離婚後の子育て世界では当たり前の「共同親権」とは

共同親権
共同親権とは、離婚後に両親が共同で子どもの親権を持つことです。「あれ?親権って、父親か母親のどちらかが持つんじゃないの?」と思った方もいるかもしれません。日本ではまだ離婚後の共同親権については認められていないため、親権は父親か母親のどちらか一方が持つことになっています。しかし先進国では離婚後も共同で親権を持つことが一般的です。ここでは共同親権、とくに離婚後のことについて解説します。

日本で離婚すると子育てはどうなる?

離婚する夫婦
両親が離婚すると、日本では子育てを父か母のどちらか一人だけが行うケースが一般的です。なぜなら子どもの親権・監護権は父か母のどちらか一方にだけに認めるとされているからです。また、親権・監護権とは、未成年の子どもができない法律行為の代理人となったり、子どもに対して親がしつけをしたりする権利・義務のことを言います。

親権・監護権を決めるのが一般的

日本では、両親が離婚すると父か母の片方が親権と監護権を持ちます。これは民法で規定されており、父と母の両方が親権と監護権を持つ共同親権は認められていません。これは片方の親は今後の子育てに関与する権利がないということを意味します。つまり親権と監護権を父か母の片方が持つということは、もう一方の親権と監護権を取り上げることにもなるのです。

実は親権者を決めるのは重労働?

離婚時に、親権者を父か母に決めるのは重労働だと言えます。なぜなら親権が父か母のどちらかにしか認められていないからです。どちらかの親権を認めると、もう一方の親権は取り上げられることになります。そもそも、離婚するほど夫婦仲が冷え切っているときに「権利が取り上げられる」ことを、お互いが意見を簡単に一致させられるかも疑問ですよね。

面会交流権や養育費はどうなる?

親権を取り上げられてしまった方の父か母は、面会交流権の行使や養育費の支払いをします。そのことで、子育てのほんの一部に関わることになります。面会交流権とは、親権を持たない親が子との面会を妨げない権利です。また子どもの生活費の一部を支えるのが養育費。子どもが生活するために必要なお金を毎月支払うことになります。ちなみにセットで語られることの多い面会交流権と養育費ですが、根拠となる法令が違うため、本来はセットではありません。

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日本のように離婚後の親権を単独親権にしている国は、G7(先進国首脳会議)参加国ではほかにありません。フランス、アメリカ、イギリス、ドイツ、イタリア、カナダは両親が離婚した後の親権は、共同親権を採用しているのです。

単独親権ってどういうこと?

単独親権とは、両親が離婚した後の親権を父親か母親のどちらか一方のみが親権を持つことです。もう一方は、子どもとの生活や面会交流について制限されることが一般的。これらは、裁判所の調停などで、面会交流の条件を決めて実施します。しかし親権を持つ親が面会交流を制限することで起こる「片親疎外」と呼ばれる状態になることもあり、子どもは「親権を持たない親に捨てられた」と感じるケースも残念ながら存在します。

海外ではメジャー?共同親権とは

両親が離婚した後でも、両親が結婚していたときと同様に親権を持つのが共同親権です。海外、特に先進国ではメジャーな考え方となります。欧米のドラマや映画では子どもが「今週末はパパの家で過ごす」、「来週末はママと旅行にいく」など夫婦が離婚しても子どもは両親と過ごす姿が描かれています。共同親権なら、離婚後も両親はどちらも子どもの成長をアシストできますし、子どもは「親に捨てられた」と感じることなく生活できるでしょう。もし、子どもが進路や生活で迷うことがあっても、2人の大人から意見を聞けるというメリットもあります。

離婚後、子どもになかなか会えないのはおかしい?

総務省の統計によると、離婚してから親子が会っているのは約3割に過ぎません。これは日本が単独親権を採用していることの影響があると考えられています。なぜなら共同親権を採用している国々では、両親が子どもと住む曜日や時間、場所をあらかじめ計画しているのです。つまり共同親権なら、両親と子どもが会いにくくはなりません。また離婚した後の親が子どもと会えなくなることは、子どもの健やかな成長を妨げる人権侵害という声もあります。

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日本でも共同親権の議論は進んでいる

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ここまでお話ししてきたように、日本ではこれまで、両親の離婚後は単独で親権を持つものとされていました。しかし近年、このことについて変える必要があるという議論が進められています。その理由は、民法を時代の変化に沿ったものに変える必要があるからです。民法のベースは、明治29年に制定されたもの。その時その時の時代に合わせて、改正をしてきた歴史もあるのです。

法務省や議員でも共同親権導入への動きが

法務省や国会議員も、共同親権導入について検討を進めています。2020年4月のニュースによると、有識者と法務省の担当者でつくる「家族法研究会」が共同親権の是非を議論していると伝えています。さらに、法務省が24カ国を対象にした調査では、離婚後の共同親権について、日本と同じ単独親権のみを採用している国はインド・トルコの2カ国だけだったと発表しました。

共同親権反対の意見も存在する

共同親権への動きに対して、反対だと言う意見もあります。例えば、親から子への虐待がきっかけで離婚に至ったケースでは、せっかく虐待をする親から離れても、共同親権になることで再度虐待を受ける可能性があること。また、離婚に至った両親が、ケンカをしている場面を子どもに見せてしまうのは心理的虐待になるという考え方も存在します。さらに両親が養育方針で一致しなかった場合、子どもが両親に翻弄されてしまう可能性があることも問題視されています。

共同親権が導入されたら子育てはどう変わる?

離婚後の共同親権が日本に導入されたら、子育ては大きく変わることになるでしょう。なぜなら、子どもの成長過程において、両親が揃って関わることで子どもは寂しい思いをせずに、成長できるからです。

ただしDVが原因の場合、加害者にも親権が渡ってしまうのは問題です。難しいことではありますが「必ず共同親権を」と言い切るには、危険なケースもあるからです。つまり、それぞれの状況に応じて、子どものために必要な環境を整えるのが大人の役割といえるでしょう。

おわりに

世界ではメジャーな制度とも言える、離婚後の共同親権。一方で、日本が採用している単独親権はマイナーな制度でもあります。どちらにしても、両親が何らかの理由で離婚したからといっても、子どもに罪はありません。両親が離婚しても、子どもが幸せに健やかに成長し、より権利が守られる世の中になると良いですね。
※本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。ご了承ください。

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