現在、ほとんどの公立中学校の部活動では、教師が担当の部活動の顧問を務めていますよね。しかし最近、公立中学校の部活動をみるのが、教師からスポーツクラブになる日が来る、いわゆる部活地域移行の動きが検討されつつあるのです。今回は、部活地域移行というテーマで、詳しく見ていきましょう。
公立中学校の部活動で部活地域移行が提案された背景
公立中学校の部活動で勧められている、部活地域移行とはどのようなものでしょうか?ここではまず、公立中学校の部活動で部活地域移行が提案された背景についてご紹介します。
これまでの日本の公立中学校の部活動の位置づけ
これまで公立中学校の部活動は、スポーツに興味のある生徒が参加し、学校の教師が担当顧問として指導をすると言う学校教育の一環として行われてきました。
この取り組みは日本のスポーツ振興を大きく支え、子どもたちの体力や技能の向上を図ることで、生徒の多様な活躍の場として教育意義を見出してきたのです。
また、生徒同士や生徒と教師が好ましい関係性を築いていくうえでも、非常に大切な交流の場となってきました。
部活地域移行が提案された背景について
先ほども解説しましたが、これまで公立中学校の部活動は学校教育の一環として非常に重要な位置を占めていました。この役割に関しては現在でも大きく変わっているわけではありませんが、ここ数年の日本では教育等に関わる課題が複雑化・多様化してきています。社会や経済の変化に伴い、学校や教師の指導だけでは解決できない課題が増えてきているのが現状です。
つまり、教師の指導だけで以前と同様の部活動の運営体制の維持が難しくなってきているため、部活動の存続が危惧されています。このような背景があり、学校と地域が協力しながら存続させていく「部活地域移行」が提案されたというわけです。
部活地域移行で期待されている将来的な希望
現在の日本では、少子化がますます深刻化していくと懸念されています。そのような中で、部活地域移行が実現される事で期待される将来的な希望には、どのような事があるのでしょうか?
部活地域移行を形にしていくために中心となるスポーツ庁では、生徒にとって望ましいスポーツ環境を構築するという事を念頭に置いて実現化を目指しています。生徒が生涯にわたって豊かなスポーツライフを実現し、各自のニーズに応じた運動が出来るような環境が整う事が期待されています。
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部活地域移行を実現させる上での課題について
部活地域移行は、生徒の体力維持や運動環境を整える上で、非常に画期的な取り組みと言われています。しかし、その中にはまだまだ課題として残っている問題もあるのです。
部活動の過熱化によって生徒の負担が増えるのでは?
教師が指導をしている現在の部活動では、活動時間がある程度明確に決められています。しかし、部活地域移行が実現する事によって、熱血指導が行われる可能性があり、生徒の帰宅が夜遅くなってしまう事が懸念されているのです。
大会などでは「勝つ」事が重要視されがちで、生徒の負担をどのように調整するかが課題のひとつとして挙がっています。
部活動の練習の度合いを誰が管理するのか?
学校の中での部活動の場合は、校長や教育委員会などによって、ある程度の管理が機能しています。
しかし、部活地域移行をする事によって、学校管理外の活動になり、どの程度ハードなものになっているかが把握できないという懸念が出てくるのです。部活地域移行では、各団体の責任者が管理責任を負う事になり、活動時間の管理が難しくなるのではと言われています。
生徒の健康への配慮が行き届くのか?
部活動が地域移行すると、競技思考が強い指導に偏る可能性があり、部活動の本来の目的である生徒同士のコミュニケーションなどが度外視されてしまう事が考えられます。
そうなると、強いものはさらに強くなるため、心身の状態に関わらず、部活の時間を優先する可能性もあります。つまり、生徒の健康上の安全を守れるのかという点が課題として挙げられているのです。
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福祉系大学で心理学を専攻。卒業後は、カウンセリングセンターにてメンタルヘルス対策講座の講師や個人カウンセリングに従事。その後、活躍の場を精神科病院やメンタルクリニックに移し、うつ病や統合失調症、発達障害などの患者さんやその家族に対するカウンセリングやソーシャルワーカーとして、彼らの心理的・社会的問題などの相談や支援に力を入れる。現在は、メンタルヘルス系の記事を主に執筆するライターとして活動中。《精神保健福祉士・社会福祉士》
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