学校給食は、基本的に小学校・中学校に実施されています。特に小学校の場合は6年間通うため、子どもの成長を考慮した内容になっているものです。そこで気になるのは、6年間かかる給食費だといえます。ここでは、小学校の年間給食費と最近話題の無償化についても、お伝えします。
この記事のもくじ - 項目をクリックで該当箇所へ
小学校の給食費の年間金額は?無償化の経緯
小学校の給食費は、毎月支払うものなので、年間総額で考えることはあまりないかもしれません。ただ実際の費用負担を考えることにより、家庭における負担などの参考にもなるので、知っておくことが大切です。以下に、小学校の年間給食費と学校給食の無償化の経緯についてご紹介します。
学校給食は全国一律では行われていない
学校の給食は、全国全ての学校で行われているわけではありません。実は全国での実施率は、2018年度の文部科学省調査によると95.2%となっています。給食を実施するかしないかは地域よって違いがあり、大阪府や神奈川県などでは、給食実施率は低い傾向にあります。特に神奈川県の中学校に関してはお弁当持参が一般的です。こうした給食のない地域に住んでいると給食費の負担はありませんが、お弁当を作るための食費が掛かってしまいます。
小学校で必要な給食費の年間金額とは
給食は小学生の場合6年間食べ続けるものなので、実際いくら家庭で負担するものなのかを知っておきたいという人はたくさんいます。金額に関しても、文部科学省が定期的に平均月額を発表しており、2018年では公立小学校の保護者が負担している月額平均は4,343円です。この金額は、保護者が負担している年間金額を11カ月で割った金額となるので、年間金額は47,773円となります。子どもの成長のために給食はあるので、5万円弱の金額を高いと思うか安いと思うかは、それぞれの家庭によって感覚が違うことでしょう。
給食費を無償化にする流れの理由
現在では、あらゆる生活環境の変化によって、共働きや母子家庭・父子家庭が増えています。そのため、経済的に厳しく貧困状態にある場合、もっとも切り詰められるのは「食費」です。朝食抜き・夕食はコンビ二などが当たり前になっている子どもも多く、給食が食育の場になっている現状があるのです。しかし給食費は大きな負担ととらえる家庭も多いため、無償化を進めていこうという流れがおきています。地域によって無償化を実施するかしないかの検討が可能なので、今後はより増えていく可能性があるのです。
合わせて読みたい
給食費を無償化にしている自治体はある?
何かの法律があることで給食費は無償化になるわけではなく、各自治体ベースで予算を捻出し財源を確保した上で、無償化に踏み切ることとなっています。そのため、まだまだ無償化になっている学校は少ないのが現状です。その一方で、無償化に踏み切った自治体も少なからずあります。
無償化を行っている地域はまだまだ限定的
現在、給食費を無償化にしているのは全国都道府県の市区町村教育委員会に対しての調査によると、小中学校一環で無償化が全体の4.4%、小学校のみ無償化が0.2%と非常に少ないです。しかし市よりも町村の方が無償化を進めており、比較的人口の少ない自治体が無償化を行っている傾向にあります。こうした町村の場合は、予算の継続的な確保がしやすいと考えられており、子どもの人数の少なさも影響しているといえます。
2020年4月以降は中核市も無償化が進む
以前は、人口が少ない自治体で進んでいた給食費の無償化ですが2020年4月以降、中核市でもある大阪市や神奈川県の箱根町でも、小中学校の給食無償化について、積極的に検討していく意向を示しています。大阪府や神奈川県では、そもそも給食を実施していない自治体が多いため、給食費の無償化が進めば給食実施の学校も増えていく可能性があります。子どもの貧困を少しでも軽減させるために、多くの自治体が給食費無償化に前向きな考えを示しているのでしょう。
無償化が難しい場合の代替案も存在している
給食費の他、学校に通うために必要な費用を援助してくれる「就学援助」という制度もあります。自治体で給食費無償化ができない場合、代わりにこの援助制度を使う家庭も中にはいるのです。経済的に就学困難な児童の保護者からの申し出によって、給食費を含めた学校で必要な用品のお金を援助してもらえます。
ただ、こうした就学援助の存在はまだまだ知られていないですし、子どもが他の子に「貧困家庭」だと知られるのはかわいそうだという理由から、そもそも申請にいたらない場合もあるため、改善点は多いと言えます。
合わせて読みたい
給食費を無償化にするまでの壁について
給食費の無償化は、単純に困っている家庭のためだけに行うという考えに立つものではありません。しかし家庭の経済状況に関係なく無償化になれば、家庭の費用負担がなくなります。ただ、給食費無償化までには、さまざまな壁があるのです。
無償化について反対意見も多い
子どもの貧困をなくすため、成長に必要な栄養を摂るために、給食費無償化の検討が進んでいます。しかしこうした無償化について反対意見を述べる自治体もまだまだ多いです。理由としては、今まで給食費を支払っていない家庭の徴収をどうするのか、アレルギーを持っている子どもは基本的にお弁当対応になるので、不平等が生まれるなどがあります。自治体だけではなく、家庭の意見としても「もっと他にお金を使うべき部分があるのでは?」という声も多く、頭を悩ませているのが現状です。
財源確保の問題が大きいのも事実
給食費を無償化するためには、人口などによっても変化しますが、数億円規模の財源確保が必要になります。大きな都市ならかなりの財源が必要となりますし、結果的に税金からの捻出ともなれば、なかなか難しい問題です。また、市内の小学校を全て無償化させるのであれば、年間数十億の財源が必要になるため、継続的に財源を確保できるのかという点も、大きな問題だといえます。
給食実施率を上げる方が先という声もある
現状では、100%どの学校も完全に給食というわけではありません。そのため、全ての学校で給食を実施した上、自治体それぞれの判断で無償化にする方が不平等感はないという声も多いです。さらに給食費で保護者が支払っているのは、基本的に材料費の部分にあたるので、費用負担としては少ないはずといった意見も存在します。数々の問題を抱える中、無償化を進めることに難しさを感じている自治体もめずらしくありません。
おわりに
子どもにとって家庭の経済状況は本来なら関係のないことです。誰しもが平等に食事を摂り成長する権利を持っているので、今後は給食費無償化もどんどん進んでいくと考えられます。厳しい意見も当然ありますが、子ども達の将来のために大人ができることを考える必要があるのです。
※本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。ご了承ください。
ピックアップ
福祉系大学で心理学を専攻。卒業後は、カウンセリングセンターにてメンタルヘルス対策講座の講師や個人カウンセリングに従事。その後、活躍の場を精神科病院やメンタルクリニックに移し、うつ病や統合失調症、発達障害などの患者さんやその家族に対するカウンセリングやソーシャルワーカーとして、彼らの心理的・社会的問題などの相談や支援に力を入れる。現在は、メンタルヘルス系の記事を主に執筆するライターとして活動中。《精神保健福祉士・社会福祉士》
この記事に不適切な内容が含まれている場合はこちらからご連絡ください。