勝利至上主義の問題は小学生柔道だけではない?
ここまでは、小学生柔道で問題視されている勝利至上主義についてお伝えしてきました。しかしこれらは小学生柔道だけに限った話ではないようです。最後に、他のスポーツについても見て行きましょう。
野球やラグビーでも問題視されている勝利至上主義
日本には、スポーツ少年団という全国に約2万8千の団体があります。中でも、軟式野球やサッカーなどでは、登録者数が小学生を中心に57万人いると言われています。そして現在、このような柔道以外の競技でも全国大会を廃止する事が検討されているのです。(2022年5月現在)
高校ラグビーのリーグ戦を立ち上げた、早稲田大学ラグビー部出身の松山吾郎監督は、和やかで楽しかったラグビーが勝利至上主義の指導によって、厳しいラグビーに変わってしまったと話しています。つまり、常に日本一を目指さなければならない環境は、スポーツを楽しいものから苦しいものへと変化させてしまう可能性が大きいのです。
変わりつつあるスポーツ界の勝利至上主義
日本の小学生のスポーツ界は、「勝つこと」という目標があまりにも強くなってしまっているという現状になっていました。しかし、このような勝利至上主義の考え方は、徐々に変わってきています。
具体的には、成長段階の早い小学生への行き過ぎた指導が問題視され、小学生柔道の全国大会が廃止されたのをきっかけに、他の種目に対しても、全国大会の廃止を検討している団体が出てきているのです。
勝利至上主義の今後の課題とは?
まだ、考え方や体の成長が未発達な小学生への勝利至上主義は、成長の妨げになってしまう恐れがあり、将来を担う子どもたちには、その成長段階にふさわしい指導がなされる必要があります。そのため、現在のスポーツ界では、大人が作り上げてしまった間違った勝利至上主義の考え方を少しずつ変えていき、再び楽しみながらスポーツを行う事が出来る全国大会を復活させようという動きが、徐々に広がりつつあるのです。
おわりに
小学生という早い段階での勝利至上主義は、スポーツを楽しむ心を阻害し、親子関係にまで影響を及ぼしてしまう恐れがあると言われています。今回、全国大会が廃止になった小学生柔道だけではなく、他の種目に対しても勝利至上主義の考え方は見直されていく事でしょう。
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福祉系大学で心理学を専攻。卒業後は、カウンセリングセンターにてメンタルヘルス対策講座の講師や個人カウンセリングに従事。その後、活躍の場を精神科病院やメンタルクリニックに移し、うつ病や統合失調症、発達障害などの患者さんやその家族に対するカウンセリングやソーシャルワーカーとして、彼らの心理的・社会的問題などの相談や支援に力を入れる。現在は、メンタルヘルス系の記事を主に執筆するライターとして活動中。《精神保健福祉士・社会福祉士》
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