地震、大雨などの自然災害や、学校に侵入してくる不審者、火災など、学校で起こりうる災害や事故について、危機管理マニュアルの作成が推奨されています。しかし、実際にこうしたマニュアルは役に立つのでしょうか?学校の危機管理マニュアルの内容を検証し、安全性について考察しました。
学校の危機管理マニュアルの内容
文部科学省は、各学校に「学校の危機管理マニュアル作成の手引き」という冊子を配布しています。危機管理マニュアルの作成は学校の義務になっていますので、各校で必ず準備されているはずです。手引きでは、どのような危機管理マニュアルの作成を指導しているのか、内容を見てみましょう。
事前の危機管理【予防編】
まずは、事前の危機管理についてです。事故が起こらないようにすること、万が一事故が起こってしまったときに、さらなる被害を生まないようにすることを念頭に、予防的な管理について述べられています。例えば、学校の遊具の定期点検、屋上のフェンスや手すりなどの点検も、事前の危機管理にあたります。学校でよくおこなわれる避難訓練も予防の範囲です。避難訓練は、火災に偏らないよう、地震、不審者侵入など、想定される事故を満遍なく訓練できるように配慮する必要があります。プール事故を想定した教職員の訓練や、登下校中の児童への安全指導も事前の分野です。
個別の危機管理【対処編】
マニュアル作成の手引きには、個別の危機管理について詳しく述べられています。特に地震や津波災害については、東日本大震災を教訓にした内容になっています。不審者対応についても、侵入した不審者にどのような声かけをするか、通報のタイミング、児童の避難の判断など、詳細に決めておくように求めています。
学校で想定される事故はほかにもあります。例えば、食物アレルギーなどによるアナフィラキシーショックへの対応、登下校中の交通事故、全国瞬時警報システム(Jアラート)に対する行動の仕方、熱中症など、その種類はさまざまです。マニュアル作成の手引きには、テロ予告やインターネット犯罪についての対処法も指導されています。
事後の危機管理【復旧編】
残念ながら事故や災害が起こってしまったあと、どのように対応するのか、という部分が、事後の危機管理にあたります。児童の安否確認や、保護者への引き渡し、子どもたちの心のケア、学校の再開、再発防止対策に関することが、復旧編として手引きされています。避難訓練と同時におこなわれることもある引き渡し訓練は、事故後の動きを予習しているわけです。
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危機管理マニュアルの安全性を高めるには
文部科学省が発行している、危機管理マニュアル作成の手引きは、さまざまな事例が想定されており、安全性に配慮した内容になっています。この手引きをもとに作られる危機管理マニュアルの安全性をさらに高めるためには、どのような方法があるのでしょうか。
専門家の導入が安全性を高める
危機管理マニュアルを作る学校の先生は、学校のことはよくわかっています。校舎の内外の構造や、それぞれの先生の性格や能力、子どもたちができること、できないことなど、マニュアルを作るにあたって必要になる情報です。しかし、先生は事故や災害に対する専門家ではありません。マニュアルを作成するにあたっては、やはり専門家を導入することが安全性向上につながります。それも、高名な学者である必要はありません。地域住民で、防災管理者や防災士の資格を持った方がいれば、作成したマニュアルにアドバイスをもらうことを考えるとよいでしょう。
実効性のあるマニュアル作成が必要
よく「マニュアルどおりにしか動けないのか」とやゆする表現を見かけますが、「マニュアルどおりに動く」というのはとても大事なことです。事故や災害の際は、正常な感覚が失われがちなので、動揺したなかでも決められたことをおこなうことが重要になります。ですから「誰が何をするか」という役割分担をはっきり決めておかなくては実効性があるマニュアルとはいえません。「担任が○○をする」「○○の決定は6学年主任がおこなう」など、具体的な役職あるいは名前が入ったマニュアルは必要です。訓練のあとに問題を見直し、バージョンアップされているマニュアルは実効性が高く、安全性も高いといえます。
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子どもたちも大学生になり、自分の子育てはひと段落。保育士として、地域のコーディネーターとして、子育て支援・子ども支援にかかわっています。ゆる~く子育て楽しみましょう!
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