いじめによる事件が起こるたびに、学校の「いじめアンケート」が話題になります。多くは「アンケートでいじめは把握できなかった」という、責任逃れにも聞こえる内容です。学校で答えるアンケートを効果的にするには、どのような対策が必要なのか、国立教育政策研究所の報告をもとにまとめました。
「いじめアンケート」の実情
平成28年度に文科省が行った調査によれば、全国の小中高および、特別支援学校のうち97・7%の学校で、「いじめアンケート」を実施しています。小学校でいじめ発見の割合は、28・0%がアンケートによるものです。
いじめは学年が高くなるほどに多くなり、ピークは中学1年生です。小学6年から中学1年生にかけての件数の増加は大きいものとなっています。その後、件数は減少していきます。とはいえ小学校低学年からいじめは起こっています。
7割が記名式で現状を把握できていない
「いじめアンケート」は、年に数回行われることが多いようです。実施に関しては、各学校の自主性に任されています。アンケートによっていじめが明らかになるケースは、いじめ総数の約5割をしめていますが、多くは過去の事例です。これはアンケートの7割が記名式で行われているからです。子どもたちは「言いつける」行為を特に嫌います。子ども特有の倫理観影響していますが、記名をすれば、教師が聞き取りにくることがよくわかっているのです。面倒を避けたいと思えば、おのずと現在進行形のいじめには口を閉ざすことになります。
事件後に「いじめはなかった」と証言されている
28年度の調査では、小・中・高を含めた中で、自殺した生徒は244人います。ショッキングな数字ですが、そのうちいじめが原因のひとつと報告されたのは、10人です。いじめによる自殺の報道では、事件後に学校が「いじめはなかった」と証言するケースが散見されます。アンケートによる現在進行形のいじめの把握が難しい状況では、こうした証言が出ることもいたしかたないかもしれません。しかし、これではアンケートの有効性が疑われるのも当然です。
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「いじめアンケート」を有効活用する方法
実施してもあまり役に立たないのではないかと思われがちな「いじめアンケート」も、方法によっては有効活用できます。実際に、国立教育政策研究所が有効なアンケートのとり方や、内容・結果の活用方法をまとめ、現場の先生方に推奨しています。
国立教育政策研究所は無記名式を推奨
国立教育政策研究所が推奨するのは、無記名式のアンケートです。「誰がいじめているのか、いじめられているのかがわからない」という声もありますが、そもそもアンケートで犯人探しをしようという発想自体を改める必要があります。子どもたちは、無記名だからこそ、安心して本当にあったこと、いま現在起こっていることを書くようになります。同研究所が作成したアンケートには、直接的ないじめに関する項目以外に、子どもの自己肯定感、他学年とのかかわり、先生や親以外の大人とのかかわりについて質問する項目があります。単なるいじめという事象だけではなく、いじめを生む空気がまん延していないか、環境についても把握できるアンケートの実施が望まれます。
結果を点検・見直し・実践のサイクルに生かす
アンケートをとっていながらいじめを把握していなかったという学校は、アンケートをただとっただけではなかったでしょうか?実態は推測するしかありませんが、結果を点検し、対応を見直し、あらたな解決策を実践するというサイクルを経なければ、宝のもちぐされです。国立教育政策研究所では、このサイクルを作るための点検シートを作成しています。実際に中学校区で2年間継続して、アンケートを実施し、点検・見直し・実践サイクルを行った結果、いじめが減少したという報告も出ています。
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子どもたちも大学生になり、自分の子育てはひと段落。保育士として、地域のコーディネーターとして、子育て支援・子ども支援にかかわっています。ゆる~く子育て楽しみましょう!
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