不登校には、いじめや学業についていけないなどのさまざまな理由があります。しかし、一般的に不登校の子どもは学校に行っていないわけですから、出席扱いにはなりません。ところが、近年では一定の要件を満たすことで、不登校でも出席扱いにすることができるようになりました。今回は、その要件などについてご紹介します。
不登校でも出席扱いにできる制度がある
本来、不登校の子どもを出席扱いにするためには、保健室や相談室などに登校させ、そこで自主学習をすることがオーソドックスなものでした。しかし、いくら教室に入らないといっても学校に行くこと自体勇気が必要ですし、学校によっては保健室や相談室登校というシステムを設けていない場所もあったようです。
ところが、現在では子どもが学校に行かずとも出席扱いにできる、「出席扱い制度」を国が制定しています。
出席扱い制度の概要を知っておこう
出席扱い制度とは、2005年より文部科学省が認定している制度です。その特徴は、学校に行かなくても自宅学習をすることで、出席扱いにするという方針を取っていいます。
つまり子どもが学校にいかなくてもインターネットやファックス、郵送などを利用して自宅学習を行えます。学校側も子どもの自宅を定期的に訪問し、学習計画を立て、指導を行うというものです。
出席扱い制度を利用できる条件とは
出席扱い制度は、不登校の子どもにとって希望となる制度ですが、利用するには文部科学省の不登校の定義に該当していることが必要です。その条件とは、年間で30日以上欠席している者とされています。
当てはまるものとしては以下を対象としています。
- 勉強についていけない
- いじめなどの人間関係
- 発達障害などで特別な支援が必要
- 病気などで欠席が続いた影響で授業についていけず、二次障害だと認められた場合
しかし、欠席していても条件に該当しない場合もあります。例えば、病気やケガ、家庭の経済的理由で学校を休んだ場合は不登校と扱いません。
制度を利用するための流れについて
出席扱い制度を利用するには、一連の流れがあります。利用を考えている場合はまずは、担任教師に相談をしましょう。その後、校長先生や教頭先生も交えて協議が行われます。それを通して子どもが条件を満たしている場合は、学校との間で学習計画が作られ、自宅学習のルールを決めます。
これらの手順を経て、制度の利用ができるようになるのです。
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不登校で出席扱い制度を使うメリット
不登校の子どもは勉強をしたり、自分に自信をつけたりしたくても、実際に行動するには勇気が要ることもたくさんあります。なぜなら、不登校になるにはそれなりの理由があるとともに、1人では解決策を見つけるのが難しいからです。
しかし、出席扱い制度を利用することで、次のようなメリットが生まれます。
自宅学習を認めてもらえることで自信がつく
自宅でいくら頑張って勉強していると言っても、今まではなかなか学校側が分かってくれないこともあったでしょう。しかし、出席扱い制度を利用すると学習計画をもとにどのように勉強をしているのかを、学校側とも確認しながら進めて行きます。
つまり、学校側が客観的に把握できるので、子どもの自宅学習をきちんと認めてもらえることになるのです。それを通して、子どもも自分のやっていることに自信を持つことが可能になります。
先生などと協力・連携し合える安心感が生まれる
出席扱い制度を利用する際は、必ず学校側と協力しながら進めて行く必要があります。自宅学習は時に孤独になりがちですが、関係者がサポートをすることで1人ではないという安心感が得られるでしょう。
また、何かしらの悩みが出てきた場合も、すぐに相談することができます。
内申点を高める手助けができる
高校進学時は中学校の内申点が重要になりますが、中学受験をしたい場合も学校によっては小学校の内申点が必要になるケースもあります。本来なら学校に行かなければもらえなかった出席に関する内申点も、出席扱い制度を利用すれば自宅学習も内申点に加えられるのです。
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福祉系大学で心理学を専攻。卒業後は、カウンセリングセンターにてメンタルヘルス対策講座の講師や個人カウンセリングに従事。その後、活躍の場を精神科病院やメンタルクリニックに移し、うつ病や統合失調症、発達障害などの患者さんやその家族に対するカウンセリングやソーシャルワーカーとして、彼らの心理的・社会的問題などの相談や支援に力を入れる。現在は、メンタルヘルス系の記事を主に執筆するライターとして活動中。《精神保健福祉士・社会福祉士》
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