アメリカは、日本に比べると高い出生率を実現しているものの、近年では出生率の低下が見受けられます。しかし、日本のような社会的子育て支援を提供することがなくても、少子化はそれほど深刻ではありません。今回は、アメリカの少子化問題について、合計特殊出生率の変化や子育て支援、日本との意見の違いに着目しながらご紹介します。
アメリカの合計特殊出生率の変化
1998年〜2009年のアメリカにおける合計特殊出生率は2.0〜2.1の間を動き、長期的に人口を維持するために必要とされる数字を表した「人口置換水準」に比較的近い値を示しています。しかし、アメリカは少子化予備軍として名前が挙がり、一度は落ち着きを取り戻したものの、現在はやや低迷気味です。
アメリカの出生率を人種別にみると
アメリカの出生率の約2割を占めている、ヒスパニックによる合計特殊出生率が特に高くなっており、ヒスパニックがアメリカの出生率を押し上げているといっても過言ではないでしょう。しかし、不景気時における出生率の減少が著しくあるのも特徴です。さらに、2008年を境にどの人種の出生率も次第に減少しつつあるようです。
世帯収入と出生率は逆相関している
アメリカの世帯収入をみると、2万ドル以下の収入がある家庭の出生率が最も多いのに対し、10万ドル以上の収入がある家庭の出生率が1番低いなど、世帯収入と出生率を棒グラフに表すと逆相関していることがわかります。40〜44歳の女性の最終的な子どもの数をみても、やはり世帯収入が低くなるにつれて出生率が多くなっているのです。
学歴別にみた未婚率や子どもがいない家庭の割合
学歴別に未婚率をみると、低学歴の母親が最も高い出生率となっています。18歳未満の子どもを育てる家庭において、母子・父子家庭の割合は子どもがいる世帯の約1/3を占めています。シングルマザーのほとんどは未婚の母で、学歴も高校中退と就職しても低賃金であることが多いのですが、離婚をしてシングルマザーになった場合は高学歴の女性の割合が高くなるため、貧困生活を免れる可能性が高まるのです。
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少子化問題を支える子育て支援策とは
アメリカにも日本と同様に子育て支援制度はありますが、日本のような手厚いものではありません。しかし、そんな状況下でも少子化問題は日本より深刻ではないのです。ここではアメリカの子育て支援についてみていきましょう。
アメリカの育児休暇制度は無給!
アメリカには産休や育休制度がありませんが、「Family and Medical Leave Act」という家族および医療休暇法という法律によって、雇用時間や労働時間の条件を満たすことで、産前産後に12週間ほどの休暇を取得することができます。ただし、適用が認められているのは従業員が50名以上の企業のみで、有給ではなく”無給”であるほか、同職の復帰の保証もないのです。
税制を通じて子育て支援!児童手当はない
アメリカには日本のような児童手当はありません。税金制度を通じて子育ての支援が展開されているのです。税金制度による支援の一つには所得控除があり、もう一つには税額控除があります。この税額控除の中に「児童税額控除」と「保育費用控除」があるのです。児童税額控除は条件を満たすことで子ども1人あたり1000ドルの控除、保育費用控除では13歳未満の子どもに対し、保育費用を最大で35%まで控除することができます。
低所得家庭・貧困家庭への支援とは
子ども一人を持つ低所得家庭においては年間2353ドルまで、2人以上の子どもを持つ家庭は年間3816ドルまでの所得税額控除を受けることができます。また、福祉制度の中に「貧困家庭への一時的扶助」があり、現金給付・賃金補償・教育・就労訓練・交通費補助などの給付を受けることもできるのです。受給者は一度に2年まで、生涯で5年まで援助されることが可能です。
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1歳の息子がいるシングルマザーです。最近は息子とのお菓子作りにはまっています。
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