小学生の背負っているランドセルを持ってみたことはありますか。ランドセルに入っている荷物がたくさんあるため、その意外な重さに驚くはず。大人の腕にもズシッとくるランドセル、ランドセル自体は軽いのに実際相当に重いのです。ランドセルが重いと、子どもたちにどんな影響があるのでしょうか?ランドセルの重さの原因と対策について、考察しました。
小学生のランドセルが重いワケ
小学生のランドセルは本当に重いのか、東京都の児童クラブで実際に調査した結果によれば、重さの平均は7・7キロ。もっとも重いもので約10キロ、軽いものでも約6キロでした。大人でも、10キロの米袋を背負って運べと言われたら躊躇する重さです。小学生のランドセルが重いのには、ワケがあります。
ゆとり教育の撤廃
1980年から2010年まで、日本の教育はいわゆる「ゆとり教育」と呼ばれる体制にありました。土曜授業がなくなり、土日はお休み。学習の評価は絶対評価にかわり、学習指導要領は削減され、授業時間数は少なくなったのです。かわりに総合学習の時間が作られ、「生きる力」を育む教育が行われました。
ところが、2011年からは「脱ゆとり教育」として、学習指導要領の改定が始まりました。これにともない、小学生の教科書に載る内容が増え、ページ数も増えてきたのです。わかりやすくするために図版の使用も増え、版型も大きくなりました。カラー使用のために紙質もよいものを使うと、必然的に教科書は重くなります。ひとつひとつの教科ではたいしたことがないと思うかもしれませんが、それが集まると大きな負担になるのです。教科書以外のノートや副教材、芸術科目の道具もランドセルには入っています。
ランドセルの変化
ランドセルは、通学途中の子どもの両手があくように、背負う形になっています。軍隊で使われた背に負う形のかばんが起源で、学習院初等科で採用された革製のものが学習用ランドセルの始まりです。合成皮革の登場でランドセル自体の重さは軽くなっています。平均重量は1100グラムから1300グラム程度です。しかし、問題はその容量。A4版の書類が楽に入るよう内寸も大きくなり、たくさんのものが入るようになっています。教科書に対応した変化とはいえ、学用品をたくさん入れれば入れるだけ、ランドセルは重くなってしまいます。
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重たいランドセルがもたらす危険
緊急時の引き取り訓練や、授業参観の帰り道、子どものランドセルを持とうとしてあまりの重さに驚いた、というお母さんは少なくありません。子どもにとって「重たいから持って行かない」という選択肢はなく、当たり前のように毎日持って行くものですから、そんなに大変な状態だと気付かないのです。一度、ご家庭で荷物入りのランドセルを量ってみてください。
発達途中の身体に悪影響
ランドセルの過剰な重量は、子どもの身体に危険をもたらします。アメリカの研究では、ランドセルの重さが体重の10%を超えると背中の痛みが増すという結果が出ているそうです。小学生の平均体重は、1年生で約20キロ。4年生でも30キロです。もっと身体の小さな子がいることを考えると、問題視せざるを得ない重さです。重たい荷物は肩こりや腰痛の原因になりますし、身体の成長にも悪影響を与える恐れがあります。
事故や事件から身を守れない
発育面のみならず、安全面でも不安があります。登下校中の車の事故や、連れ去り事案などの不慮の出来事からとっさに身を守るには、身軽に動けなくてはなりません。重たい荷物のせいで動作が緩慢になり、異変に気付くのが遅れれば、事故を避けることが難しくなります。不審者対策として「ランドセルは捨てて逃げるように」という指導があるのですが、子どもは怖いと身を縮めますから、実行できるかどうかはわかりません。子ども同士のふざけ合いでよく見かけるように、重たいランドセルにちょっと手をかけて引っ張ってやればバランスを崩して子どもは倒れてしまいます。重すぎるランドセルは危険です。
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子どもたちも大学生になり、自分の子育てはひと段落。保育士として、地域のコーディネーターとして、子育て支援・子ども支援にかかわっています。ゆる~く子育て楽しみましょう!
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