働き方の見直しやアフターコロナの背景もあり、在宅での仕事がめずらしくない時代になりました。しかし、子育て世代が在宅で仕事をする際に課題となるのが仕事と育児との両立です。
この本記事では、「在宅での仕事と保育の両立の現実」と「在宅で仕事と保育をする際の心得と上手くいくコツ」についてお話します。
在宅で仕事と保育を両立するのはムリ!?
「在宅勤務なら保育所は必要ない」「仕事も子育てもできるから、一石二鳥」というイメージを持つ人は多いことでしょう。そのため、多くの市町村では在宅で仕事をしている場合は、入園基準が厳しくなる傾向にあるようです。
しかし、在宅で仕事をしながらの育児には理想とは程遠い現実があります。
「在宅の仕事なら子ども見ながらできる」の現実
在宅で仕事をしながら育児をすることに良いイメージを持っている方の多くは、「仕事をしながら合間に家事ができる」「遊んでいる子どもを見ながら仕事ができる」などと、仕事・家事・子育てを両立しながら効率よく働くことができると考えているかもしれません。
しかし、実際にはそんなに事が上手く運ぶわけもないのです。例えば、
- 子どもが常に話しかけてきて仕事にならない
- 子どものごはんを作らなければいけない
- 子どもから目が離せない
- ことごとく予定が崩れる
- 仕事どころか家事すらまともにできない
という現実があります。
特に、在宅の仕事を始めて間もないうちは、デスクワークとは異なる仕事スタイルに戸惑う方もいるでしょう。
「在宅仕事×子ども=難しい!」と感じるのは半数以上
在宅の仕事と保育についてのアンケート調査は、多くの機関が行っています。しかし、どの結果をとってみても、在宅の仕事をしながら保育は難しいと感じている人が大多数を占めているのです。
(1)「緊急事態宣言後の育児と仕事の両立状況に関するアンケート」
「コロナ危機下の育児と仕事の両立を考える保護者有志の会」による2020年5月4日(月) – 5月10日(日)の調査。インターネット調査(回答数:1723件、有効回答数:1634件)
⇒6割超の保護者が在宅仕事を中断しながら子どもを見ている
(2)「在宅勤務」に関する調査
キッズラインが未就学児の子どもがいるワーママ224名を対象に実施
⇒75%のママが子どもがいると、在宅ワークに集中できないと回答
(3)テレワークに関する調査2020
日本労働組合総連合会が2020年6月5日~6月9日インターネットリサーチにより実施。全国の18歳~65歳の男女(会社員・公務員・団体職員・パート・アルバイト)1,000名の有効サンプルを集計
⇒小学生以下の子どもと同居している人の80.9%が「子どもが家にいるときのテレワークに難しさを感じる」と回答
在宅での仕事の方が疲れるという方も…
子どもを見ながら在宅の仕事は困難なため、結局、勤務時間中に仕事を終えることができず、子どもの就寝時を利用して仕事をせざるを得ない状態になる方も多くいます。その結果、体調を崩し、精神面に疲れが出てしまうという場合も少なくありません。
在宅での仕事は、出勤よりも有意義なワークライフが送れるというイメージがあるため、在宅での仕事と育児が容易であるかのように思われがちです。しかし、中には、出勤しているほうが心も身体も健康的に過ごせるという声が多い実態があります。
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在宅で仕事と保育する上で心得ておくべきこと
様々な意見がありますが、在宅の仕事自体は生産性を高めることが統計的にも証明されています。世間の風向きや政府の方針を見てみても、在宅での仕事は今後も増えて行くことでしょう。
一方、在宅の仕事をしながら育児もする選択をせざるを得ない状況になるケースも大いに考えられます。在宅で仕事と保育を両立するためには、次のような点を心がけることが大切です。
計画通りにいくはずはない
パワー配分やスケジュール計画に沿ったワークをこなしていくのが理想的だと言えますが、在宅時に保育をしながらでは困難です。「保育をしながらの在宅仕事は計画通りにいかないもの」「上手くできなくて当然」だと、あらかじめ心得ておきましょう。
期待してしまうと、上手くいかない時に精神的なダメージも大きくなります。自分を責める気持ちや不安に苛まれることもあるかもしれません。しかし、はじめから上手くできないことを想定していれば、仕事が進まずイライラしすぎることもなく、みだりに自分を責めることもなくなり、心が楽になるはずです。
パフォーマンスは落ちて当然。60%なら上々
子どもがいる場所での在宅の仕事はハプニングの連続ですので、会社に居る時と同じように集中することは困難です。どうしても集中は途切れますし、作業効率も悪くなります。
通常時に比べて仕事の効率が落ちても、上手く仕事が進まないことは当たり前だと捉えるようにしましょう。通常時の60%が出せれば上出来です。30%~40%の力しか発揮できないというのも、決して珍しいことではありません。
「在宅の仕事×保育」の良い部分にフォーカスしよう
在宅の仕事が上手くいかないと、どうしても子どもにイライラしてしまったり、在宅での仕事の場に子どもがいることに、ネガティブな思いを持ってしまったりすることもあるかと思います。
しかし、在宅で仕事をしながら保育をすることには、以下のようなメリットもあるのです。
- 子どもに多くの時間をかけて寄り添える
- 成長の機会を見ることができる
- 家族関係が濃厚になる
子どもが小さな時期は、ほんの一瞬です。たった数カ月、数週間で驚くほど成長した姿を見せてくれることもあります。仕事は変わりなく続いていくものですが、子どものその時々の姿は、一生のうち、二度は来ないのです。
在宅の仕事は、今しか出会うことができない、子どもとの時間を大切にできる機会だと考えることもできます。
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福祉系大学で心理学を専攻。卒業後は、カウンセリングセンターにてメンタルヘルス対策講座の講師や個人カウンセリングに従事。その後、活躍の場を精神科病院やメンタルクリニックに移し、うつ病や統合失調症、発達障害などの患者さんやその家族に対するカウンセリングやソーシャルワーカーとして、彼らの心理的・社会的問題などの相談や支援に力を入れる。現在は、メンタルヘルス系の記事を主に執筆するライターとして活動中。《精神保健福祉士・社会福祉士》
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