親ガチャとは、ゲーム機の「ガチャガチャ」になぞらえた造語です。ガチャガチャは商品が出てくるまで中身が何か分からず、自分のお目当ての物を手にできたときは喜びに溢れるものの、興味がない物だった場合はガッカリしてしまいます。
親ガチャはこれと同じように、親にも当たりはずれがあるという意味で使われているのです。ここでは、親ガチャの詳細や親と子どもそれぞれの立場からの言い分について解説します。
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親ガチャとは?その意味と誕生した背景について
親ガチャとは、さまざまな店舗にあるゲーム機やソーシャルゲームの中に登場するガチャガチャからヒントを得て、作られた言葉です。ガチャガチャには数多くのアイテムが詰め込まれていて、ガチャをしてから出てくるまで何が当たるか分からないというのが特徴です。
つまり、ガチャガチャと同じように親は子どもの希望で選べず、良い親に当たるも悪い親に当たるも運しだいだということを意味します。一見残酷ではありますが、親ガチャという言葉が生まれた背景には深刻な問題も潜んでいるのです。
親ガチャとはどういうときに使われる?
親ガチャという言葉は、子どもにとって物事が親の影響で上手く進まなかったときに口にすることが多いようです。
例えば、「私は親同様ブスだから、全然かわいい洋服やメイクが似合わないのが悩み。あーあ、親ガチャ失敗だわ」「うちの親は貧乏だから大学進学無理っぽい。親ガチャがハズレた~」などというように使います。
このように、親ガチャは上記のようにマイナスな意味合いが含まれている場合が一般的です。しかし、本当は親との関係に不満を抱いていないにも関わらず、一時の感情で喧嘩をしてしまい、その気持ちをヒートダウンするために「親ガチャ失敗した」という言葉で代用する場合もあると言われています。
教育格差が親ガチャという言葉を生み出した
親ガチャという言葉は、各々の子どもが自発的に作り出したというよりも、そのように言わざるを得ない社会環境に身をおくしかなかったからだという考え方があります。
具体的には、経済的に大学に行かせることができない家庭で育った子どもは、就ける仕事や給料が限られることも多く、満足な暮らしができないケースも存在します。
また親が地方出身だったり、封建的な価値観を持っていたりすると、子ども自身が望む教育が受けられず、チャンスさえつかめないこともめずらしくないでしょう。
このような教育格差社会が、否応なしに「親ガチャ」という言葉の浸透を進ませてしまったのかもしれません。
ワーキングプアも親ガチャに拍車をかけている
教育格差と似た部分もありますが、ワーキングプアという社会問題も親ガチャという言葉に拍車をかけていると言えます。親が家庭のために懸命に働いているのに生活は変わらず、収入も少ない。このような負のループを見ていると、子どもは「良い暮らしができないのは親のせいなのではないか?」と思えてくる場合もあるかもしれません。
しかし、これは親の責任だけではないのです。不景気が続いたり、賃上げ対策がなかなかできない社会(国)にも大きな問題が潜んでいます。
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親ガチャとは子どもの正当な言い分もある
子どもは、親を選ぶことはできません。
そのため裕福な親のもとに生まれれば金銭的に恵まれた生活を送れますし、愛情あふれる親に育てられれば精神的にも健やかに成長することが可能です。子どもが親ガチャに対して感じる言い分を以下にまとめてみました。
子どもは親の経済状況を変えることは難しい
子どもはある程度の年齢になるまでは勉強が本分で、現在の親の経済状況を子どもの力のみで変えることは大変困難です。
例え、アルバイトをしたとしても家計を十分に支える収入を得ることはできませんし、子どもが取り計らって親を収入の良い職場に移動させることも不可能に近いですよね。良くも悪くも、子どもは親の経済状況に依存せざるを得ません。そのため、親ガチャという言葉で親に不満をぶつけるしかないケースもあるのです。
子どもは親になる人の容姿を選べない
容姿が親と似ていない子どもは数多くいますが、遺伝的な問題で親の顔やスタイルに子どもが似る可能性も高いものです。
生まれ持った容姿に色々と言うのは良くありませんが、子どもによっては「こんな顔で生まれたかったな」「肥満体質ではなく痩せ体質が良かったのに」と思ってしまうこともあるでしょう。
遺伝的なものは簡単に変えられない部分もありますので、つい親ガチャという言葉で当たりたくなる場合も否めません。
虐待などを受けると親を憎んでしまう
本当は親に愛されたかったのに暴力を振るわれたり、何も面倒を見てもらえなかったりする子どもも、悲しいことに存在します。
また、どんなに虐待を受けても、子どもにとって親は絶対的で逆らうことさえできないという場合も少なくありません。こういう状況下にいると、子どもは親を憎んでしまい、親ガチャがハズレたというしかないのです。
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「親ガチャとは」という言葉を簡単に使ってほしくない
子どもが親を選べないのは確かなことですが、多くの親はどんな状況であれ、子どもを一生懸命に育てているでしょう。
次は、親ガチャに対するそんな親側の言い分をご紹介します。
親を物のように考えるのは不謹慎
ガチャとは本来ゲーム機のことなので、例え言葉の上だけだとしても、親を物と同じように扱うのは良くないと考える親は多くいます。なぜなら、多くの親は自分よりも子どもを優先して大事にする姿勢を持っているからです。
また、自分を生み育ててくれた親の存在について、軽々しく「ハズレた」と言ってはいけないという意見が目立ちます。
子どもが親になったときのことを思うと心配になる
子どもの中には、「親に恵まれなかったから親ガチャ失敗」と感じる人もいます。
しかし、それは親のせいで自分は何も悪くないという考え方でいると、自己中心的になって危ないことも確かです。このような子どもが容易に親ガチャという言葉を多用していると、彼らが実際に親になったときに、自分の子どもにきちんと教育することができるのかと心配になるという声もあります。
ひどい環境で育った子どももいるから理解できる
親側の言い分の中には、親ガチャという言葉に寛容なケースも。それは、虐待などを受けて辛い思いをしている子どもたちに対してです。過酷な環境にいれば親を憎んでしまうのは自然なことでもあります。そのような子どもたちが、親ガチャという言葉を使うのは理解できるという意見もありました。
おわりに
親ガチャという言葉を聞くと、一見「育ててくれた親を侮辱するなんて」という考えが浮かぶかもしれません。
しかし、親ガチャとは子どもにも親にもそれぞれの言い分があります。また、社会環境や家庭の状況などによって、子どもや親の力だけではどうにもできない現実もあるケースを理解することも大切です。
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福祉系大学で心理学を専攻。卒業後は、カウンセリングセンターにてメンタルヘルス対策講座の講師や個人カウンセリングに従事。その後、活躍の場を精神科病院やメンタルクリニックに移し、うつ病や統合失調症、発達障害などの患者さんやその家族に対するカウンセリングやソーシャルワーカーとして、彼らの心理的・社会的問題などの相談や支援に力を入れる。現在は、メンタルヘルス系の記事を主に執筆するライターとして活動中。《精神保健福祉士・社会福祉士》
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