韓国の受験戦争に勝つには
学生生活記録簿の実態から、親のステイタスが子どもに反映する様子が透けて見えます。さらに、学生生活記録簿の内容は子どもが在籍する高校によっても差があり、熱心に記録してくれる学校と、そうでない学校が存在するといわれています。
なぜそのようなことが起こるのか理解するには、韓国の高校について知る必要があります。
進路に合わせて5種類の高校に大別される
韓国の学制は日本と同じ6・3・3・4制で、義務教育は9年です。義務教育を終えるとほとんどの生徒は高校に進学しますが、韓国の高校は「ほぼ入試がない」といっても過言ではありません。中学時代の成績によって、「一般高校」という高校に振り分けられます。韓国の中学生のほとんどは一般高校に進学します。
一般高校のほかに、韓国には下記のような高校があります。
- 特殊目的高校(特目高)…国際高校や外国語高校、体育高校など、特定の分野を伸ばすことを目的とする高校。
- 自律型私立高校(自私高)…独自の理念・カリキュラムで教育を行う私立高校。
- 特性化高校…会計やIT系、電気など専門技術を習得するための高校。
- 英才学校…エリート教育を行う特別な高校。大学への編入ができる。
英才学校は選ばれた子どもにエリート教育を施す特殊な高校なので別として、難関大学を目指す生徒は特目高や自私高を目指します。一般高校とは違い、特目高の国際高校・外国語高校・科学高校と自私高は、筆記試験が課されます。
特目高や自私高は一般高校に比べて、学生生活記録簿の対策をしっかりしてくれる傾向にあります。実際、SKYの合格者を多く輩出しているのは、自律型私立高校や特殊目的高校(特に外国語高校)です。
「自私高」「特目高」を目指して小学生から塾通い
自私高や特目高に入ることは難関大学への近道です。これらの高校に入るには試験を受けなければなりません。試験といっても中学の内申書と自己紹介書、面接なので、中学3年間でいかに良い成績を上げられるかがポイントになります。
つまり、中学での日々の成績で難関高校に行けるかどうかが決まるので、小学生のうちから複数の塾に掛け持ちで通います。そこで行われているのは学校よりも先に進んで学ぶ「先行学習」。小学5年生が中学3年生で習う内容を学ぶといったことが行われています。
韓国政府もこうした傾向を問題視し、2014年には先行学習を規制する法案をつくりましたが、これは公教育機関における先行学習にとどまっており、塾に対しては広報活動の禁止のみという不完全な状況になっています。
受験戦争に勝つために朝から晩まで勉強漬け
韓国の高校には部活が存在しないので授業は8時間まで主流。夕食は学校で食べることもあるそうです。少しでもよい大学にはいるために高校まではひたすら勉強に集中することが当たり前なのです。
おわりに
「大学修能試験(スヌン)による選抜は、お金をかけて塾に通える富裕層だけに有利になる」という考えのもと、韓国政府は高校の成績で選考を行う推薦入試の比重を大きくしました。しかし、推薦入試の選考材料となる学生生活記録簿の作成においても、富裕層に有利な状況を生み出し、難関大学への進学が特定の高校に偏っています。
日本でも近年、推薦入試による入学者数の割合を増やす傾向にあり、韓国と同様の状況になるのではという懸念もあります。韓国の受験事情は、近い将来の日本の姿なのかもしれません。
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企業取材や社史制作をメインに、子供の出産を機に教育や会計などの記事も手がけています。家族は小学生高学年の娘、夫。関心事は教育やライフプランのことなど。「これからの時代を生きるために必要な力って何?」をテーマに、日々考えています。
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