みなさまは、勝利至上主義という言葉をご存知でしょうか?多くのスポーツの世界では、勝って頂点を目指す事を絶対的な目標とする、勝利至上主義が当然の思想となっています。しかし今、小学生のスポーツ界ではこの勝利至上主義が問題視されているのです。
今回は、勝利至上主義が問題視されている実態や小学生柔道の全国大会が廃止された理由について、詳しく解説します。
勝利至上主義の概要や実態とは?
それではまず、そもそも勝利至上主義とはどのような内容なのか、そして現在のスポーツ業界における勝利至上主義の実態について詳しく見ていきます。そうすれば、勝利する事を絶対的な目標として掲げている勝利至上主義の概要や、問題点が浮かび上がってくることでしょう。
小学生柔道の全国大会廃止に関係する勝利至上主義とは?
勝利至上主義とは、スポーツ競技において相手に勝つことを絶対的な目標とする考え方です。それは大人だけではなく、小学生のような幼い成長期の子どもにも、その考え方は浸透しています。勝つためには、多少の犠牲はい問わないという考え方の元、過酷な練習などを課せられる環境が当たり前になっているのです。
小学生への勝利至上主義が問題視されている?
勝利至上主義の考え方は、小学生のスポーツ界では非常に問題視されています。なぜなら、勝つためにはリスクを伴う指導を行う指導者もいて、大人のように体が成熟しきっていない小学生の場合、その指導内容に体が付いていけない可能性が高いからです。
また、素質のある子どもの親は試合などでもヒートアップしやすく、子どもに対して過剰な期待を押し付けてしまう事も考えられます。
勝利至上主義が問題視されている実態
勝利至上主義が問題視されている証拠として、一番大きな動きは小学生柔道の全国大会の廃止です。柔道は、日本のお家芸とも言われている競技であり、昨年の東京五輪では過去最多となる金メダル9個を獲得するほどの競技です。
しかしその一方で、オリンピックを目指そうと小学生の頃から行き過ぎた勝利至上主義が散見されるようになっており、成長期の子どもにはふさわしくないような指導が行われている実態があります。
スポーツ丁の室伏広治長官も、定例会見などで勝利至上主義への違和感を発信している事からも、現在の日本のスポーツ界での大きな問題となっていることがわかります。
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勝利至上主義が問題視されている理由とは?
スポーツの世界では、勝つことが正義とされている部分が大きいので、勝つこと自体は悪い事ではありません。しかし「勝つこと」以外の弊害をもたらす可能性があると懸念されているのです。
成長期の子どもにはふさわしくない指導内容
勝利至上主義が問題視されている廃止前の小学生の柔道界では、親も先生も勝つために成長期の子どもにはふさわしくない指導に熱が入っていたと言われています。大人のように、無理やり体重を増やしたり減らしたりする方法や、勝つことを絶対的な正義とする考え方は、小学生の子どもには、ふさわしくないという理由があるのです。
様々な考え方を選択出来る機会を奪ってしまう
小学生の頃というのは、様々な人との関わり合いや体験を通して、幅広い選択肢があるという事を学ぶ時期でもあります。しかし、勝利至上主義という環境下で育つ子どもたちは、「勝つこと」だけが正解とされる世界にいるので、他の選択肢があるという事を知らずに成長してしまう恐れが潜んでいます。
親と子の間で上下関係が出来てしまう
勝利至上主義という環境下では、親も指導に対してヒートアップしてしまうケースが多いとされています。そのようなケースでは、親の考えが圧倒的に強くなりやすく、子どもは「嫌だ」と言えない状態になりがちです。このような環境では、子どもは親に対して何も意見を言えない関係性になり、親子関係を築いていく中で大きな問題となることでしょう。
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福祉系大学で心理学を専攻。卒業後は、カウンセリングセンターにてメンタルヘルス対策講座の講師や個人カウンセリングに従事。その後、活躍の場を精神科病院やメンタルクリニックに移し、うつ病や統合失調症、発達障害などの患者さんやその家族に対するカウンセリングやソーシャルワーカーとして、彼らの心理的・社会的問題などの相談や支援に力を入れる。現在は、メンタルヘルス系の記事を主に執筆するライターとして活動中。《精神保健福祉士・社会福祉士》
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