電子辞書は、ひとつの機械でいくつもの辞書をひくことができます。使い方も簡単で、コンパクトに持ち運べるのでとても便利。荷物が多くなりがちな小学生に最適では?と感じますが、実際の小学校では紙の辞書が推奨されています。
本記事では、小学生が紙の辞書を使うメリットと学習効果の高い利用方法について解説します。
小学生に紙の辞書を推奨する理由
電子辞書は、国語辞典・漢和辞典・英和辞典など、いくつもの辞書をひとつの機器のなかに内包し、便利に使うことができるアイテムです。
しかし、多くの小学校では紙の辞書を使用し、「辞書の引き方」を学ばせています。紙の辞書は重たく、何冊も持ち運ぶのはたいへんです。そこで、学校用の辞書、家庭用の辞書と、同じものを2冊用意するよう推奨する学校もあります。親にとって、経済的な負担感があることは否めません。
GIGAスクール構想が進み、ネットでの調べ学習の方法を学ぶと同時に、利便性に富んだ電子辞書を使用せず、紙の辞書をすすめる理由はどこにあるのでしょう。
語彙力が増える
小学生に紙の辞書を推奨する理由のひとつに、語彙力の問題があります。
小学生は、言葉を獲得していく時期。ものの様子や自分の気持ちを的確に表現するために、多くの言葉を学ぶ必要があります。そこで効力を発揮するのが、紙の辞書の特性です。電子辞書を引く場合は、ピンポイントで単語を入力し、ひとつの言葉の意味や用法を読むことになります。ところが、紙の辞書を引く場合は、前後の言葉も同時に目に入ってきます。
たとえば、「あそび」という言葉を紙の辞書で引いた場合、前後には「あそばす」「あそびはんぶん」「あそびほうける」などの言葉が並びます。「あそび」というひとつの言葉に関連したほかの言葉を目にすることにより、語彙力が増えていくという効果が期待されます。
自ら学ぶ姿勢を育てる
紙の辞書を引く作業は、電子辞書を引く作業に比べて手間がかかります。国語辞典なら、索引をおさえ、言葉の語順を意識し、該当ページから目的の言葉を探します。漢和辞典なら、部首から調べるか、画数から調べるか、音訓読みで調べるかを判断しなくてはなりません。
こうした情報検索にかかるひと手間が、自ら疑問を解消し、学ぼうとする姿勢を育てます。
また、言葉を習得する際は、目で読み、口に出し、手を使って書くという五感を使った学習が効果的だと言われています。苦労して得た知識は簡単に得られた知識に比べて定着率も高く、学習効果もあがるでしょう。
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電子辞書のデメリット
小学校で紙の辞書が推奨される理由に、電子辞書を持つデメリットがあげられます。
価格が高い
電子辞書のデメリットは、価格が高いことです。小学生向けの電子辞書は、1台数千円のものから数万円のものまであり、ある程度機能がそろったものは、1万~2万円代が相場です。高価なものですので、落として壊す、紛失するといった可能性を考えると、購入をためらう保護者の方も多いでしょう。
また、ローマ字を習っていない小学生低学年には、五十音表記のキーボードが必要です。ローマ字を習得した後は、パソコンへの移行を考えてアルファベット表記のキーボードを持った媒体に買い替える必要も出てきます。学年があがり、辞書の内容もより高度なものにしたいという希望が出た場合も、買い替えを検討することになります。
紙の辞書に比べ、単体価格が高価な点は電子辞書のデメリットといえるでしょう。
学習内容の定着率に不安が残る
電子辞書のメリットである「調べ時間の短縮」「ピンポイントの検索機能」は、辞書を引く学習に不慣れな小学生にとって、逆にデメリットになるおそれがあります。学習内容の定着には、「情報を繰り返し見ること」とともに、ある程度「手間をかける」ことが必要です。
記憶には「知識記憶」と「経験記憶」があります。知識記憶とは、情報を見たり聞いたりして得た記憶をさすことです。
電子辞書を引き、瞬時に得られた情報を読んで得られる記憶が知識記憶にあたります。
経験記憶はエピソード記憶とも呼ばれ、経験に紐づけられた記憶をさします。紙の辞書のときには間違えながら手間をかけて引いた経験から得た知識が、これにあたります。経験記憶は知識記憶に比べて定着率が高いという検証があり、手間のかからない電子辞書は、経験の乏しさがデメリットにつながるのです。
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子どもたちも大学生になり、自分の子育てはひと段落。保育士として、地域のコーディネーターとして、子育て支援・子ども支援にかかわっています。ゆる~く子育て楽しみましょう!
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