「指導死」という言葉をご存知でしょうか?
指導死は、子どもが学校で教員などから受ける指導が原因で、追い詰められて自殺してしまうことを指します。
この指導死は、問題が表面化しにくいのが問題視されており、生徒からのSOSがまわりに分かりづらいという特徴があるのです。
この記事では、指導死をテーマに詳しくお伝えします。
指導死について教育現場の現状
それでは早速、指導死が問題となっている教育現場の現状について見ていきましょう。実際に、教育の現場でどのようなことが起きているのかをご紹介します。
福岡市の私立高校で女子生徒が指導死
まず1つ目は、福岡市の私立高校で起きた女子生徒の指導死です。
当時1年生だった女子生徒は、剣道部に所属していましたが、顧問から日常的に暴力や暴言を受け、行き過ぎた叱責によって自殺に追い込まれたという事件が発生しました。
顧問は、指導の一環として、女子生徒に暴言や暴力を行っていたとのことですが、生徒を自殺にまで追い込む行為は指導の域を超えています。
福井県池田町の男子中学生の指導死もある
2つ目は、福井県池田町の男子中学生の指導死が挙げられます。
この生徒は、担任から大声で叱責された日に、副担任からも宿題のことで責められてその翌日に自殺した事件で、その行き過ぎた指導が問題視されています。
生徒1人に対して、担任と副担任の大人2人が次々と叱責をしたという状況で、逃げ場をなくし追い詰められての自殺だったのではないかと言われています。
札幌市の男子高校生の指導死とは
そして3つ目は、札幌市の男子高校生の指導死です。
当時高校1年だった男子生徒は、学校で起こったトラブルの原因が自分にあると決めつけられ、教師から必要以上にひどい言葉を浴びせられました。
トラブルの原因はこの男子生徒ではなかったのですが、この教師からの叱責が原因で男子生徒は地下鉄の構内で自殺してしまったのです。
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指導死による生徒への影響や懸念点など
指導死は、一番多感な時期の子どもが受けることが多いものです。このことが生徒へどのような影響を及ぼすのか、また指導死が広まる懸念点などをご紹介します。
自由な発想やのびのびと学ぶ姿勢の欠如
本来、教師は生徒一人一人の個性を伸ばし、自由な発想によって個性を発揮できるようにサポートする役割を担っています。
しかし、指導死に至る状況では、生徒の意見を聞かず教師の一方的な圧力によって、生徒の自由な発想やのびのびと学ぶ姿勢を押し込めてしまっていると言えます。
このような状態では、生徒の個性は伸びないと言わざるを得ないでしょう。
生徒自らが考えて発言する能力の低下
指導死にまで追い詰められた生徒たちは、全て先生から威圧的に攻撃され自分の意見を発言する機会すら与えられなかったことでしょう。
その結果、「どうせ言っても無駄だ」との考え方が植え付けられてしまい、先生の価値観を押し付けられるだけなのだという意識が生まれたと推測できます。
生徒と先生との信頼関係の欠如
本来学校は、安心して通うことの出来る場所であるべきですが、指導死の影響は他の生徒へも伝わり、先生への信頼が薄れてしまう原因に繋がります。
必要な時に助けてもらえない、自分の意見を聞いてもらえないという意識が大きくなり、信頼関係を築くことが難しくなるのではと懸念されているのです。
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福祉系大学で心理学を専攻。卒業後は、カウンセリングセンターにてメンタルヘルス対策講座の講師や個人カウンセリングに従事。その後、活躍の場を精神科病院やメンタルクリニックに移し、うつ病や統合失調症、発達障害などの患者さんやその家族に対するカウンセリングやソーシャルワーカーとして、彼らの心理的・社会的問題などの相談や支援に力を入れる。現在は、メンタルヘルス系の記事を主に執筆するライターとして活動中。《精神保健福祉士・社会福祉士》
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