日本は、世界的に見ても「裕福な国」と思っている方が多いことでしょう。なぜなら、子どもが飢餓で苦しむのを見る機会は少ないですし、高校進学率なども高いからです。ところが、実際には日本の子どもの貧困率は先進国においても割合が高いと言われています。ここでは、貧困の中でも相対的貧困とは何か?絶対的貧困との違いについて、解説します。
相対的貧困とは?貧困にも種類がある
子どもの貧困と言うと、父親や母親に仕事がない、あるいは保護者がいないという状態で、毎日ご飯を食べられずに、教育を受けるともままならないという状況をイメージするでしょう。
確かに、このようなケースも貧困に他なりませんが、貧困は内容や程度によって大きく2つの種類に分けられます。
分かりやすい貧困とも言える絶対的貧困
絶対的貧困とは、命を維持するための衣食住もままならず、最低限の生活をすることさえできない貧困のことです。
例えば、飢餓に苦しんだり、病気などのために治療が必要だったりしても、それを受けることのできない子どもたちのことをあらわします。このような特徴があるため、絶対的貧困は端から見ても理解でき、支援を行いやすい貧困だと言えるでしょう。
見落とされやすい相対的貧困の存在
一方、相対的貧困とは、子どもが生活している国の文化水準や生活水準より低い生活を送っている貧困のことを言います。
絶対的貧困とは違い、飢餓などまで陥ることはないものの、世帯の収入が低いため、一般家庭の子どもと同じ程度の食事の数が摂れなかったり、義務教育以上は受けられなかったりということがあります。命を脅かすまでの貧困ではない場合も多いので、周りが気付きにくく、支援の手が行き届かないことが少なくありません。
日本における相対的貧困のラインは、1人世帯で122万円以下。4人世帯なら約250万円以下の世帯だと言われています。
相対的貧困がクローズアップされている
2018年の厚生労働省の報告によると、17歳以下の日本の子どもは13.5%が貧困だというデータが示されています。
また、2010年のOECDの調査では、アメリカやイギリスなどを含む先進国34か国のうち、10番目の貧困率になっているのです。飢餓状態の子どもを見かける機会がないにも関わらず、このような結果が出ているのは、相対的貧困の子どもが多いからだといえるでしょう。
つまり、貧困率を下げるには、相対的貧困状態を改善する必要があるのです。
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相対的貧困とは具体的にどのような例があるの?
相対的貧困の子どもたちの割合や世帯年収などのデータだけを見ても、なかなかその実態をイメージしにくいかもしれません。数字によるデータはもちろん大切ですが、それだけでは表せない相対的貧困の具体例を理解しておきましょう。
親や子どもが十分な食事を摂ることが不可能
親の収入が少ないにも関わらず生活を維持していくためには、何かを減らしたり切り詰めたりする必要が出てきます。しかし、家賃や光熱費などの固定費はなかなか削ることが難しいでしょう。ただ、自分たちの努力で操作できるものは費用を抑えることが可能です。中でも、食事は一番のターゲットとなり得ます。
例えば、原則的に、食事は朝食と昼食、夕食の3食ですが、朝食を抜いて2食にしたり、毎日安い同じメニューを食べることで何とか生活をしようとすることができます。しかし、貧困のせいでこのようなことを続けていると、親ともども、子どもの心と身体に支障を与えるケースが否めません。
高校以上の教育を受けることができない
子どもが生まれてから大学を卒業するまでにかかる教育費は、1000万円以上といわれています。
十分な世帯収入がある家庭なら、子どもに満足の行く教育を受けさせることが可能ですが、貧困家庭は食べるだけでやっとという場合も多く、教育費は余分な出費と捉えてしまうこともあります。
中学校までは義務教育なのでなんとか通わせることができても、義務ではなく私立に行けばより高い学費がかかる高校以上の教育を受けさせるのは、考えられない家庭もめずらしくないのです。
親が病気で働けず、子どもが家庭を支えている
一家の大黒柱である親が病気で働けない場合は、当然収入を得ることができなくなります。しかし、生きて行くためにはお金が必要なので、どうしても誰かが働く必要がでてきます。そのため、未成年の子どもであっても、一日中アルバイトをして家庭を懸命に維持している場合もあります。
ただ賃金が安く、不安定な雇用体制の中で働いているため、いくら頑張っても貧困の連鎖から抜け出せないケースが少なくありません。
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福祉系大学で心理学を専攻。卒業後は、カウンセリングセンターにてメンタルヘルス対策講座の講師や個人カウンセリングに従事。その後、活躍の場を精神科病院やメンタルクリニックに移し、うつ病や統合失調症、発達障害などの患者さんやその家族に対するカウンセリングやソーシャルワーカーとして、彼らの心理的・社会的問題などの相談や支援に力を入れる。現在は、メンタルヘルス系の記事を主に執筆するライターとして活動中。《精神保健福祉士・社会福祉士》
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