせて読みたい
学力の高い友人といると負の効果がある?
かつては正のピア効果が信じられていましたが、最近の研究では必ずしもプラスには働かないということが分かっています。次に、負のピア効果についてまとめていきます。正の効果を信じていた人にとっては、信じ難いかもしれませんね。
最近では負のピア効果があると判明している
2015年から埼玉県が実施している「埼玉県学力・学習状況調査」のデータを用いた「負のピア効果―クラスメートの学力が高くなると生徒の学力は下がるのか?―」という研究では、クラスメートの成績が高いクラスだと、本人の成績は下がるという負のピア効果があることが報告されています。つまり、長い間信じられていた正のピア効果が、必ずしも正しいと言えなくなってしまっているのです。これから他の負のピア効果に関する研究結果が出れば、ピア効果の内容がガラリと変わってしまう可能性もあります。
自分はできないと思うことで成績が下がる
学力が高い友人と一緒にいると、勉強に対して意識が高くなるという効果は確かにあるでしょう。しかし、子どもによっては周りに自分より頭がいい人がいることによって、自分は勉強ができないんだと劣等感や諦めを感じてしまい、勉強へのモチベーションが下がり、やがて成績の低下を招くという面もあります。成績が良い友人に囲まれることはメリットもあり、デメリットもあることが分かりますね。
子どもに劣等感を抱かせないことが大切
マイナスのピア効果が出る子どもの場合は、成績が良いクラスになってしまったときは、周りを見て劣等感を抱かないようにサポートしてあげることが大切です。「自分は自分だから周りは気にしなくて良い」「自分の成績を上げることに集中しよう」などと、うまく親が声をかけてあげる必要があるでしょう。また、教師も他の生徒と比べて評価したりすることがないように配慮する必要もありそうです。
合わせて読みたい
福祉系大学で心理学を専攻。卒業後は、カウンセリングセンターにてメンタルヘルス対策講座の講師や個人カウンセリングに従事。その後、活躍の場を精神科病院やメンタルクリニックに移し、うつ病や統合失調症、発達障害などの患者さんやその家族に対するカウンセリングやソーシャルワーカーとして、彼らの心理的・社会的問題などの相談や支援に力を入れる。現在は、メンタルヘルス系の記事を主に執筆するライターとして活動中。《精神保健福祉士・社会福祉士》
この記事に不適切な内容が含まれている場合はこちらからご連絡ください。